81 / 94
81.自宅の一コマ(side保)
しおりを挟む
「保、夕飯まで少し時間あるけど、おやつにする?」
一階に戻ると、母親がエプロンをしてせっせと夕飯の下ごしらえを始めていた。
「いや、お腹空いてないからいいや。ケンと遊んでる」
お腹が空いてない、というより、これから出てくるであろう大量の料理の為に腹を空かしておく、という方が正しい。
母親の中で、俺の食欲はピークだった高校時代のままで止まっているから、大学に入って食欲が半分以下になったと電話で話していても、あまり実感がないらしい。
台所をパッと見、どう考えても四人前以上ありそうだ。
「だから、夕飯もそんなに量はいらないよ」
「そう?ああ、疾風おじさん、夕飯には間に合うように来るって」
「そっか。おじさんにもお土産買っておいたんだ、良かった」
「ちょ、母親には!?」
愕然とした顔をする母親が面白くて、思わず笑う。
「きちんとあるって。ほら、何か知らないけど有名な店らしいよ」
「うわ!美味しそう~♡♡流石我が息子!!」
くるくる表情を変える母親を横目に、俺はケンに遊んで貰う。
猫じゃらしを持った俺を見て、ケンは“ヤレヤレ付き合ってやるか”と言わんばかりによっこらしょと重い腰を上げて、キャットタワーを降りてきてくれた。
胡座をかいた俺の膝に頭と背中を擦り付けるケンを、手の甲で撫でて。
「ケンの調子、最近どう?」
「きちんとご飯は食べられてるよ」
「そっか。なら良かった」
元々保護猫だったケンは、もう高齢ということもあって腎臓があまり良くない。
だから、買ってきたフードも腎臓に負担がかからない物を選んでいる。
ペットは自費診療だから医療費が馬鹿にならないのだけど、以前ペットの保険証というものも扱っている会社があるとおじさんから教えて貰って、加入していたからかなり助かっていた。
ピンポーン、というチャイムが鳴って、「お邪魔します」というおじさんの声が聞こえた。
俺はケンの身体をポンポンと軽く叩いて、玄関まで迎えに行く。
「おじさん、わざわざすみません。母がいつもお世話になってます。それでこれ、お土産です」
「いや、親子水入らずのところお邪魔してごめんね。でも、久しぶりに保君に会えて嬉しいよ」
そして、おじさんは声を潜めて俺だけに聞こえる声で囁いた。
「昨年は帰って来ないーって、雛子さん暴れてたよ。かなり寂しかったみたい」
雛子さん、とは母親のことだ。
「すみません。でも、おじさんが慰めてくれたんでしょ?」
俺が笑って言えば、おじさんは一瞬目を見張って、その後イケメンの男らしく、ニヤリと笑った。
一階に戻ると、母親がエプロンをしてせっせと夕飯の下ごしらえを始めていた。
「いや、お腹空いてないからいいや。ケンと遊んでる」
お腹が空いてない、というより、これから出てくるであろう大量の料理の為に腹を空かしておく、という方が正しい。
母親の中で、俺の食欲はピークだった高校時代のままで止まっているから、大学に入って食欲が半分以下になったと電話で話していても、あまり実感がないらしい。
台所をパッと見、どう考えても四人前以上ありそうだ。
「だから、夕飯もそんなに量はいらないよ」
「そう?ああ、疾風おじさん、夕飯には間に合うように来るって」
「そっか。おじさんにもお土産買っておいたんだ、良かった」
「ちょ、母親には!?」
愕然とした顔をする母親が面白くて、思わず笑う。
「きちんとあるって。ほら、何か知らないけど有名な店らしいよ」
「うわ!美味しそう~♡♡流石我が息子!!」
くるくる表情を変える母親を横目に、俺はケンに遊んで貰う。
猫じゃらしを持った俺を見て、ケンは“ヤレヤレ付き合ってやるか”と言わんばかりによっこらしょと重い腰を上げて、キャットタワーを降りてきてくれた。
胡座をかいた俺の膝に頭と背中を擦り付けるケンを、手の甲で撫でて。
「ケンの調子、最近どう?」
「きちんとご飯は食べられてるよ」
「そっか。なら良かった」
元々保護猫だったケンは、もう高齢ということもあって腎臓があまり良くない。
だから、買ってきたフードも腎臓に負担がかからない物を選んでいる。
ペットは自費診療だから医療費が馬鹿にならないのだけど、以前ペットの保険証というものも扱っている会社があるとおじさんから教えて貰って、加入していたからかなり助かっていた。
ピンポーン、というチャイムが鳴って、「お邪魔します」というおじさんの声が聞こえた。
俺はケンの身体をポンポンと軽く叩いて、玄関まで迎えに行く。
「おじさん、わざわざすみません。母がいつもお世話になってます。それでこれ、お土産です」
「いや、親子水入らずのところお邪魔してごめんね。でも、久しぶりに保君に会えて嬉しいよ」
そして、おじさんは声を潜めて俺だけに聞こえる声で囁いた。
「昨年は帰って来ないーって、雛子さん暴れてたよ。かなり寂しかったみたい」
雛子さん、とは母親のことだ。
「すみません。でも、おじさんが慰めてくれたんでしょ?」
俺が笑って言えば、おじさんは一瞬目を見張って、その後イケメンの男らしく、ニヤリと笑った。
31
お気に入りに追加
1,333
あなたにおすすめの小説


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。



飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる