12 / 17
12 思いの変化
しおりを挟む
「シアナが聖女でなくなる日を夢見ていたのは、私も同じなのです」
ウォリスは端正な顔をふっと緩め、優しい眼差しでシアナを見つめた。
思わず胸がドキリと鳴って、シアナは慌てて視線を窓の外に向ける。
しかし、四年間という歳月をずっと見守り続け、告白をしてくれたウォリスには本音で返事をしなければという気持ちは強く、横を向いたままであっても口は開いた。
「……私も、ウォリスが好きです。けれど、私の抱えている気持ちが異性としてなのかは、わかりません」
シアナが正直に話せば、ウォリスは嬉しそうに笑った。
「今はそれで充分です」
やがて長い道のりを経て辺境伯領に到着したシアナは、四年ぶりに育ての親に再会することができた。
「お父さん!パパ!」
同性パートナーである二人にシアナはそう呼びながら、抱き着いた。
「シアナ、お帰りなさい」
「大変だったな、よく戻ってきてくれた……!」
再会を喜ぶ二人とシアナは、抱き締め合いながらぽろぽろと涙を流す。
「お久しぶりです、ウォリス君。何年かかるかわからない任務を引き受けてくださり、ありがとうございました」
「いえ、自ら志願したことなので」
医療院に通っていた患者や兵士も二人に気付き、あっという間に人だかりが出来て、その日は辺境伯に呼ばれて宴が繰り広げられたのだった。
医療院で再び元気に働き始めたシアナは、本当に重症の患者に限り聖女の治癒力を解放して治癒力が尽きるまで奉仕した。
そしてようやくその能力が枯渇したことを水晶に手をあてて確認したシアナは、これで神殿に引き戻されることはないだろうと、育ての親二人と共に安堵のため息をついた。
ウォリスはシアナに求愛して以降、急に距離をつめることもなく、何度かデートに誘ってくれた。
「シアナ、次のお休みはいつですか?もしよろしければ、少し馬で駆けてみませんか?」
「楽しそうですね、お誘いありがとうございます。是非ご一緒させていただきたいです」
ウォリスへの思いがはっきりと恋心であると自覚したわけではなかったが、ウォリスの隣は居心地が良く、安心できる場所であるとシアナは認識していた。
そして、辺境伯領で行われた祭りに国の要人が集まったときのことだ。
「今日はせっかくの祭りにシアナを誘いたかったのに、残念ながら公務が入りました」
「警備に人手が必要ですものね、残念ですがまたの機会に」
そう言っていたウォリスが美しい令嬢たちの護衛の任務にあたっていたところを見て、シアナは嫉妬心や独占欲が自分の胸に渦巻いたことをはっきりと認識したのだ。
シアナはその次のデートで、ウォリスに確認した。
「ウォリスはまだ、私のことが好きですか……?」
不安そうに尋ねるシアナに、ウォリスは少し驚いたものの、大きく頷いて「勿論です」と答えた。
そして、二人は交際をスタートした。
ウォリスと付き合いだしてからシアナは、とても幸せで穏やかな日々を送っていたが、やがて徐々に不安を感じるようになっていた。
ウォリスは端正な顔をふっと緩め、優しい眼差しでシアナを見つめた。
思わず胸がドキリと鳴って、シアナは慌てて視線を窓の外に向ける。
しかし、四年間という歳月をずっと見守り続け、告白をしてくれたウォリスには本音で返事をしなければという気持ちは強く、横を向いたままであっても口は開いた。
「……私も、ウォリスが好きです。けれど、私の抱えている気持ちが異性としてなのかは、わかりません」
シアナが正直に話せば、ウォリスは嬉しそうに笑った。
「今はそれで充分です」
やがて長い道のりを経て辺境伯領に到着したシアナは、四年ぶりに育ての親に再会することができた。
「お父さん!パパ!」
同性パートナーである二人にシアナはそう呼びながら、抱き着いた。
「シアナ、お帰りなさい」
「大変だったな、よく戻ってきてくれた……!」
再会を喜ぶ二人とシアナは、抱き締め合いながらぽろぽろと涙を流す。
「お久しぶりです、ウォリス君。何年かかるかわからない任務を引き受けてくださり、ありがとうございました」
「いえ、自ら志願したことなので」
医療院に通っていた患者や兵士も二人に気付き、あっという間に人だかりが出来て、その日は辺境伯に呼ばれて宴が繰り広げられたのだった。
医療院で再び元気に働き始めたシアナは、本当に重症の患者に限り聖女の治癒力を解放して治癒力が尽きるまで奉仕した。
そしてようやくその能力が枯渇したことを水晶に手をあてて確認したシアナは、これで神殿に引き戻されることはないだろうと、育ての親二人と共に安堵のため息をついた。
ウォリスはシアナに求愛して以降、急に距離をつめることもなく、何度かデートに誘ってくれた。
「シアナ、次のお休みはいつですか?もしよろしければ、少し馬で駆けてみませんか?」
「楽しそうですね、お誘いありがとうございます。是非ご一緒させていただきたいです」
ウォリスへの思いがはっきりと恋心であると自覚したわけではなかったが、ウォリスの隣は居心地が良く、安心できる場所であるとシアナは認識していた。
そして、辺境伯領で行われた祭りに国の要人が集まったときのことだ。
「今日はせっかくの祭りにシアナを誘いたかったのに、残念ながら公務が入りました」
「警備に人手が必要ですものね、残念ですがまたの機会に」
そう言っていたウォリスが美しい令嬢たちの護衛の任務にあたっていたところを見て、シアナは嫉妬心や独占欲が自分の胸に渦巻いたことをはっきりと認識したのだ。
シアナはその次のデートで、ウォリスに確認した。
「ウォリスはまだ、私のことが好きですか……?」
不安そうに尋ねるシアナに、ウォリスは少し驚いたものの、大きく頷いて「勿論です」と答えた。
そして、二人は交際をスタートした。
ウォリスと付き合いだしてからシアナは、とても幸せで穏やかな日々を送っていたが、やがて徐々に不安を感じるようになっていた。
175
お気に入りに追加
398
あなたにおすすめの小説
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
【完結】レスだった私が異世界で美形な夫達と甘い日々を過ごす事になるなんて思わなかった
むい
恋愛
魔法のある世界に転移した割に特に冒険も事件もバトルもない引きこもり型エロライフ。
✳✳✳
夫に愛されず女としても見てもらえず子供もなく、寂しい結婚生活を送っていた璃子は、ある日酷い目眩を覚え意識を失う。
目覚めた場所は小さな泉の辺り。
転移して若返った?!と思いきやなんだか微妙に違うような…。まるで自分に似せた入れ物に自分の意識が入ってるみたい。
何故ここにいるかも分からないまま初対面の男性に会って5分で求婚されあれよあれよと結婚する事に?!
だいたいエロしかない異世界専業主婦ライフ。
本編完結済み。たまに番外編投稿します。
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
あの……殿下。私って、確か女避けのための婚約者でしたよね?
待鳥園子
恋愛
幼馴染みで従兄弟の王太子から、女避けのための婚約者になって欲しいと頼まれていた令嬢。いよいよ自分の婚期を逃してしまうと焦り、そろそろ婚約解消したいと申し込む。
女避け要員だったはずなのにつれない王太子をずっと一途に好きな伯爵令嬢と、色々と我慢しすぎて良くわからなくなっている王太子のもだもだした恋愛事情。
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる