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ハイスペックな男の横に並ぶべく自分磨きをしていたら、その間に可愛い新人がさっさと彼の横を陣取っていました。
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私、神崎莉子27歳。
現在、勤め先の上海支社立ち上げスタッフとして、中国に出向中。
で。
今は春節という中国の大型連休に入ったところだから、現地の細かい人事やら問題点やらとにかく多岐にわたるアレコレを上司とTVカメラ越しではなく、直接顔を合わせて打ち合わせをする事となった。
その為の一時帰国。
顔を合わせたいが為に、何がなんでももぎ取った一時帰国。
で。
今、その上司が目の前に座っている。
理知的な眉、優しげな目もと、長い睫毛、色素の薄いサラサラな長めの髪。
私が中国に異動した際に引き継ぎをして頂いた今の仕事の前任者であり、全女性社員憧れの的。
梶谷迅《じん》様の美貌は、私が入社した頃から全く衰えていない。
……いや、むしろ歳を追う毎にその美貌に大人の色気がプラスされていると言っても良い。
顔よし、性格よし、学歴よし、全て良い。
ついでに身長も高いし、社内外の評判も良い。
会社でも間違いなく出世街道まっしぐらのこの男に、私は新人だった頃から恋をしていた。
けど、片思いし続けて5年。私が告白する事は一度もない。
それなりの顔に、それなりのスタイル。それなりの学歴があったが、この人の横に並びたいのであれば、それでは足りないと思ったからだ。
肌の手入れを入念に行うと共に、化粧の腕前をあげ、モデルの様なスタイルを目指してジムに通う。
学歴は今更どうしようもないから、語学スクールに通い、元々話せるビジネス英語以外に、当時わが社で補助金が出ていた中国語とタイ語の日常会話位は話せる様になった。
昔の様な記憶力もないけど、美容に勉強に仕事に必死になって食らいつき、梶谷さんにも名前を覚えて頂ける位に頑張って、やっと掴んだ女性初の海外転勤。この仕事が上手くいけば、私は管理職コースで梶谷さんの横に並んでも誰にも文句を言われない筈だった。
そう、筈だった。
で。
今。
私が敬愛する梶谷さんの左薬指に光るのは、シンプルだけどとても高そうな指輪だった。
「……梶谷さん、それ……」
私がそっと指輪を指差せば、梶谷さんは少しはにかみながら答えてくれた。
「ああ、婚約したんだ」
「そう、なんですね。おめでとうございます」
「ありがとう」
指先は震えてなかったかな?
きちんと、私笑えてたかな?
先に告白をしていたら違ってたのかな?
何の為に私━━━頑張ってたのかな……
「……莉子さん、大丈夫?」
「……む、無理……死にたい。いや、死にたくないですけど」
「今までずーっと、頑張ってきたもんね。まさかトンビに油揚げかっさらわれるとは思わないよね」
「うう……言っちゃなんですがね、私これでも、社内の男性人気No.1らしいんですよぉ……ずび、そんなん、好きな人のNo.1にならなきゃ、ずび……意味、なぃ…………ずびずびっ」
梶谷さんのハートを射止めたのは、入社一年目の新入社員だった。凄く可愛い訳ではないけど、仕事に一生懸命で、庇護欲にかられる感じの娘。
顔、普通よりちょい上。性格、良し。スタイル、普通。
学歴、普通よりちょい上。
正直、梶谷さんの横に並べば見劣りする。
何であんたが梶谷さんの彼女なのよって、私はずーっと努力してきたのにって、文句言ってやりたい。
けど、けどね?
