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76、まさかの求婚。
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「完っ璧!完っ璧でございますわ、我らが珠玉のヴァーリア殿下……!!」
「……ミンナアリガトウ、オツカレサマー」
私は新手の拷問を何とか耐え忍び、ひたすらひたすら耐え忍び、やっとやっとやっと自由な時間を手に入れた。
「さぁ!もうすぐでダンスが始まってしまいますわ!」
「さぁさぁ!いよいよヴァーリア殿下の御披露目でございます!!」
いや全く自由な時間じゃなかった。
やたら長く足に絡んでくるスカートを蹴り上げるようにしてえっちらおっちらと何とか会場へと向かう。
やたら高いヒールの靴を履かされそうになったが、「どうせドレスで見えないし、そんなの履いたら踊れない」と言ってどうにか免除されていた。
今まで妹は、こんな大変な思いをしていたのか……!!
ごめんよ、いつも狼型でご飯だけ漁る姉で……!!
妹に懺悔しながらエーベルを探してキョロキョロするが、廊下には見当たらない。人型は耳や鼻が効かないから不便だなぁ、と思いながら会場の方へと進む……のだけど。
……ん?
廊下で談笑してる貴賓や見張りの兵士、皆が何故かこちらを向いて道を開けるので軽くびびった。
後ろにドラゴンでもいるのかと振り返っても、ドラゴンどころか猛獣も人間もいない。
まぁいいや、どうもどうも~~!
私が愛想笑いを振り撒きながら会場内へ到着すれば、人型をした父と何やら話しているらしい、私のパートナーであるエーベルを発見した。手を上げて呼び掛ける。
「エーベ……」
「何と美しい!!」
……は?
私は驚いてぐぎぎ、と顔をエーベルのいる方とは逆に向けた。そこには、興奮した様子の東国の第四皇子と、それに合わせて話す通訳がいた。
東国の第四皇子を見て思い出す。
そうだ、ドラゴン。ドラゴンの芸は何だったんだろう?
私はキョロキョロしてドラゴンの姿を探したが、既に会場からは姿を消していた。
「余は東国の第四皇子、宗徳という」
うん知ってる知ってる。さっき挨拶したしな。
私は頷いた。
「余は貴女の美しさに驚いている」
はぁどうも。
さっきの狼型との反応の違いに私も驚いている。
……で?この人は一体何が言いたいんだ?
私は首を傾げた。
第四皇子が何かを捲し立て、通訳が慌てて言葉を被せる。
「貴女はこの国の貴族の者か?喜ぶが良い、東国の後継者である余の妃として、迎えよう」
……はい?
何か色々突っ込みどころが多過ぎて理解が追い付かず、これは何かのジョークなのかと思って周りを見渡した。
しかし、周りはシーンとして、私達の成り行きを見守っている。ふと父とエーベルの方を見ると、そこには青筋を立てた父と、腰の鞭の柄に手を伸ばし、こちらにツカツカと歩み寄るエーベルの姿。
……鞭の柄!?
いやいやいやいや不味いでしょ!!
私は片手でどうどうとエーベルを宥めるようにジェスチャーをしながら、第四皇子に返事をした。
「あの、私は先程ご挨拶した第一王女のヴァーリアです」
通訳が第四皇子にそれを訳してもらうと、彼は仰天したような表情を示す。そして、咳払いして言った。
「それは大変失礼致しました。では、同じ王族同士何の支障もありませんね」
いやいや、支障ありまくりです。
私はエーベルに人殺しになって欲しくありません。
他国の貴賓である王族殺しとか、本当に色々最悪だ。
私は近付いてきたエーベルに聞こえるように業と大きな声で言った。
「あ、有難いお申し出ですが、私には既に婚約者がおりまして……」
ほらほら、私はきちんとエーベルを婚約者として認めてますよー、だから安心してねエーベルー!
