異世界では口を開かぬが吉。

イセヤ レキ

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4、レイプ魔との交流

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「ん……」
俺が目を覚ますと、今度はアルバールの顔が一番に視界に入ってきて、短い逃走時間が終わりを告げた事を理解した。
「セイヤ、इसे पियो」
「……ありがとう」
アルバールはスッとたらいに入った水を差し出す。顔を洗えと言われているのかと思った俺は、手を突っ込んでまず手を洗い、そのまま顔を洗う。

じゃぶじゃぶ洗っていると、アルバールが肩を揺らして笑っているのに気付いた。……何だろう?間違えた??
どうして良いのかわからず呆けていると、アルバールはたらいを持って泉から水を再び汲み、手のひらですくって一度口に含み、俺の後頭部を抑え……「わ、わかった!わかったから、もう大丈夫!!」

顔を近付けてくるアルバールの身体を両手で押して、俺はアルバールと同じように水を飲む。
多分、さっき、アルバールは水を飲めって言ったんだ。
「……セイヤ、ダイジョウブ……?」
アルバールがそう言うので、俺は頷く。すると、奴は何を思ったのか、再び身体を寄せて俺を押し倒してきた。
「え?えっ!?何でっっ??」
気づけば、身体中が筋肉痛になったかのように軋んで痛い。

「ちょ、待っ……!」
「セイヤ、オカす」
「何でそうなるんだーっっ!!」

……結局俺は、夕刻の儀式が始まる直前までアルバールに犯され続けた。


アルバールは、その儀式に今度は俺も連れて行った。
身体中が痛い。尻の穴はもっと痛い。けど、アルバールだけを責める事は出来なかった。

あの変な枝から助けられた後、自分からアルバールを誘ってしまった事を俺は覚えている。
よく分からないけど、変な液体を飲み込んでしまった後身体が火照ってしまい、それ以上に尻の穴に何かを突っ込んでめちゃくちゃに掻き回して欲しくて堪らなくなったのだ。あの変な液体は、ドラッグみたいな物だったのかもしれないけど……穴があったら埋まりたい。


頭はラリってたけど、不幸な事に全ての記憶は鮮明だった。あんなに気持ちの悪いと思っていた行為で快感を得て、ちんぽを扱いてもいないのに、尻穴をほじくられて射精までしてしまった。
更に悲惨なのは、それがラリっている間だけではなくそしてついさっきまでも、アルバールに散々掘られて、よがり狂ってしまった事だ。

いくら体格差があるとはいえ、アルバールを殴る事もせず喘いでいたらアルバールが勘違いするのは仕方ないだろう。
それに、気付いた事もある。
アルバールは、ひたすら俺に優しい。女でもないのに、繊細で大切な宝物に触れるかの様に俺に触れてくる。
だから、絆されてはいけないのに、突き放せない。少なくともあの変な植物から助けてくれた恩人なのに、暴力をふるってしまったら恩を仇で返す事になる。


儀式を近くで眺めながら、まじまじとアルバールを観察する。筋肉隆々で逞しく漢らしい褐色の身体、嘘なんかつきそうにない真っ直ぐ射抜くような綺麗な瞳、精悍で整った顔。
クラスメイトに一人でもいれば、二分の一……いや、三分の二の女はアルバールに恋をするだろう。

そんな男が、何故俺に執着するのかわからない。
しかし、もしここに現れたのが俺じゃなく、他の誰かでも彼は優しく接してセックスをしたのだろうか。

何だか胸がモヤモヤしたが、その時俺のお腹がぐうう、と鳴って慌てる。神聖な儀式の最中に俺の腹……ちょっとは空気読んでくれー……
アルバールはちらりと俺を見て、済まなそうな顔をした。
大丈夫、途中でやめろとは言わないから……!!
それから結構な時間が経過し、最後まで儀式を終えた頃には、祭壇の松明の灯りだけが煌々と輝いていた。


