異世界では口を開かぬが吉。

イセヤ レキ

文字の大きさ
上 下
9 / 12

5、日本人との遭遇

しおりを挟む
「日本人!!」
俺は、儀式を見に来たのだろう彼らを見て思わず指をさしてしまった。

興奮しながらアルバールを見ると、彼は首を横に振る。
……え?どこからどう見ても、日本人な気がするんだけど?
不思議に思っていると、アルバールは 
「मेरेニホンジ、セイヤकेवल」
と言う。

うん……?俺は日本人だけど、あの三人だって……?俺は恐る恐る、「……日本人……」と指差したまま再び口にしてみる。
すると、アルバールは「कोण है वोह?」と理解出来ない言葉を発しながら鬼の形相になった。
今まで一度も怒らなかったアルバールがこのタイミングで怒るとは全く考えてもおらず驚く。そして同時に、不思議に思った。
何故アルバールは、彼らを日本人だと言っただけで怒ったのだろう?日本人、という言葉はアルバールにとって、特別だったとか?

いや……、もしかして……

俺は、やっとその可能性に気付いた。
もしかして、アルバールの言う「ニホンジ」は、「日本人」ではなくもっと別の意味だったのだろうか。
それに気付けば、今までのアルバールの不可解な行動が何となく府に落ちた。

そうだ、なんで俺は聞き取れた言葉を何故日本語に変換してしまったのだろう。アルバールは日本語を全く話せないのに!もしかすると、アルバールも同じ様に俺の言葉を自分の言語に置き換えて、誤解した事があるのかもしれない。
日本語の「掘った芋いじるな」が、英語では「今何時」に変換されるんだから、他の言語で同じ事が起きておかしくないんだ。
言葉の通じない異世界でホイホイ口を開いて、言葉が通じた気になった自分はバカだ。ジェスチャーだけにしていれば、少しは違ったのかもしれない。けれどもジェスチャーだって意味が違う事は当然あるだろう。
ともかく、言葉にしろジェスチャーにしろ、絶対的に正しい意味で通じていると安心しきっていたのは何より愚かだ。


アルバールとお互い誤解している言語について相談したいと思ったが、彼はこの後の儀式の準備で忙しい。であれば先に日本人の三人との交流を図るべきだと、彼らに近付いた。

三人は社会人っぽい男の人達で、俺は自分が緊張している事に気付く。……そう言えばすっかり忘れていたけど、俺は引きこもりなんだった。アルバールとこの世界に翻弄されてここ数日は積極的に動けていたけれど、それはアルバールが俺に優しかったから。人の悪意に敏感な俺が、アルバールからそれを全く感じなかったから出来た事だ。

初対面の人達に自分から話し掛けるのは本当に苦手だったが、俺は意を決して話し掛けた。
……のだが、三人は俺を無視して、会話を続けている。
しかし、高校でされた悪意のある無視とはちょっと違う気がした。……何だろう?実家で感じた透明人間というより、正真正銘の透明人間になった感じ。

俺は、三人の目の前で手を振ってみた。三人とも無反応だった。普通、目の前に掌が突き出されたら必ず反射的に瞬きを
するものなのに、そうした行動すら見られなかった。
「あの……」
じゃあ、見えなくても感触を感じたら彼らはどう感じるのだろうと思って肩を叩こうとした。
驚く事に俺の手は、彼らを通り抜けていって呆然とする。

……もしかして、俺って幽霊みたいな感じになってる??

「セイヤ」
俺が呆けていると、アルバールが声を掛けてきた。俺は苦笑するしかない。アルバールは三人に全く頓着しなかったが、こうなる事を予感していたのだろうか。

「アル……」
バール、と返事をしようとして、彼の不穏な雰囲気に怖じ気づく。……何だ?笑っているけど、怒ってる……?いや、怒っているのとはちょっと違う感じがする。

アルバールは瞳に危うい光を帯びながら、俺の腕をぐいと必要以上に強く引っ張って三人から俺を引き剥がした。
「ちょっと待っ……んんっ」
強引にアルバールに唇を奪われ、言葉を紡げない。
ここには、他人もいるのに。俺の頭は焦りでパニックになりかかったが、その三人の会話が聞こえてきて少し落ち着いた。

『この隠しイベント、結構長いって聞いたからメシ食ってくるわ~』
『じゃあ俺、風呂入ってくる』
『スマホでゲームやりながら何か変化あったら呼ぶわ』
『了解、よろしく~』
『さんきゅ、またな』

そうだった、今の俺は透明人間。三人は、目の前で激しくキスをする俺達が見えていないらしい。
けど、俺がVRで儀式イベントを見た時は当然アルバールの姿も見えていたのに、今はアルバールさえ見えていないという事だろうか?
くちゅ、くちゅ、とアルバールに舌を絡まれながらそんな事を考える。舌先からじんじんとした痺れと、背筋にゾワゾワした感覚が広がって思考が纏まらない。