私はそう念じながらエーベルを見たが……エーベルは暗雲を背負いながら、私に笑顔を見せた。
「……ミンナアリガトウ、オツカレサマー」
私は新手の拷問を何とか耐え忍び、ひたすらひたすら耐え忍び、やっとやっとやっと自由な時間を手に入れた。
「さぁ!もうすぐでダンスが始まってしまいますわ!」
「さぁさぁ!いよいよヴァーリア殿下の御披露目でございます!!」
いや全く自由な時間じゃなかった。
やたら長く足に絡んでくるスカートを蹴り上げるようにしてえっちらおっちらと何とか会場へと向かう。
やたら高いヒールの靴を履かされそうになったが、「どうせドレスで見えないし、そんなの履いたら踊れない」と言ってどうにか免除されていた。
今まで妹は、こんな大変な思いをしていたのか……!!
ごめんよ、いつも狼型でご飯だけ漁る姉で……!!
妹に懺悔しながらエーベルを探してキョロキョロするが、廊下には見当たらない。人型は耳や鼻が効かないから不便だなぁ、と思いながら会場の方へと進む……のだけど。
……ん?
廊下で談笑してる貴賓や見張りの兵士、皆が何故かこちらを向いて道を開けるので軽くびびった。
後ろにドラゴンでもいるのかと振り返っても、ドラゴンどころか猛獣も人間もいない。
まぁいいや、どうもどうも~~!
私が愛想笑いを振り撒きながら会場内へ到着すれば、人型をした父と何やら話しているらしい、私のパートナーであるエーベルを発見した。手を上げて呼び掛ける。
「エーベ……」
「何と美しい!!」
……は?
私は驚いてぐぎぎ、と顔をエーベルのいる方とは逆に向けた。そこには、興奮した様子の東国の第四皇子と、それに合わせて話す通訳がいた。
東国の第四皇子を見て思い出す。
そうだ、ドラゴン。ドラゴンの芸は何だったんだろう?
私はキョロキョロしてドラゴンの姿を探したが、既に会場からは姿を消していた。
「余は東国の第四皇子、宗徳という」
うん知ってる知ってる。さっき挨拶したしな。
私は頷いた。
「余は貴女の美しさに驚いている」
はぁどうも。
さっきの狼型との反応の違いに私も驚いている。
……で?この人は一体何が言いたいんだ?
私は首を傾げた。
第四皇子が何かを捲し立て、通訳が慌てて言葉を被せる。
「貴女はこの国の貴族の者か?喜ぶが良い、東国の後継者である余の妃として、迎えよう」
……はい?
何か色々突っ込みどころが多過ぎて理解が追い付かず、これは何かのジョークなのかと思って周りを見渡した。
しかし、周りはシーンとして、私達の成り行きを見守っている。ふと父とエーベルの方を見ると、そこには青筋を立てた父と、腰の鞭の柄に手を伸ばし、こちらにツカツカと歩み寄るエーベルの姿。
……鞭の柄!?
いやいやいやいや不味いでしょ!!
私は片手でどうどうとエーベルを宥めるようにジェスチャーをしながら、第四皇子に返事をした。
「あの、私は先程ご挨拶した第一王女のヴァーリアです」
通訳が第四皇子にそれを訳してもらうと、彼は仰天したような表情を示す。そして、咳払いして言った。
「それは大変失礼致しました。では、同じ王族同士何の支障もありませんね」
いやいや、支障ありまくりです。
私はエーベルに人殺しになって欲しくありません。
他国の貴賓である王族殺しとか、本当に色々最悪だ。
私は近付いてきたエーベルに聞こえるように業と大きな声で言った。
「あ、有難いお申し出ですが、私には既に婚約者がおりまして……」
ほらほら、私はきちんとエーベルを婚約者として認めてますよー、だから安心してねエーベルー!
私はそう念じながらエーベルを見たが……エーベルは暗雲を背負いながら、私に笑顔を見せた。
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