42 / 94
42.一夜にして作り替えられた身体(side保)
しおりを挟む
「保先輩、座って下さい」
俺を労ったのか、周りに座席を譲るべき人がいないかどうかざっと見回してから、修平は俺をひとつだけ空いていた席に座らせた。
「ありがと」
俺は、目の前に立つ修平を見上げて御礼を言う。
平日は全然混まない時間帯なのに、土日は違うらしい。人に当たらないで立つのは不可能な程に、通勤ラッシュ、とまではいかないものの、適度よりは明らかに乗客の数が多い。
「何かのイベントでもあったのかな」
「どうでしょう。そんな感じはしますね」
俺の乗り換え駅は比較的発展していて、買い物でも遊ぶのでも、近隣の駅から人が集中しやすかった。
──沈黙。
普段より顔の距離が遠いから、あまり話し掛けるのも周りの迷惑になるかなと思い、俺は口を閉じた。
修平も会話を振ってこないから、似たようなことを思ったのかもしれない。
バイト前の時間は凄くバタバタしていて、恥ずかしいとかどんな顔して話せばいいか、なんて二の次だったから緊張も羞恥心も吹っ飛んでいたけど。
改めて二人きりになって、俺は修平と何を話して良いのか、わからなくかった。
俺達、ただの大学の先輩と後輩……だよな?
セックスした時点で、せフレとでも言うべきなんだろうか?
というか、修平はどんなつもりで俺とセックスなんて……。
そんな考えが頭の中にぐるぐる渦巻いて、けれども当然どれも電車では出来ない話で、俺は口を開いては、閉じた。
ふと、目の前の修平の股間に視線が向いてしまい、一人勝手に慌てる。
「……っ」
昨日は、修平のペニスが俺の……。
昨日の情交を思い出してしまったその時、俺の後ろの穴は、ヒクヒクと何度も物欲しげに刺激を求めて動きだした。
う、嘘だろ……!?
修平とのただ一度の交わりは、一夜にして俺の身体を作り替えていた。
まさか肛門に何かを突っ込まれて快感を得る日が来るとは思わなかったが、実際に一度味わってしまえば、それはあっさり忘れられるものではなくて。
……早く、あそこを突いて欲しい……っ
そんな淫らな願いが、俺の脳裏を占拠していく。
下半身が元気になってパンツの生地を押し上げ、地味に痛い。
何で、俺、一人こんなに興奮しちゃってんだろ……これじゃ変態じゃん。
情けなくて、恥ずかしくて、俺は膝に置いた鞄をぎゅ、と抱き締めた。
すると、上からハァ、というため息が降ってくる。
修平だ。
タイミングが良すぎて、俺が勝手に発情したのに気付き、こんな電車の中で、なんて呆れたのかと思ったけど、どうも違うようだった。
仏頂面で、苦虫を噛んだような、不機嫌さの滲む顔。
露骨に嫌悪感を出すなんて珍しい、と思いながら首を捻ると、修平はぐら、と傾いて「あ、すみません」と何故か斜め後ろに立っていた男にぶつかった。
……ん?
体幹のしっかりした柔道部の修平。
今のってわざとだよな……?
俺が訝しく思いながら状況を見ている中、修平は声を落としてコソコソ、と男に何か言った。
「……そんなこと私はしてないっ!!」
男は、顔を真っ赤にさせて怒る。
ザワつく車内。
ん??
よくわからないが、次の駅でその男は電車から降りた。
「──どうしますか?」
修平が声を掛けたのは、修平の隣に立っていた同い年位の女の子だった。
女の子は俯き、そのまま顔を小さく横に振る。
痴漢、だったらしい。
ボブカットの可愛い女の子は、目に涙を浮かべながら、それでもホッと安心した表情を浮かべていた。
俺を労ったのか、周りに座席を譲るべき人がいないかどうかざっと見回してから、修平は俺をひとつだけ空いていた席に座らせた。
「ありがと」
俺は、目の前に立つ修平を見上げて御礼を言う。
平日は全然混まない時間帯なのに、土日は違うらしい。人に当たらないで立つのは不可能な程に、通勤ラッシュ、とまではいかないものの、適度よりは明らかに乗客の数が多い。
「何かのイベントでもあったのかな」
「どうでしょう。そんな感じはしますね」
俺の乗り換え駅は比較的発展していて、買い物でも遊ぶのでも、近隣の駅から人が集中しやすかった。
──沈黙。
普段より顔の距離が遠いから、あまり話し掛けるのも周りの迷惑になるかなと思い、俺は口を閉じた。
修平も会話を振ってこないから、似たようなことを思ったのかもしれない。
バイト前の時間は凄くバタバタしていて、恥ずかしいとかどんな顔して話せばいいか、なんて二の次だったから緊張も羞恥心も吹っ飛んでいたけど。
改めて二人きりになって、俺は修平と何を話して良いのか、わからなくかった。
俺達、ただの大学の先輩と後輩……だよな?
セックスした時点で、せフレとでも言うべきなんだろうか?
というか、修平はどんなつもりで俺とセックスなんて……。
そんな考えが頭の中にぐるぐる渦巻いて、けれども当然どれも電車では出来ない話で、俺は口を開いては、閉じた。
ふと、目の前の修平の股間に視線が向いてしまい、一人勝手に慌てる。
「……っ」
昨日は、修平のペニスが俺の……。
昨日の情交を思い出してしまったその時、俺の後ろの穴は、ヒクヒクと何度も物欲しげに刺激を求めて動きだした。
う、嘘だろ……!?
修平とのただ一度の交わりは、一夜にして俺の身体を作り替えていた。
まさか肛門に何かを突っ込まれて快感を得る日が来るとは思わなかったが、実際に一度味わってしまえば、それはあっさり忘れられるものではなくて。
……早く、あそこを突いて欲しい……っ
そんな淫らな願いが、俺の脳裏を占拠していく。
下半身が元気になってパンツの生地を押し上げ、地味に痛い。
何で、俺、一人こんなに興奮しちゃってんだろ……これじゃ変態じゃん。
情けなくて、恥ずかしくて、俺は膝に置いた鞄をぎゅ、と抱き締めた。
すると、上からハァ、というため息が降ってくる。
修平だ。
タイミングが良すぎて、俺が勝手に発情したのに気付き、こんな電車の中で、なんて呆れたのかと思ったけど、どうも違うようだった。
仏頂面で、苦虫を噛んだような、不機嫌さの滲む顔。
露骨に嫌悪感を出すなんて珍しい、と思いながら首を捻ると、修平はぐら、と傾いて「あ、すみません」と何故か斜め後ろに立っていた男にぶつかった。
……ん?
体幹のしっかりした柔道部の修平。
今のってわざとだよな……?
俺が訝しく思いながら状況を見ている中、修平は声を落としてコソコソ、と男に何か言った。
「……そんなこと私はしてないっ!!」
男は、顔を真っ赤にさせて怒る。
ザワつく車内。
ん??
よくわからないが、次の駅でその男は電車から降りた。
「──どうしますか?」
修平が声を掛けたのは、修平の隣に立っていた同い年位の女の子だった。
女の子は俯き、そのまま顔を小さく横に振る。
痴漢、だったらしい。
ボブカットの可愛い女の子は、目に涙を浮かべながら、それでもホッと安心した表情を浮かべていた。
52
お気に入りに追加
1,333
あなたにおすすめの小説


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。



飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる