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38、エーベルの忍耐力。
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「いやでも、お前が女の子と二人きりで歩くなんて……しかも、無視せずにまともに会話してたっぽいとか初めて聞いたからさー」
「……ああ、成る程。やっぱり誰の目が見ているかわかったものではありませんね。フードをかぶせたのに可愛い女の子と噂されるなんて……意味がない」
「え?やっぱり浮気?」
「違いますよ」
「じゃあ誰だよ!!」
「秘密です」
隊長がどれだけしつこく粘っても、エーベルは口を割らなかった。
***
早いもので、私達が北の森に派遣されてから1ヶ月が経過した。森も猛獣遣いと協力してあらかた調べ終えたというのに、いまだ猛獣の急激な増加についての解明はなされていない。
その為猛獣隔離室を拡大する工事は急ピッチで進められ、森の外に出てしまった猛獣を捉えて調教するのにエーベルは多忙を極めていた。
猛獣調教師であるエーベルの仕事は、ほぼほぼ休みがない。だから、休める時には休んで欲しいのに「ヴァーリア様欠乏症の私に、もふもふのご褒美を下さい」とか言われると無下にも扱えなくて困ってしまう。
エーベルが宿に戻れるのが日没後だとすれ違いも多く、とうとうエーベルに泣きつかれた私は仕方なくエーベルの寝室のベッドで惰眠を貪っていた。今回ばかりは人間用のパジャマをエーベルが用意してくれたので、裸族の私も流石に腕を通している。
さらりとした布は肌触りがよく、身体を包む布地の感触を動く度に感じてはじめは違和感があったが、しばらくするとそれも直ぐに薄れた。
頭を撫でられた感覚で、目が覚める。
うっすら目を開けると、エーベルが私の顔を上から覗きながら銀色の髪をさらさらと撫で梳いていた。疲れている筈なのに、その微笑みはとても穏やかで優しさに溢れている。私は幸せな気分になって、寝惚けた頭でふにゃ、と笑った。
「エーベル、お疲れ様ぁ……」
「ヴァーリア様もお疲れでしょう。……どうぞこのまま寝てしまって下さい」
「……ん……」
私はとろとろと再び睡魔に身を投げようとしたが、エーベルの呟きが耳に入ってそれを諦めた。
「我慢我慢我慢我慢、可愛い唇に吸い付きたいけど無防備な首筋舐めたいけどパジャマ脱がせたいけど胸揉みたいけどお尻触りたいけど全身触りたいけどおまんこパックリしたいけど膣にちんこ突っ込んで種付けしたいけど、まだ我慢我慢我慢我慢我慢我慢……」
「……」
私が無言でむくり、と上体をあげると、エーベルは股間をもっこりさせたまま爽やかにのたまう。
「大丈夫ですよ、そのままお休み下さい。ヴァーリア様の頭を撫でる以外は我慢致しますので」
「うん、エーベル程エーベルの忍耐力信じてないんで、部屋に戻るわ」
そのままベッドから立ち上がろうとすると、寝惚けて足がもつれた。普段眠いのに二足歩行で歩く事がないからだろう。
ふらついた私はエーベルにガシッと腕を掴まれ、そのまま横抱きに抱っこされる。
お姫様抱っこだー。あ、私本当に王女だったっけか。
背中に当たる熱い物体が気になるものの、エーベルの早鐘の様な鼓動に笑ってしまう。
狼であっても人であっても、私はエーベルをドキドキさせる事が出来るんだなぁと思うと少し嬉しかった。
そう言えば、人型でデートしてみようと考えてから、ペガススにすげなく断られて以来すっかり忘れていた。
今度また、ペガスス抜きで人型デートを提案したら喜んでくれるだろうか……そんな事を考えながら、ゆらゆらとした揺れが気持ちよくて私は再び寝てしまった。
