6 / 6
6
しおりを挟む
泣かないで欲しいのに、私の為に涙を流すアルリカは本当に美しい。
私は勿体なく思いながらも、親指で涙を拭いながら言った。
「私は別れないから、どうしても別れたければ、その呪詛を私に使って別れればいい」
「……え?」
「ほら、言ってご覧」
アルリカの前で自ら禁止していた意地悪な笑みを浮かべてしまい、彼女の戸惑いが伝わってくる。
けれども、悪い笑みをする自分も私の一部で。
彼女ならきっと、私のこうした面も含めて、愛してくれるのではないかと今なら思えた。
「……離縁致しましょう、ブラッド様」
「嫌だ」
即答する。
「……あの?」
「そんな理由なら、断固拒否する。私は……その、初めて会った時から……貴女を……アルリカを、愛しているんだ」
初めて、ベッドの上以外で口にして、猛烈に羞恥心が込み上げてくる。
けれども今、彼女に必要なのはこの言葉以外にないと思った。
自分に必要な言葉も、彼女から言われた「愛している」だったから。
「そ、そんな訳ございません!」
アルリカは、再び涙を流しながら可愛らしく首を振る。
「何故そう思う?」
「だって、話していたではありませんか……」
私の好みの女性は貴族令嬢ではなく女性騎士だと、アルリカは断言する。
いやいやいやいやちょっと待て。
どうしてそうなった?
「言ってない。言う訳がない」
私が好きになった女性は、アルリカただ一人だと言うのに。
「でも、確かに聞きました」
「……もしかして、断片的に聞いた言葉を変に解釈をしていないか?」
「……?」
「だって、そうだろう?アルリカは公爵家の娘で、誰もが心を奪われる美貌の持ち主なんだ。単なる叩き上げで爵位を貰った私とはそもそも雲泥の差で、高嶺の花を手に入れた私はただひたすら嫌われないようにするので精一杯だった」
私は、長年ひたすら隠しに隠していた本音を吐露する。
情けないが、これも私だ。
「……でも、私には笑顔を見せて下さいません」
アルリカは肩を落として私を見上げる。
いや、人の悪い笑みをアルリカに見せるのは大分憚られるんだが、そうか。
ポーカーフェイスを取り繕うのに必死で、彼女の前で笑わない、という事実を客観的に捉えられなかった自分のミスだな、と私は反省した。
「……笑っていい。君の前だと、未だに緊張するんだ。そして、大口を開けて笑えば下品だと感じるかと思った」
「ええっ?」
旦那様の笑顔が見たくて、こっそり何度も仕事場まで見に行ったのに、とアルリカは口を尖らせる。
今すぐ、その唇にキスしたい。
「私が君を愛していることなんて、誰でも知っていると思っていた。当然、君も」
私は苦笑いをしながら、先程下げた使用人達を呼んだ。
これ以上二人きりになるのは危ない。
私は膨れ上がる欲望を抑え込みながら言った。
「さぁ、食事を終わらせてしまおうか。……今日は、君と沢山話すことがありそうだ」
そう言いながら、アルリカとの離縁が流れたことに安堵し、ほんの少し泣きそうになった。
私の幸せな世界は、この愛する妻によって、構築されている。
私は勿体なく思いながらも、親指で涙を拭いながら言った。
「私は別れないから、どうしても別れたければ、その呪詛を私に使って別れればいい」
「……え?」
「ほら、言ってご覧」
アルリカの前で自ら禁止していた意地悪な笑みを浮かべてしまい、彼女の戸惑いが伝わってくる。
けれども、悪い笑みをする自分も私の一部で。
彼女ならきっと、私のこうした面も含めて、愛してくれるのではないかと今なら思えた。
「……離縁致しましょう、ブラッド様」
「嫌だ」
即答する。
「……あの?」
「そんな理由なら、断固拒否する。私は……その、初めて会った時から……貴女を……アルリカを、愛しているんだ」
初めて、ベッドの上以外で口にして、猛烈に羞恥心が込み上げてくる。
けれども今、彼女に必要なのはこの言葉以外にないと思った。
自分に必要な言葉も、彼女から言われた「愛している」だったから。
「そ、そんな訳ございません!」
アルリカは、再び涙を流しながら可愛らしく首を振る。
「何故そう思う?」
「だって、話していたではありませんか……」
私の好みの女性は貴族令嬢ではなく女性騎士だと、アルリカは断言する。
いやいやいやいやちょっと待て。
どうしてそうなった?