「あの梶谷さんの告白を、何度も断ったらしいんですよぉ……、今は仕事に打ち込みたいからって……」
「そりゃ凄いね」
「ですよねぇ……結局、梶谷さんが半年以上粘り続けて何とかゴリ押しで付き合える様になっただなんて聞いたら………」
「莉子さん、もうちょい声落として」
おっとまずい。
ついお酒が回って興奮してしまったみたいだ。
話すための口は一旦閉じて、唯一飲める強いお酒のテキーラに口をつけた。
ここは、わが社の社員も御用達のbar。
まだ若い副社長がこのbarを発掘し、若い世代は結構顔を出す。
私は一人ではbarなんか行けないけど、ここだけは何度も会社で利用した事もあり、気軽に一杯とか出来る常連になっていた。
「……最初から、私じゃダメだっただけの話なんですよね。」
「莉子さん……」
梶谷さんを振り向かせる位の、いい女になるつもりだった。
梶谷さんと並んでも、恥ずかしくない位の女に。
けど、恋愛ってそうじゃなくて。
似合う似合わないで、彼氏彼女になるんじゃない。
私はもっと梶谷さんに好かれる努力をしなければならなかったんだ。
ああしたら、こうしたらと何時までも……5年も、告白を先延ばしにして。
振られる事が怖くて、全くアタックしなかった。
カタン、と真横の椅子が引かれたので視線を投げれば、そこには日焼けした小麦色の肌に健康的な黒く短い髪、スーツの上からですらフットボールでもやっていたんじゃないかと思う様な筋肉質な身体を想像させる男がスマートに座った。
「……!!」
思わず、テキーラを吹き出しそうになる。
「何?神崎さんも、梶谷の交際宣言に傷心した一人なの?」
ニヤ、と笑う口の端から覗く八重歯は、まるで歯のCMの様に白い。
「……どこから聞いてたんですか、副社長……」
「んー?ほぼ最初から?」
「……やだ、死にたい……」
「あ、そんな事言ってた辺りから♪」
現社長の息子で、近い将来間違いなく社長になる男。
砕けた口調ではあるが、仕事ぶりは非常に厳しいらしく、秘書課の女を何人も「使えねぇ、婚活したいんなら他行け」と言って他部署送りにした強者。
真っ直ぐな物言いで男からは慕われ、女からは敬遠されがちなこの男は間違いなく梶谷さんと性格的に正反対に位置する男で、かくいう私も苦手な部類の男であった。
「やだぁ、副社長なんて好みじゃないぃ~っっ」
「やだやだ言う割には、めっちゃ濡れてんだけど」
ぶちゅ、と私のアソコから指を引き抜いて、副社長はその指にまとわりついた私の愛液を見せつける様に舐めた。
恥ずかしくて、ぶわ、っと顔に熱が集まる。
「やだやだ信じらんないっ!!」
「照れてる莉子もか~わいい♪そんな話し方も、素面の時に聞いた事ねぇな」
「馬鹿にしてっ!!」
「馬鹿になんかしてねぇって。ほら、拗ねるなって。こっち向け」
ベッドに横になった私に覆い被さる様に副社長がのし掛かり、先程から胸やら首筋やらクリトリスやら膣やらを散々愛撫されて、私の下半身は大洪水だ。
顎を捕まれたと思えば副社長の方を向かされ、真っ直ぐに射抜くような瞳と視線があわさり胸がドクリと音を立てる。
「んぅっ…………っっ」
副社長らしい強引なディープなキスは、酸欠の心配をする程に深く深く口腔内を舌で掻き回して、ぐっちゃぐっちゃと唾液が行き交っては溢れるものだから嚥下せざるを得なかった。
「ふく、しゃちょ………」
はぁ、はぁ、と息の合間に抗議の意味を籠めて睨んで呼べば、
「副社長じゃなくて、柊って呼べよ」
と言われた。というか、副社長の名前なんて今始めて知った。
「そんな、呼べる、訳………」
ぐい、と脚が抱えあげられたかと思ったら。
ズン!!!