「……ヴァーリア様は、口で言うよりずっと私を信用して下さっていますよね、本当に……」と、エーベルが夢に落ちる瞬間言った気がした。
「……ああ、成る程。やっぱり誰の目が見ているかわかったものではありませんね。フードをかぶせたのに可愛い女の子と噂されるなんて……意味がない」
「え?やっぱり浮気?」
「違いますよ」
「じゃあ誰だよ!!」
「秘密です」
隊長がどれだけしつこく粘っても、エーベルは口を割らなかった。
***
早いもので、私達が北の森に派遣されてから1ヶ月が経過した。森も猛獣遣いと協力してあらかた調べ終えたというのに、いまだ猛獣の急激な増加についての解明はなされていない。
その為猛獣隔離室を拡大する工事は急ピッチで進められ、森の外に出てしまった猛獣を捉えて調教するのにエーベルは多忙を極めていた。
猛獣調教師であるエーベルの仕事は、ほぼほぼ休みがない。だから、休める時には休んで欲しいのに「ヴァーリア様欠乏症の私に、もふもふのご褒美を下さい」とか言われると無下にも扱えなくて困ってしまう。
エーベルが宿に戻れるのが日没後だとすれ違いも多く、とうとうエーベルに泣きつかれた私は仕方なくエーベルの寝室のベッドで惰眠を貪っていた。今回ばかりは人間用のパジャマをエーベルが用意してくれたので、裸族の私も流石に腕を通している。
さらりとした布は肌触りがよく、身体を包む布地の感触を動く度に感じてはじめは違和感があったが、しばらくするとそれも直ぐに薄れた。
頭を撫でられた感覚で、目が覚める。
うっすら目を開けると、エーベルが私の顔を上から覗きながら銀色の髪をさらさらと撫で梳いていた。疲れている筈なのに、その微笑みはとても穏やかで優しさに溢れている。私は幸せな気分になって、寝惚けた頭でふにゃ、と笑った。
「エーベル、お疲れ様ぁ……」
「ヴァーリア様もお疲れでしょう。……どうぞこのまま寝てしまって下さい」
「……ん……」
私はとろとろと再び睡魔に身を投げようとしたが、エーベルの呟きが耳に入ってそれを諦めた。
「我慢我慢我慢我慢、可愛い唇に吸い付きたいけど無防備な首筋舐めたいけどパジャマ脱がせたいけど胸揉みたいけどお尻触りたいけど全身触りたいけどおまんこパックリしたいけど膣にちんこ突っ込んで種付けしたいけど、まだ我慢我慢我慢我慢我慢我慢……」
「……」
私が無言でむくり、と上体をあげると、エーベルは股間をもっこりさせたまま爽やかにのたまう。
「大丈夫ですよ、そのままお休み下さい。ヴァーリア様の頭を撫でる以外は我慢致しますので」
「うん、エーベル程エーベルの忍耐力信じてないんで、部屋に戻るわ」
そのままベッドから立ち上がろうとすると、寝惚けて足がもつれた。普段眠いのに二足歩行で歩く事がないからだろう。
ふらついた私はエーベルにガシッと腕を掴まれ、そのまま横抱きに抱っこされる。
お姫様抱っこだー。あ、私本当に王女だったっけか。
背中に当たる熱い物体が気になるものの、エーベルの早鐘の様な鼓動に笑ってしまう。
狼であっても人であっても、私はエーベルをドキドキさせる事が出来るんだなぁと思うと少し嬉しかった。
そう言えば、人型でデートしてみようと考えてから、ペガススにすげなく断られて以来すっかり忘れていた。
今度また、ペガスス抜きで人型デートを提案したら喜んでくれるだろうか……そんな事を考えながら、ゆらゆらとした揺れが気持ちよくて私は再び寝てしまった。
「……ヴァーリア様は、口で言うよりずっと私を信用して下さっていますよね、本当に……」と、エーベルが夢に落ちる瞬間言った気がした。
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