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「俺、いつもの」
「買ってくる」
普段は奢らせたりなんかしないけど、俺が最大限譲歩するかわり、國臣をパシらせて奢らせた。
「はい、ビッグマックセット。ポテトにコーラ」
「サンキュ」
ポテトに手を伸ばして、躊躇した。
……國臣はバイトしてないから、國臣の金は親の金、なんだよな。
うーむ。やっぱり払うか?いやいやでも……
俺がポテトを摘まんだまま悩んでいると、國臣はクスクス笑う。
「……んだよ」
「……いや、何考えてるんだか凄くわかりやすいなー、と思って。今、やっぱり払おうかと思っただろ?」
「……うるさい」
払うのはやめて、ポテトを口に入れる。
「……ほんと、そういうところも……好きだよ」
「おまっ……!!」
思わずガタリ、と椅子の音を立てて身をひけば、俺の声は思ったより大きかったらしく客の何人かがこちらを見た。
苦笑いで誤魔化しつつ、小さくなってこそこそと國臣に話し掛ける。
「今コーラ飲んでたら、お前の顔に吹き掛けてたぞ」
「……それは、ご褒美?」
駄目だ。俺に告ってタガが外れたのか、國臣は俺への好意を隠そうともしない。じゃあ、やっぱり昼休みのアレは何だったんだ?
「あのさ、お前……あの子と付き合うんじゃないの?」
「……あの子……?」
「告られてだろーが」
「……ああ、あのヤリマン」
「……」
「……女と付き合えば、希翔がまた友達に戻ってくれるって言ってたのを、あの時思い出してさ」
「はぁ?」
「希翔が傍にいないとか、やっぱり俺には無理そうだったから」
「……あのさ、誰でも良いから女と付き合えなんて言ってないぞ?誰か好きな女の子をつくって──」「希翔」
俺の言葉を、國臣が遮った。
「……俺が好きなのは、希翔だって言ったよね?女だろうが、男だろうが……俺にとっては、希翔じゃないなら他の誰でも一緒なんだよ」
「……で、でも、好きでもない女と付き合うなんて、彼女に悪いとは……」
「あの女だって、別に俺じゃなくても平気な部類だから。それでまた希翔と一緒にいられるなら、俺にとっては簡単な話なんだよ」
「そんな……お前、誰か好きな人がいるのに、好きでもない女と付き合えるの?」
俺がそう言うと、國臣は、顔を歪めた。両肘をテーブルにのせて、一瞬でぐいっと距離を詰められる。俺の目の前に、國臣の端正な顔が現れた。
「……俺の好きな人が、俺を選んでくれるなら、勿論そんな必要ないんだけどね」
後10センチ程で、キス出来そうな距離。俺は慌てて身体を起こして、距離を取った。
「そんな……そんな事、言われて、も」
でも、今のは俺の失言だ。
國臣は、相手が俺であるという事を除けば、単に好きな人の傍にいたいから、相手の言った通りに行動してるだけ……むしろ、俺が國臣の気持ちを理解しようとしてない訳で。
「……俺と付き合ってくれるの?希翔」
俺は黙って、首を横に振った。正直、恋人が男とか想像出来ない。
「なら、せめて言った事は守って欲しいな。俺は女と付き合うから、友達でいさせて」
「……」
「じゃあ、話はこれでおしまい。ほら、コーラ飲まないと氷溶けちゃうよ」
「……保留、で」
後で思い返しても、あの時の俺はどういう思考回路をしていたんだか、わからない。ただ、好きでもない女と、國臣が無理して付き合う状況は嫌だった。それも、自分のせいで。とはいえ、俺が好きだという事を隠そうともしない國臣と、このまままた親友に戻れるかといえば、NOだった。どうしたって、意識してしまう。
──一度、真剣に考えみよう。
恐らく、そう思ったんだと思う。
「……保留?それって、どういう……」
「國臣との事、男ってだけで真面目に考えてなかった、けど。それは國臣に対して真摯な態度ではなかったなって思って……」
俯いてコーラを飲んだけど、國臣の雰囲気がガラリと変わったのがわかった。喜びに溢れた、空気。そういうのも直ぐにわかるから、親友って厄介だ。
國臣は今、俺がこれから言う発言を、期待して待っているのだ。
「だから、付き合えるかどうかはわからない、けど……國臣の事、そういう目で見られそうかどうか、一度真剣に考えてみるから……保留にしてくれ」
「……嬉しい。嬉しすぎて、今すぐ抱き締めたいけど……我慢する」
「それは、流石にそうして」
二人で、笑い合った。たった3日しか経ってないのに、久しぶりな気がした。
「買ってくる」
普段は奢らせたりなんかしないけど、俺が最大限譲歩するかわり、國臣をパシらせて奢らせた。
「はい、ビッグマックセット。ポテトにコーラ」
「サンキュ」
ポテトに手を伸ばして、躊躇した。
……國臣はバイトしてないから、國臣の金は親の金、なんだよな。
うーむ。やっぱり払うか?いやいやでも……
俺がポテトを摘まんだまま悩んでいると、國臣はクスクス笑う。
「……んだよ」
「……いや、何考えてるんだか凄くわかりやすいなー、と思って。今、やっぱり払おうかと思っただろ?」
「……うるさい」
払うのはやめて、ポテトを口に入れる。
「……ほんと、そういうところも……好きだよ」
「おまっ……!!」
思わずガタリ、と椅子の音を立てて身をひけば、俺の声は思ったより大きかったらしく客の何人かがこちらを見た。
苦笑いで誤魔化しつつ、小さくなってこそこそと國臣に話し掛ける。
「今コーラ飲んでたら、お前の顔に吹き掛けてたぞ」
「……それは、ご褒美?」
駄目だ。俺に告ってタガが外れたのか、國臣は俺への好意を隠そうともしない。じゃあ、やっぱり昼休みのアレは何だったんだ?