「……ありがとう」
洞窟の中に戻り、アルバールは泉の近くに置いてあった果物をまず俺に渡した。俺がそれを食べている間にアルバールは火を起こし、魚を焼いて米みたいなものを葉っぱで包んで蒸し始めた。
何を手伝えば良いのかもわからず、また方法もわからない俺は、食べながら見ているだけ。うん、やっぱりサバイバルで、自分がいかに役立たずなのかをひしひしと感じる。
しかし、時間をかけてアルバールが調理した夕飯はとても美味しかった。
殆んど調味料なんて使ってない筈なのに、作りたてを口に入れるとふわっと良い香りが漂って、あったかい。人が作ったものをその場で食べるのなんて、10年ぶり位かもしれない。今は亡くなったばーちゃんが、共働きでひとりぼっちの俺を気遣い、たまに遊びに来てくれた。

……駄目だ、思い出すと涙腺が緩む。

俺がアルバールを見ると、アルバールもこちらをじっと見ていた。やはりその視線はとても穏やかで、優しく感じる。
とてもレイプする人間には見えないんだけどなぁ……まぁ、見た目じゃ何もわからないのかもしれない。
警戒しないと──しかし、お腹を満たした俺はそのまま寝入ってしまった。そして先に寝た俺を、アルバールが襲う事はなかった。


翌朝、久しぶりにぐっすりと寝た俺は、アルバールに起こされた。どうやら、昨日儀式の最中に俺が居なくなった事を気にしているらしい。
俺が寝たふりをしていると、アルバールは呆れるでもなくそっと俺を持ち上げ、俺の身体を暖かいお湯で拭う。
この世界ではポットなんて便利なものはないから、一人早く起きてお湯を用意してくれたに違いなかった。
申し訳なくて寝たふりをやめた俺に、アルバールは自分の衣装と似た服と靴を俺に渡してくれた。アルバールの物を貸してくれたのかと始めは思ったが、それにしてはサイズが俺にぴったりだ。……一体いつの間にこんなものを手にれたのだろう?と疑問に思う。
俺が昨日、逃げ回っていた間に何処かに行って、手に入れたのかもしれない。

アルバールは、俺が着替えている間に洞窟の奥に行き、儀式の為の供物を持って出てきた。一瞬朝食かと思ってしまったが、どうやら朝食は儀式の後にとるようだ。
アルバールは俺が靴を履いて普通に歩けるのを確認してから、供物を片手で肩に担ぎ、俺の腕を引いた。
どうやら、儀式にはまた俺を連れて行く気らしい。
これ以上は足手まといになりたくなくて、俺はアルバールの持っていた供物を指さす。俺はアルバールに比べればそりゃひょろひょろだけど、アルバールの荷物を減らす手伝い位なら出来るから。
戸惑いながらも供物を一度下ろしたアルバールは、俺が供物の一部を運ぶジェスチャーをすれば意味が通じたみたいで、微笑んでくれた。

洞窟の外に出ると、まだ日が昇る前だった。しかし、昨日は夜寝るのが早かったからか、眠気は綺麗さっぱりない。
太陽で蒸れる前の、少し冷たく感じる空気が爽やかだ。

昔の人は、電気もないからこんな生活してたんだろうな、と思う。時計に縛られない生活は、俺にとっては心地好くて、理想的にすら感じた。
アルバールの儀式を目にしながら、俺は朝御飯の事を考えていた。

そうだ、ここにいつまでお世話になるかはわからないけど、火の起こし方くらい覚えておかないと。
マッチとかがあれば良いのになぁ。
あと、手伝うならヤカンとかフライパンとかがあれば便利だ。アルバールはナイフを器用に使っていたけど、俺は包丁すら扱えない。ばーちゃんのご飯の手伝いは専らピーラー係だったし。

アルバールがフライパンやピーラーを片手にするところを想像し、笑いが漏れる。駄目だ、似合わない。
だけど、マッチがあったら便利だとはきっと思うだろうなー。


まさか、この儀式の最中に願ったものがその後洞窟に戻ると泉の場所に現れるとは思わず、俺はそんな事ばかり考えていた。
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