それは物凄い衝撃だった。
「……ぁ、は…………」
下半身の衝撃を逃がそうと口を開くが、はく、はく、と何とか呼吸を整える事しか出来ない。
「狭ぇ」
副社長が、人に断りもなく動き始める。
「ゃ、待って、動かないでぇ……っ」
「ん?こんなん動いているうちに入らねぇだろ?」
ずりゅ、ずりゅ、今まで挿入された事ない位の圧倒的に太く固い副社長のペニスが、やはり今まで感じた事のない程の圧迫感を与えてきて少しの恐怖が沸く。
副社長にしてはゆっくり動いているつもりでも、こちらは久しぶり過ぎるせいもあって、とてもじゃないが着いていけない。
「やぁ、怖いぃ………っ」
「……」
私の目に恐怖で涙が溜まってきたのを見た副社長は、やっと動きを止めてくれた。
「……何が、怖いんだ?」
「……久しぶり、だから……」
「だから?」
「変に、なりそう……」
「なれよ」
違うんです。
私は副社長みたいに器用じゃないから、きっと身体を暴かれたら「一夜の間違い」に出来ずに意識してしまう。
失恋したばかりの27の女なんて、しばらくは仕事に没頭して忘れる位しか出来ないのに。
「ん?一夜の間違いにしなきゃいいんだろ?俺の女になれよ、莉子」
「……副社長は好みじゃない……」
「てめぇ……この期に及んで……」
そう言いながらも、副社長は笑っていた。
何時もの、ニヤニヤした人を見下す様な笑い方じゃなくて、心底楽しそうな笑い方。
「言葉使いが悪いのも、好みじゃない……」
「ん?仕事中は丁寧だろうが」
「筋肉がついてるのも……」
「ないよりはあった方がいいだろうが」
「……副社長、どこまでも前向きですね……」
思わずクスリと笑ってしまった。
「……うん、やっぱりお前は可愛いよ」
男と仕事で対等に戦う為に、梶谷さんの横に立つ為に、可愛らしさなんてものは捨てた。
「……どこが」
「そーだなぁ……梶谷を前にすると赤面するところとか?乙女全開で自己研磨に邁進するところとか?その癖、誰かから誉められても社交辞令としか受け取らないへそ曲がりなところとか?」
「……も、もういいから……!」
「自分に厳しくてハードルガンガンあげちまうところとか?勉強して寝不足になって半分寝ながら会議に出てるところとか?寝ると普段吊り上がってる目が垂れてめっちゃ童顔になるところとか?」
「ななな………!」
実は童顔ってバレてる……!
化粧でいかに美人を作り出すか、腕をメキメキ上げた筈なのに。
「好きなヤツの役に立つ為に2カ国語マスターしちまうところとか?そしてそれが普通なんだと思い込んじゃう事とか?」
「参りました」
「おうよ。莉子が思っている以上に、俺はお前を知ってる」
「……」
「で、そんな莉子を可愛いと思ってる。……はは、下が締まった。そんな反応も可愛いな」
私は恥ずかしくて、副社長をポコポコ攻撃した。
副社長は両手を横について自分を支えているから、反撃も防御も出来ないとわかっての事だ。
「ちょ、……そんなに余裕なら、もういっかな?じゃあ、頂きまーす♪」
副社長が、ニヤリと笑うのが見えて、しまったと思う間もなく。
激しいピストンが再開され、私はそれにより繰り広げられる快楽の渦に放り投げられる。
ペニスが出たり入ったりを繰り返す度に、膣はそれにむしゃぶりつくかの様に勝手に追い求め、痙攣しては新たな熱を運ぶ。
こんなに気持ちの良いセックスがあるなんて、思いもしなかった。
意識が朦朧とする中、副社長が既に何個目かのゴムの封を口で噛み切る様子が見えた。
「やら、やらぁ!!気持ち、良すぎらからぁ!!」
「……そりゃ、ご期待に、応えなきゃなぁ?」
ずっちゅずっちゅパンパンパンパン、卑猥な水音と、お互いを求める唇。反り返った背と、飛び散る汗と。
身体中が濡れて、ベッドもぐしゃぐしゃになって、目が開けられない位になって。
「……莉子、好きだ」
副社長の、声を聞いたかと思ったけど、それは夢だったのかもしれない。
「……何で、副社長がいらっしゃるのでしょうか?」
私は半眼で目の前の消し去りたい黒歴史と対面していた。