「言ってない。言う訳がない」
私が好きになった女性は、アルリカただ一人だと言うのに。
「でも、確かに聞きました」
「……もしかして、断片的に聞いた言葉を変に解釈をしていないか?」
「……?」
「だって、そうだろう?アルリカは公爵家の娘で、誰もが心を奪われる美貌の持ち主なんだ。単なる叩き上げで爵位を貰った私とはそもそも雲泥の差で、高嶺の花を手に入れた私はただひたすら嫌われないようにするので精一杯だった」
私は、長年ひたすら隠しに隠していた本音を吐露する。
情けないが、これも私だ。
「……でも、私には笑顔を見せて下さいません」
アルリカは肩を落として私を見上げる。
いや、人の悪い笑みをアルリカに見せるのは大分憚られるんだが、そうか。
ポーカーフェイスを取り繕うのに必死で、彼女の前で笑わない、という事実を客観的に捉えられなかった自分のミスだな、と私は反省した。
「……笑っていい。君の前だと、未だに緊張するんだ。そして、大口を開けて笑えば下品だと感じるかと思った」
「ええっ?」
旦那様の笑顔が見たくて、こっそり何度も仕事場まで見に行ったのに、とアルリカは口を尖らせる。
今すぐ、その唇にキスしたい。
「私が君を愛していることなんて、誰でも知っていると思っていた。当然、君も」
私は苦笑いをしながら、先程下げた使用人達を呼んだ。
これ以上二人きりになるのは危ない。
私は膨れ上がる欲望を抑え込みながら言った。
「さぁ、食事を終わらせてしまおうか。……今日は、君と沢山話すことがありそうだ」
そう言いながら、アルリカとの離縁が流れたことに安堵し、ほんの少し泣きそうになった。
私の幸せな世界は、この愛する妻によって、構築されている。
応援ありがとうございます!
43
お気に入りに追加
453
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
このシリーズ、といってよいのかしら。3部作品大好きです。みんな可愛い。推せる!お兄様だけスポット当たってなくてさびしいけど、この家族推せる!
ありがとうございました😊
お読み頂き、ご感想までありがとうございます!
はい、リクエストにお応えしているうちにシリーズになりました……(笑)
推し家族❗ありがとうございます、嬉しいです🎵
いつかお兄様のお話が浮かびましたら執筆致しますので、その際は是非覗いて下さいませ〜😄
他の物語を読まず、いきなりこのお話を一気に読みました。
こんなに好きで、大事で、妖精妻を抱けずに白い結婚になるとか?と思ってたら子供が生まれてて、良かったと思ってしまいました(下世話ですみません)。
んでもって二人でラブラブという、ニッコリしてしまいました。他の作品も追っかけて読みます。
お読み頂き、ご感想までありがとうございます!
初見がこちらのお話とのこと、意味がわからない部分もあったかと思いますが、お楽しみ頂けたなら幸いです!
確かに始めの流れからすると、白い結婚も有り得ますよね(笑)
初夜編なんかあったらそれはそれで面白かったかもしれません(下世話ですみません)
他の作品も、少しは楽しいお時間をお届け出来たなら嬉しく思います🎵
リクエストありがとうございました!
そしてボタン押し間違えてネタバレ含むとか……本当に申し訳ありません😂
少しでもご期待に添えられたなら幸いです♬
お読み頂き、ありがとうございました。