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12 思いの変化

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「シアナが聖女でなくなる日を夢見ていたのは、私も同じなのです」
ウォリスは端正な顔をふっと緩め、優しい眼差しでシアナを見つめた。
思わず胸がドキリと鳴って、シアナは慌てて視線を窓の外に向ける。

しかし、四年間という歳月をずっと見守り続け、告白をしてくれたウォリスには本音で返事をしなければという気持ちは強く、横を向いたままであっても口は開いた。

「……私も、ウォリスが好きです。けれど、私の抱えている気持ちが異性としてなのかは、わかりません」
シアナが正直に話せば、ウォリスは嬉しそうに笑った。
「今はそれで充分です」


やがて長い道のりを経て辺境伯領に到着したシアナは、四年ぶりに育ての親に再会することができた。
「お父さん!パパ!」
同性パートナーである二人にシアナはそう呼びながら、抱き着いた。

「シアナ、お帰りなさい」
「大変だったな、よく戻ってきてくれた……!」
再会を喜ぶ二人とシアナは、抱き締め合いながらぽろぽろと涙を流す。

「お久しぶりです、ウォリス君。何年かかるかわからない任務を引き受けてくださり、ありがとうございました」
「いえ、自ら志願したことなので」
医療院に通っていた患者や兵士も二人に気付き、あっという間に人だかりが出来て、その日は辺境伯に呼ばれて宴が繰り広げられたのだった。


医療院で再び元気に働き始めたシアナは、本当に重症の患者に限り聖女の治癒力を解放して治癒力が尽きるまで奉仕した。

そしてようやくその能力が枯渇したことを水晶に手をあてて確認したシアナは、これで神殿に引き戻されることはないだろうと、育ての親二人と共に安堵のため息をついた。



ウォリスはシアナに求愛して以降、急に距離をつめることもなく、何度かデートに誘ってくれた。

「シアナ、次のお休みはいつですか?もしよろしければ、少し馬で駆けてみませんか?」
「楽しそうですね、お誘いありがとうございます。是非ご一緒させていただきたいです」

ウォリスへの思いがはっきりと恋心であると自覚したわけではなかったが、ウォリスの隣は居心地が良く、安心できる場所であるとシアナは認識していた。

そして、辺境伯領で行われた祭りに国の要人が集まったときのことだ。

「今日はせっかくの祭りにシアナを誘いたかったのに、残念ながら公務が入りました」
「警備に人手が必要ですものね、残念ですがまたの機会に」

そう言っていたウォリスが美しい令嬢たちの護衛の任務にあたっていたところを見て、シアナは嫉妬心や独占欲が自分の胸に渦巻いたことをはっきりと認識したのだ。

シアナはその次のデートで、ウォリスに確認した。
「ウォリスはまだ、私のことが好きですか……?」
不安そうに尋ねるシアナに、ウォリスは少し驚いたものの、大きく頷いて「勿論です」と答えた。

そして、二人は交際をスタートした。

ウォリスと付き合いだしてからシアナは、とても幸せで穏やかな日々を送っていたが、やがて徐々に不安を感じるようになっていた。
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