この男は、飲み過ぎた私を抱いた日を境に、ちょいちょいと中国から本社に呼び出しては(職権乱用じゃないか)私の身体を貪り尽くす。
いい加減頭に来て他のスタッフを日本に戻したら、今度は向こうがこちらにやってきた。
ある意味、想定内すぎて呆れてしまう。
周りの中国人スタッフは日本語がわからないが、私の醸し出す黒い気配は伝わっている様で、オロオロしている。
「何でって、莉子なら知ってるだろ?」
「何をですか?」
「上海の次は、クルンテープ・マハーナコーンの立ち上げだ。俺が責任者だが、わが社でタイ語が出来るのはお前だけだ」
「はぁ」
「連れていくから、そのつもりで」
「……因みに、拒否権は」
「ある訳ねーだろうが」
「ですよね」
「楽しみだな、莉子?」
「……」
自分磨きに勤しんだ結果、更にハイスペックな男が釣れてしまった。
好みじゃない筈なのに、嫌いになれない。
私、神崎莉子、27歳。
今日も上手くいかない感情に翻弄され中。
現在、勤め先の上海支社立ち上げスタッフとして、中国に出向中。
で。
今は春節という中国の大型連休に入ったところだから、現地の細かい人事やら問題点やらとにかく多岐にわたるアレコレを上司とTVカメラ越しではなく、直接顔を合わせて打ち合わせをする事となった。
その為の一時帰国。
顔を合わせたいが為に、何がなんでももぎ取った一時帰国。
で。
今、その上司が目の前に座っている。
理知的な眉、優しげな目もと、長い睫毛、色素の薄いサラサラな長めの髪。
私が中国に異動した際に引き継ぎをして頂いた今の仕事の前任者であり、全女性社員憧れの的。
梶谷迅《じん》様の美貌は、私が入社した頃から全く衰えていない。
……いや、むしろ歳を追う毎にその美貌に大人の色気がプラスされていると言っても良い。
顔よし、性格よし、学歴よし、全て良い。
ついでに身長も高いし、社内外の評判も良い。
会社でも間違いなく出世街道まっしぐらのこの男に、私は新人だった頃から恋をしていた。
けど、片思いし続けて5年。私が告白する事は一度もない。
それなりの顔に、それなりのスタイル。それなりの学歴があったが、この人の横に並びたいのであれば、それでは足りないと思ったからだ。
肌の手入れを入念に行うと共に、化粧の腕前をあげ、モデルの様なスタイルを目指してジムに通う。
学歴は今更どうしようもないから、語学スクールに通い、元々話せるビジネス英語以外に、当時わが社で補助金が出ていた中国語とタイ語の日常会話位は話せる様になった。
昔の様な記憶力もないけど、美容に勉強に仕事に必死になって食らいつき、梶谷さんにも名前を覚えて頂ける位に頑張って、やっと掴んだ女性初の海外転勤。この仕事が上手くいけば、私は管理職コースで梶谷さんの横に並んでも誰にも文句を言われない筈だった。
そう、筈だった。
で。
今。
私が敬愛する梶谷さんの左薬指に光るのは、シンプルだけどとても高そうな指輪だった。
「……梶谷さん、それ……」
私がそっと指輪を指差せば、梶谷さんは少しはにかみながら答えてくれた。
「ああ、婚約したんだ」
「そう、なんですね。おめでとうございます」
「ありがとう」
指先は震えてなかったかな?
きちんと、私笑えてたかな?
先に告白をしていたら違ってたのかな?
何の為に私━━━頑張ってたのかな……
「……莉子さん、大丈夫?」
「……む、無理……死にたい。いや、死にたくないですけど」
「今までずーっと、頑張ってきたもんね。まさかトンビに油揚げかっさらわれるとは思わないよね」
「うう……言っちゃなんですがね、私これでも、社内の男性人気No.1らしいんですよぉ……ずび、そんなん、好きな人のNo.1にならなきゃ、ずび……意味、なぃ…………ずびずびっ」
梶谷さんのハートを射止めたのは、入社一年目の新入社員だった。凄く可愛い訳ではないけど、仕事に一生懸命で、庇護欲にかられる感じの娘。
顔、普通よりちょい上。性格、良し。スタイル、普通。
学歴、普通よりちょい上。
正直、梶谷さんの横に並べば見劣りする。
何であんたが梶谷さんの彼女なのよって、私はずーっと努力してきたのにって、文句言ってやりたい。
けど、けどね?
