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13 ちょっとした悩み事

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そんなシアナの変化に、ウォリスが気付かないはずはない。
「シアナ、何か悩み事があるのではないですか?」
「え?」
レストランの個室でウォリスにそう真剣で心配そうに言われ、シアナは我に返る。

「私には話せない悩みですか?」
そう問われて、シアナはむしろウォリスしか解決出来ない悩みだ、と思いながら首を横に振った。

「最近のシアナは、隙がありすぎて不安……いえ、ぼんやり物思いに耽る様子も素敵だと噂……いえ、とにかく怪我でもするのではないかと、心配なのです」
「ウォリス」
「はい」
誰も個室に入室して来ないことを確認すると、シアナは俯いてポソポソとウォリスに尋ねる。

「……私に性的な魅力は感じますか?」
「……は?」
シアナの呟きに似た小さな声をしっかり拾ったウォリスの額に、青筋が浮かんだ。

「誰に、ちょっかいを出されたのですか?」
「いえ、ウォリスのお陰で最近は大丈夫なのですが……」
「では、お付き合いをさせて頂く前ですか?私の知っている輩ですか?それとも――」
「ち、違うのです!」
怒りをあらわにするウォリスの食卓に置かれた握り拳を、シアナはぎゅっと握った。

「ウォリスの話です」
「私の……?」
「その、ウォリスは私と付き合いだしても、二人きりになっても、何もしようとしてこないではないですか……っ」
シアナは顔を真っ赤にして、一息ひといきに最近の悩みをウォリスにぶつけた。

「ウォリスにとって、私は魅力ないですか? 触れたくなったり、キスしたくなったり、しませんかっ?」
シアナより後に恋人が出来た、と話していた友人から、恋人に求められすぎて困る、という惚気話をシアナは何度も聞かされていた。
それでなくても、家にはお互いを大事にし合う育ての親が年中イチャイチャしているのを見ているのだ。

「よく考えたら、神殿にいた時もウォリスだけは聖女たちの誘いに乗りませんでしたし、そんな欲がない人なのか、私にそこまでの魅力がないのかわからなくて……!!」

シアナの告白を聞いたウォリスは、シアナと繋いでないほうの手を額にあてて、ふぅー、と深く息を吐いた。

「人がせっかく……」
「え?」
「いいえ。シアナ、あなたに対して性的な魅力を感じない訳がありません。ただ、シアナが今までそうした目で見られることを忌避してきたことを知っているので、そうした輩と同じだと思われないようにひたすら耐えて隠して我慢していただけですよ」

ウォリスから、初めて情欲のこもった目で真っ直ぐに見つめられ、シアナは呼吸の仕方を忘れたかのように、息を止めた。
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