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20.バイト先でまさかの再会(side保)
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「いらっしゃいませー!」
俺は、バイト上がりギリギリの時間に入店された二人組の男性に愛想良く声を掛けた。
二名様ですか、こちらへご案内致します……と続ける前に、相手が先に口を開く。
「……保じゃん」
「え?何お前、こんなところで知り合い?」
俺は、血の気が引いた。
地元を離れたこんなところで、何で……!!
待ち合わせをしていない知り合いが、同じ日、同じ時間、同じ場所にいることを、神様の悪戯と言わずに何と言うのだろう。
「こいつだよ、俺の元カノ寝取ったの」
「えっ!?お前のトラウマの元凶?」
元々仲良くしていた先輩の、射殺されそうな視線に怖気付く。
先輩の連れは、ヒュウ、と口笛を吹くと、「何なに、これって運命の再会じゃね?」と笑って言った。
多分、和ませるつもりで言ったのだろうが、険悪なムードは更に酷くなるばかり。
俺も、喉がカラカラに乾いて、何を発言すれば良いのかわからない。
雰囲気を察した店長が、すすっと近寄って助け舟を出してくれる。
「安藤君、もう上がっていいよ~。二名様、こちらへどうぞ~」
「あっ……」
「何だよ、また逃げるのか」
先輩は店長の案内に従うことなく、俺を睨み付けた。
連れの人が慌てて、「おい、流石にここじゃ迷惑だろ!」とフォローしてくれた。
「……ここにいるから、さっさと帰る準備してこいよ」
先輩に言われ、俺は頷く。
連れの人は、店長に「すみません、ここ知り合いみたいで、少し外で話したらまた来まーす」と苦笑いしながら言った。
この店には、バックヤードからは普段使わない非常口があるだけで、外に出られない。
出られたとしても、待つと言った先輩を置いて逃げることは出来なかっただろう。
俺が覚悟を決めて着替え、店内に戻ると先輩は俺の手首をガッと掴み、そのままズルズルと引き摺るようにして店の外に出た。
グイッと俺を店の壁に押し付け、先輩は冷めた目で俺を見る。
「……お前さあ、信じてた彼女と後輩に裏切られた俺の気持ち、わかる?」
「……すみません」
それしか、言えなかった。
高校一年の時……四年前と、同じやり取り。
「何で謝るだけなの?謝れば、人の彼女と合体して良い訳?保くらいモテるなら……女なんて選びたい放題だったのに、何で、俺の彼女だった訳!?」
先輩の魂の叫びを、俺はただ俯いて受け止める。
「……すみません……」
「だからっ……!!うわっ、痛っ」
ふと、先輩からの圧力がなくなって。
「保先輩に、何してんすか?」
俯いていた顔を上げれば、先輩の後ろに修平がいて、先輩の手を捻り上げていた。
俺は、バイト上がりギリギリの時間に入店された二人組の男性に愛想良く声を掛けた。
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「……保じゃん」
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「……すみません……」
「だからっ……!!うわっ、痛っ」
ふと、先輩からの圧力がなくなって。
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