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45.下心と先輩の家とやっぱり下心(side修平)
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「お邪魔します」
「汚くてごめんな、あーポスト見てくるの忘れた!ちょっと見てくるわ」
保先輩宅に潜入成功を果たした俺、ついつい部屋を見回してしまった。
誰の家に行ってもこんなことしない……というより、興味ないのに、いちいち見たりしない。
和室に小さなちゃぶ台。
ステンレス製のシンクに、一口コンロ。
台所には、母親から送られてきたと思われるレトルト食品が沢山詰まった段ボールが置いてあって、部屋の古さとは対照的に、冷蔵庫とベッドだけが新しさを訴えてくる。
保先輩の部屋は、汚いというより小物が多い印象だ。
ゲームや小物、旅先のキャラクターがそこかしこに雑多に使われている為、部屋に統一感は皆無だ。
美人な保先輩からは想像出来ない部屋に、俺は逆に納得した。賑やかな部屋が、先輩の明るさとマッチする。
「一人にしてごめん!えーと、何か飲む?」
「次のバイトは何時からなんですか?」
「ええと、16時からだから……ああ、もう直ぐに出ないと間に合わないかも」
「なら、わざわざ飲み物なんて用意しないで良いですよ」
俺は、自販機で買って貰ったコーラのペットボトルをちゃぶ台の上にトン、と置いた。
「そう?わざわざ家まで来て貰ったのに、なんかごめん」
「俺が暇で勝手に着いて来ただけなんで」
「……」
あ、今絶対「そういえばそうだな」とか思ってる。
保先輩は素直で単純で、わかりやすい。
そんなところも可愛い。
しかしそうか。
保先輩のお尻の具合をこの目で確認しようと思っていたのに、残念だ。
その為、保先輩がバイトに行っている最中、軟膏とかも購入したんだけど。
「次のバイト先まで着いて行っても良いですか?」
ストーカー並の発言をしている自覚はあるが、それでも聞いてしまった。
俺がここまで着いてきたのは、保先輩の家の場所を知るとか、保先輩の下半身の状態を見るとか、下心だけではなかった。
いや、下心も満載だが、それだけではなかった。
俺は今日、どうしても保先輩に言わなきゃならないことがある。
家まで来れば少しは話せるかな、と思ってここまで来たが、その目的は達成出来ていない。
「え?外だから、夜は寒いよ?」
外?工事現場か何か?その細腕で?
「何のバイトですか?」
「えーと、イベントのバイト。現場に行かないと何処に配属されるかわからないけど、受付か売り子か整備かな?イベント系の日雇いバイトの登録しててさ、空いた時間都合良ければって感じで入れてるんだ。その場でお金も貰えるし」
「そうなんですね」
「何かイベントのバイト仲間、結構仲良くて。イベント終わると、大抵皆飲みに行くんだよね。で、バイト代が飲み代に変わるとか、あるあるでさ」
「……え?保先輩も行くんですか?」
お酒の弱い保先輩が!?
俺を、急に不安が襲ってくる。
「いや、俺は偶に参加する位。いつも誘われるから、流石に毎回断るのも悪いし。でも、極力断ってるよ?皆は暇つぶしとか酒代とか遊び代の為にバイトしてるっぽいんだけど、俺はマジで生活掛かってるからさ……!!」
保先輩は笑って言う。
この人は、仲間は遊ぶ金があるのにどうして自分ばかり、と思わない。
他人と比べて自分は大変、だなんて言わない。
ただ、大学でもバイト先でも、誘いを断る度、申し訳ないな、と思うのだろう。
──ああ、この人が大好きだ。
ただ、そう思った。
「汚くてごめんな、あーポスト見てくるの忘れた!ちょっと見てくるわ」
保先輩宅に潜入成功を果たした俺、ついつい部屋を見回してしまった。
誰の家に行ってもこんなことしない……というより、興味ないのに、いちいち見たりしない。
和室に小さなちゃぶ台。
ステンレス製のシンクに、一口コンロ。
台所には、母親から送られてきたと思われるレトルト食品が沢山詰まった段ボールが置いてあって、部屋の古さとは対照的に、冷蔵庫とベッドだけが新しさを訴えてくる。
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ゲームや小物、旅先のキャラクターがそこかしこに雑多に使われている為、部屋に統一感は皆無だ。
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「なら、わざわざ飲み物なんて用意しないで良いですよ」
俺は、自販機で買って貰ったコーラのペットボトルをちゃぶ台の上にトン、と置いた。
「そう?わざわざ家まで来て貰ったのに、なんかごめん」
「俺が暇で勝手に着いて来ただけなんで」
「……」
あ、今絶対「そういえばそうだな」とか思ってる。
保先輩は素直で単純で、わかりやすい。
そんなところも可愛い。
しかしそうか。
保先輩のお尻の具合をこの目で確認しようと思っていたのに、残念だ。
その為、保先輩がバイトに行っている最中、軟膏とかも購入したんだけど。
「次のバイト先まで着いて行っても良いですか?」
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俺がここまで着いてきたのは、保先輩の家の場所を知るとか、保先輩の下半身の状態を見るとか、下心だけではなかった。
いや、下心も満載だが、それだけではなかった。
俺は今日、どうしても保先輩に言わなきゃならないことがある。
家まで来れば少しは話せるかな、と思ってここまで来たが、その目的は達成出来ていない。
「え?外だから、夜は寒いよ?」
外?工事現場か何か?その細腕で?
「何のバイトですか?」
「えーと、イベントのバイト。現場に行かないと何処に配属されるかわからないけど、受付か売り子か整備かな?イベント系の日雇いバイトの登録しててさ、空いた時間都合良ければって感じで入れてるんだ。その場でお金も貰えるし」
「そうなんですね」
「何かイベントのバイト仲間、結構仲良くて。イベント終わると、大抵皆飲みに行くんだよね。で、バイト代が飲み代に変わるとか、あるあるでさ」
「……え?保先輩も行くんですか?」
お酒の弱い保先輩が!?
俺を、急に不安が襲ってくる。
「いや、俺は偶に参加する位。いつも誘われるから、流石に毎回断るのも悪いし。でも、極力断ってるよ?皆は暇つぶしとか酒代とか遊び代の為にバイトしてるっぽいんだけど、俺はマジで生活掛かってるからさ……!!」
保先輩は笑って言う。
この人は、仲間は遊ぶ金があるのにどうして自分ばかり、と思わない。
他人と比べて自分は大変、だなんて言わない。
ただ、大学でもバイト先でも、誘いを断る度、申し訳ないな、と思うのだろう。
──ああ、この人が大好きだ。
ただ、そう思った。
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