「あのさ、お前……あの子と付き合うんじゃないの?」
「……あの子……?」
「告られてだろーが」
「……ああ、あのヤリマン」
「……」
「……女と付き合えば、希翔がまた友達に戻ってくれるって言ってたのを、あの時思い出してさ」
「はぁ?」
「希翔が傍にいないとか、やっぱり俺には無理そうだったから」
「……あのさ、誰でも良いから女と付き合えなんて言ってないぞ?誰か好きな女の子をつくって──」「希翔」
俺の言葉を、國臣が遮った。
「……俺が好きなのは、希翔だって言ったよね?女だろうが、男だろうが……俺にとっては、希翔じゃないなら他の誰でも一緒なんだよ」
「……で、でも、好きでもない女と付き合うなんて、彼女に悪いとは……」
「あの女だって、別に俺じゃなくても平気な部類だから。それでまた希翔と一緒にいられるなら、俺にとっては簡単な話なんだよ」
「そんな……お前、誰か好きな人がいるのに、好きでもない女と付き合えるの?」
俺がそう言うと、國臣は、顔を歪めた。両肘をテーブルにのせて、一瞬でぐいっと距離を詰められる。俺の目の前に、國臣の端正な顔が現れた。
「……俺の好きな人が、俺を選んでくれるなら、勿論そんな必要ないんだけどね」
後10センチ程で、キス出来そうな距離。俺は慌てて身体を起こして、距離を取った。
「そんな……そんな事、言われて、も」
でも、今のは俺の失言だ。
國臣は、相手が俺であるという事を除けば、単に好きな人の傍にいたいから、相手の言った通りに行動してるだけ……むしろ、俺が國臣の気持ちを理解しようとしてない訳で。
「……俺と付き合ってくれるの?希翔」
俺は黙って、首を横に振った。正直、恋人が男とか想像出来ない。
「なら、せめて言った事は守って欲しいな。俺は女と付き合うから、友達でいさせて」
「……」
「じゃあ、話はこれでおしまい。ほら、コーラ飲まないと氷溶けちゃうよ」
「……保留、で」
後で思い返しても、あの時の俺はどういう思考回路をしていたんだか、わからない。ただ、好きでもない女と、國臣が無理して付き合う状況は嫌だった。それも、自分のせいで。とはいえ、俺が好きだという事を隠そうともしない國臣と、このまままた親友に戻れるかといえば、NOだった。どうしたって、意識してしまう。
──一度、真剣に考えみよう。
恐らく、そう思ったんだと思う。
「……保留?それって、どういう……」
「國臣との事、男ってだけで真面目に考えてなかった、けど。それは國臣に対して真摯な態度ではなかったなって思って……」
俯いてコーラを飲んだけど、國臣の雰囲気がガラリと変わったのがわかった。喜びに溢れた、空気。そういうのも直ぐにわかるから、親友って厄介だ。
國臣は今、俺がこれから言う発言を、期待して待っているのだ。
「だから、付き合えるかどうかはわからない、けど……國臣の事、そういう目で見られそうかどうか、一度真剣に考えてみるから……保留にしてくれ」
「……嬉しい。嬉しすぎて、今すぐ抱き締めたいけど……我慢する」
「それは、流石にそうして」
二人で、笑い合った。たった3日しか経ってないのに、久しぶりな気がした。
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