「あの梶谷さんの告白を、何度も断ったらしいんですよぉ……、今は仕事に打ち込みたいからって……」
「そりゃ凄いね」
「ですよねぇ……結局、梶谷さんが半年以上粘り続けて何とかゴリ押しで付き合える様になっただなんて聞いたら………」
「莉子さん、もうちょい声落として」
おっとまずい。
ついお酒が回って興奮してしまったみたいだ。
話すための口は一旦閉じて、唯一飲める強いお酒のテキーラに口をつけた。
ここは、わが社の社員も御用達のbar。
まだ若い副社長がこのbarを発掘し、若い世代は結構顔を出す。
私は一人ではbarなんか行けないけど、ここだけは何度も会社で利用した事もあり、気軽に一杯とか出来る常連になっていた。
「……最初から、私じゃダメだっただけの話なんですよね。」
「莉子さん……」
梶谷さんを振り向かせる位の、いい女になるつもりだった。
梶谷さんと並んでも、恥ずかしくない位の女に。
けど、恋愛ってそうじゃなくて。
似合う似合わないで、彼氏彼女になるんじゃない。
私はもっと梶谷さんに好かれる努力をしなければならなかったんだ。
ああしたら、こうしたらと何時までも……5年も、告白を先延ばしにして。
振られる事が怖くて、全くアタックしなかった。
カタン、と真横の椅子が引かれたので視線を投げれば、そこには日焼けした小麦色の肌に健康的な黒く短い髪、スーツの上からですらフットボールでもやっていたんじゃないかと思う様な筋肉質な身体を想像させる男がスマートに座った。
「……!!」
思わず、テキーラを吹き出しそうになる。
「何?神崎さんも、梶谷の交際宣言に傷心した一人なの?」
ニヤ、と笑う口の端から覗く八重歯は、まるで歯のCMの様に白い。
「……どこから聞いてたんですか、副社長……」
「んー?ほぼ最初から?」
「……やだ、死にたい……」
「あ、そんな事言ってた辺りから♪」
現社長の息子で、近い将来間違いなく社長になる男。
砕けた口調ではあるが、仕事ぶりは非常に厳しいらしく、秘書課の女を何人も「使えねぇ、婚活したいんなら他行け」と言って他部署送りにした強者。
真っ直ぐな物言いで男からは慕われ、女からは敬遠されがちなこの男は間違いなく梶谷さんと性格的に正反対に位置する男で、かくいう私も苦手な部類の男であった。
「やだぁ、副社長なんて好みじゃないぃ~っっ」
「やだやだ言う割には、めっちゃ濡れてんだけど」
ぶちゅ、と私のアソコから指を引き抜いて、副社長はその指にまとわりついた私の愛液を見せつける様に舐めた。
恥ずかしくて、ぶわ、っと顔に熱が集まる。
「やだやだ信じらんないっ!!」
「照れてる莉子もか~わいい♪そんな話し方も、素面の時に聞いた事ねぇな」
「馬鹿にしてっ!!」
「馬鹿になんかしてねぇって。ほら、拗ねるなって。こっち向け」
ベッドに横になった私に覆い被さる様に副社長がのし掛かり、先程から胸やら首筋やらクリトリスやら膣やらを散々愛撫されて、私の下半身は大洪水だ。
顎を捕まれたと思えば副社長の方を向かされ、真っ直ぐに射抜くような瞳と視線があわさり胸がドクリと音を立てる。
「んぅっ…………っっ」
副社長らしい強引なディープなキスは、酸欠の心配をする程に深く深く口腔内を舌で掻き回して、ぐっちゃぐっちゃと唾液が行き交っては溢れるものだから嚥下せざるを得なかった。
「ふく、しゃちょ………」
はぁ、はぁ、と息の合間に抗議の意味を籠めて睨んで呼べば、
「副社長じゃなくて、柊って呼べよ」
と言われた。というか、副社長の名前なんて今始めて知った。
「そんな、呼べる、訳………」
ぐい、と脚が抱えあげられたかと思ったら。
ズン!!!