『あれ?さっきまでいたNPC、何処行った……?』
一人の男の呟いた。

その呟きが聞き取れる程近い距離で、「んっ、は、ぁ……」アルバールの舌に翻弄されながら、彼の両手が頬を抑えながら指先で耳を擽られる。

ええと、その男の呟きから察するに、先程まではアルバールの姿が見えていたのに今は見えていないという事だ。
つまり供物を捧げて儀式の準備をしていた時は、アルバールは見えていたのか。さっきと今の違いは……

「んん……っ」
アルバールは、俺の腰を引き寄せて硬くなった自分のちんこを押し付けてきた。俺の息子もグリグリとアルバールの太腿に刺激されて、熱を帯びてくる。
「……アル、バールっ……っ」
何で。
昨日は、俺の様子を見て、自分の欲望を抑えてくれたのに。気持ちが通じたみたいで、嬉しかったのに。

「ぁ、やぁっ……」
アルバールが、男達の目の前で俺の衣装をまくりあげ、臀部を晒して中心の窪みに指を添える。その先を連想するのは容易で、俺は執拗に舌を絡ませるアルバールの顔を手で押して抵抗した。
「だ、駄目っ……!」

相手から見えていないとわかっていても、彼らの目の前で性的な行為をするのはハードルが高すぎた。
身体を捩った俺を、アルバールはくるんと後ろ向きにしたのでわかってくれたのかとホッとしたのも束の間。

「え、うわっ」
アルバールが俺を軽く押したので、俺はつんのめって前に跪く。すると次の瞬間には、ぐいん、と後ろに引っ張られ、俺は両膝に腕を入れられて抱き上げられた。ぷらんとした足を左右に大きく開かせられて、捲れた服から俺のちんこがポロンと飛び出し主張する。
「う、嘘、うそ……っ!!」
自分の急所を目の前の三人から思わず隠す俺。
でも本当に隠すべきなのは、そっちじゃなかった。

「うあっ……!!」
丸見えになった俺の後孔に、俺を抱えたまま座るアルバールの先端がずぶりと差し込まれたのだ。
「あ、あ、あっ……!!」
身体を支える物もなくすがれる物もない俺は、ただただ自分の重みでずぶ、ずぶ、とのめり込んで来るアルバールの肉棒を追い出す事が出来ない。

──目の前に、三人の男がいる前で、俺はアルバールに後ろから貫かれている。

それを意識した途端、身体が芯からかあっと熱くなり、俺の後ろの穴はひくひく蠢いてアルバールを締め付けた。
「いやぁ、やら、らめぇ……っっ」
全く慣らしてない穴に急に異物が侵入してきて壁が引っ張られ、ピリピリする。
なのに、どこか気持ち良く感じてしまう自分がいて、それに恐怖した。

嫌なのに、気持ち良い。気持ち良いのを、認めたくない。認めたくないけど……認めれば、楽になるのだろうか。

ばちゅん!どちゅ!どちゅ!どちゅん!!
「あ♡ああっ……♡♡」

儀式の時間なのに、その男達の前でそのままアルバールは何度も体位をかえ、見せ付けセックスで延々と俺を貪った。

『なんかNPCがいなくなって、そのまんまだわ』
『んだよー。今回こそ隠しイベント発生したと思ったのにー』

彼らがいなくなっても、アルバールは執拗に俺を追い立て、絶頂を促す。ふと見た彼の表情は寂しそうで、悔しそうで、哭きそうで……泣きたいのは俺の方なのに、何故か慰めたくなった。

彼は何をそんなに心配しているのだろう?
……言葉が、通じれば良いのに。朝の光を感じながら、俺はそんな事を願った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

年下くんに堕とされて。

bara
BL
イケメン後輩に堕とされるお話。 3話で本編完結です

【BL】魔王様の部下なんだけどそろそろ辞めたい

のらねことすていぬ
BL
悪魔のレヴィスは魔王様の小姓をしている。魔王様に人間を攫ってきて閨の相手として捧げるのも、小姓の重要な役目だ。だけどいつからかレヴィスは魔王様に恋をしてしまい、その役目が辛くなってきてしまった。耐えられないと思ったある日、小姓を辞めさせてほしいと魔王様に言うけれど……?<魔王×小姓の悪魔>

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

魔王のペットの嫁

よしゆき
BL
異世界に召喚された不憫受けが魔王のペットの嫁にされる話。 攻めが人外です。 攻めは言葉を話しません。 攻めは人の姿ではなく、人の姿になりません。

お疲れ騎士団長の癒やし係

丸井まー(旧:まー)
BL
騎士団長バルナバスは疲れていた。バルナバスは癒やしを求めて、同級生アウレールが経営しているバーへと向かった。 疲れた騎士団長(40)✕ぽよんぽよんのバー店主(40) ※少し久しぶりの3時間タイムトライアル作品です! お題は『手触り良さそうな柔らかむちむちマッチョ受けかぽよぽよおじさん受けのお話』です。 楽しいお題をくださったTectorum様に捧げます!楽しいお題をありがとうございました!! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

処理中です...