それは物凄い衝撃だった。
「……ぁ、は…………」
下半身の衝撃を逃がそうと口を開くが、はく、はく、と何とか呼吸を整える事しか出来ない。
「狭ぇ」
副社長が、人に断りもなく動き始める。
「ゃ、待って、動かないでぇ……っ」
「ん?こんなん動いているうちに入らねぇだろ?」
ずりゅ、ずりゅ、今まで挿入された事ない位の圧倒的に太く固い副社長のペニスが、やはり今まで感じた事のない程の圧迫感を与えてきて少しの恐怖が沸く。
副社長にしてはゆっくり動いているつもりでも、こちらは久しぶり過ぎるせいもあって、とてもじゃないが着いていけない。
「やぁ、怖いぃ………っ」
「……」
私の目に恐怖で涙が溜まってきたのを見た副社長は、やっと動きを止めてくれた。
「……何が、怖いんだ?」
「……久しぶり、だから……」
「だから?」
「変に、なりそう……」
「なれよ」
違うんです。
私は副社長みたいに器用じゃないから、きっと身体を暴かれたら「一夜の間違い」に出来ずに意識してしまう。
失恋したばかりの27の女なんて、しばらくは仕事に没頭して忘れる位しか出来ないのに。
「ん?一夜の間違いにしなきゃいいんだろ?俺の女になれよ、莉子」
「……副社長は好みじゃない……」
「てめぇ……この期に及んで……」
そう言いながらも、副社長は笑っていた。
何時もの、ニヤニヤした人を見下す様な笑い方じゃなくて、心底楽しそうな笑い方。
「言葉使いが悪いのも、好みじゃない……」
「ん?仕事中は丁寧だろうが」
「筋肉がついてるのも……」
「ないよりはあった方がいいだろうが」
「……副社長、どこまでも前向きですね……」
思わずクスリと笑ってしまった。
「……うん、やっぱりお前は可愛いよ」
男と仕事で対等に戦う為に、梶谷さんの横に立つ為に、可愛らしさなんてものは捨てた。
「……どこが」
「そーだなぁ……梶谷を前にすると赤面するところとか?乙女全開で自己研磨に邁進するところとか?その癖、誰かから誉められても社交辞令としか受け取らないへそ曲がりなところとか?」
「……も、もういいから……!」
「自分に厳しくてハードルガンガンあげちまうところとか?勉強して寝不足になって半分寝ながら会議に出てるところとか?寝ると普段吊り上がってる目が垂れてめっちゃ童顔になるところとか?」
「ななな………!」
実は童顔ってバレてる……!
化粧でいかに美人を作り出すか、腕をメキメキ上げた筈なのに。
「好きなヤツの役に立つ為に2カ国語マスターしちまうところとか?そしてそれが普通なんだと思い込んじゃう事とか?」
「参りました」
「おうよ。莉子が思っている以上に、俺はお前を知ってる」
「……」
「で、そんな莉子を可愛いと思ってる。……はは、下が締まった。そんな反応も可愛いな」
私は恥ずかしくて、副社長をポコポコ攻撃した。
副社長は両手を横について自分を支えているから、反撃も防御も出来ないとわかっての事だ。
「ちょ、……そんなに余裕なら、もういっかな?じゃあ、頂きまーす♪」
副社長が、ニヤリと笑うのが見えて、しまったと思う間もなく。
激しいピストンが再開され、私はそれにより繰り広げられる快楽の渦に放り投げられる。
ペニスが出たり入ったりを繰り返す度に、膣はそれにむしゃぶりつくかの様に勝手に追い求め、痙攣しては新たな熱を運ぶ。
こんなに気持ちの良いセックスがあるなんて、思いもしなかった。
意識が朦朧とする中、副社長が既に何個目かのゴムの封を口で噛み切る様子が見えた。
「やら、やらぁ!!気持ち、良すぎらからぁ!!」
「……そりゃ、ご期待に、応えなきゃなぁ?」
ずっちゅずっちゅパンパンパンパン、卑猥な水音と、お互いを求める唇。反り返った背と、飛び散る汗と。
身体中が濡れて、ベッドもぐしゃぐしゃになって、目が開けられない位になって。
「……莉子、好きだ」
副社長の、声を聞いたかと思ったけど、それは夢だったのかもしれない。
「……何で、副社長がいらっしゃるのでしょうか?」
私は半眼で目の前の消し去りたい黒歴史と対面していた。
この男は、飲み過ぎた私を抱いた日を境に、ちょいちょいと中国から本社に呼び出しては(職権乱用じゃないか)私の身体を貪り尽くす。
いい加減頭に来て他のスタッフを日本に戻したら、今度は向こうがこちらにやってきた。
ある意味、想定内すぎて呆れてしまう。
周りの中国人スタッフは日本語がわからないが、私の醸し出す黒い気配は伝わっている様で、オロオロしている。
「何でって、莉子なら知ってるだろ?」
「何をですか?」
「上海の次は、クルンテープ・マハーナコーンの立ち上げだ。俺が責任者だが、わが社でタイ語が出来るのはお前だけだ」
「はぁ」
「連れていくから、そのつもりで」
「……因みに、拒否権は」
「ある訳ねーだろうが」
「ですよね」
「楽しみだな、莉子?」
「……」
自分磨きに勤しんだ結果、更にハイスペックな男が釣れてしまった。
好みじゃない筈なのに、嫌いになれない。
私、神崎莉子、27歳。
今日も上手くいかない感情に翻弄され中。
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