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泣かないで欲しいのに、私の為に涙を流すアルリカは本当に美しい。
私は勿体なく思いながらも、親指で涙を拭いながら言った。
「私は別れないから、どうしても別れたければ、その呪詛を私に使って別れればいい」
「……え?」
「ほら、言ってご覧」
アルリカの前で自ら禁止していた意地悪な笑みを浮かべてしまい、彼女の戸惑いが伝わってくる。
けれども、悪い笑みをする自分も私の一部で。
彼女ならきっと、私のこうした面も含めて、愛してくれるのではないかと今なら思えた。
「……離縁致しましょう、ブラッド様」
「嫌だ」
即答する。
「……あの?」
「そんな理由なら、断固拒否する。私は……その、初めて会った時から……貴女を……アルリカを、愛しているんだ」
初めて、ベッドの上以外で口にして、猛烈に羞恥心が込み上げてくる。
けれども今、彼女に必要なのはこの言葉以外にないと思った。
自分に必要な言葉も、彼女から言われた「愛している」だったから。
「そ、そんな訳ございません!」
アルリカは、再び涙を流しながら可愛らしく首を振る。
「何故そう思う?」
「だって、話していたではありませんか……」
私の好みの女性は貴族令嬢ではなく女性騎士だと、アルリカは断言する。
いやいやいやいやちょっと待て。
どうしてそうなった?
「言ってない。言う訳がない」
私が好きになった女性は、アルリカただ一人だと言うのに。
「でも、確かに聞きました」
「……もしかして、断片的に聞いた言葉を変に解釈をしていないか?」
「……?」
「だって、そうだろう?アルリカは公爵家の娘で、誰もが心を奪われる美貌の持ち主なんだ。単なる叩き上げで爵位を貰った私とはそもそも雲泥の差で、高嶺の花を手に入れた私はただひたすら嫌われないようにするので精一杯だった」
私は、長年ひたすら隠しに隠していた本音を吐露する。
情けないが、これも私だ。
「……でも、私には笑顔を見せて下さいません」
アルリカは肩を落として私を見上げる。
いや、人の悪い笑みをアルリカに見せるのは大分憚られるんだが、そうか。
ポーカーフェイスを取り繕うのに必死で、彼女の前で笑わない、という事実を客観的に捉えられなかった自分のミスだな、と私は反省した。
「……笑っていい。君の前だと、未だに緊張するんだ。そして、大口を開けて笑えば下品だと感じるかと思った」
「ええっ?」
旦那様の笑顔が見たくて、こっそり何度も仕事場まで見に行ったのに、とアルリカは口を尖らせる。
今すぐ、その唇にキスしたい。
「私が君を愛していることなんて、誰でも知っていると思っていた。当然、君も」
私は苦笑いをしながら、先程下げた使用人達を呼んだ。
これ以上二人きりになるのは危ない。
私は膨れ上がる欲望を抑え込みながら言った。
「さぁ、食事を終わらせてしまおうか。……今日は、君と沢山話すことがありそうだ」
そう言いながら、アルリカとの離縁が流れたことに安堵し、ほんの少し泣きそうになった。
私の幸せな世界は、この愛する妻によって、構築されている。
私は勿体なく思いながらも、親指で涙を拭いながら言った。
「私は別れないから、どうしても別れたければ、その呪詛を私に使って別れればいい」
「……え?」
「ほら、言ってご覧」
アルリカの前で自ら禁止していた意地悪な笑みを浮かべてしまい、彼女の戸惑いが伝わってくる。
けれども、悪い笑みをする自分も私の一部で。
彼女ならきっと、私のこうした面も含めて、愛してくれるのではないかと今なら思えた。
「……離縁致しましょう、ブラッド様」
「嫌だ」
即答する。
「……あの?」
「そんな理由なら、断固拒否する。私は……その、初めて会った時から……貴女を……アルリカを、愛しているんだ」
初めて、ベッドの上以外で口にして、猛烈に羞恥心が込み上げてくる。
けれども今、彼女に必要なのはこの言葉以外にないと思った。
自分に必要な言葉も、彼女から言われた「愛している」だったから。
「そ、そんな訳ございません!」
アルリカは、再び涙を流しながら可愛らしく首を振る。
「何故そう思う?」
「だって、話していたではありませんか……」
私の好みの女性は貴族令嬢ではなく女性騎士だと、アルリカは断言する。
いやいやいやいやちょっと待て。
どうしてそうなった?
「言ってない。言う訳がない」
私が好きになった女性は、アルリカただ一人だと言うのに。
「でも、確かに聞きました」
「……もしかして、断片的に聞いた言葉を変に解釈をしていないか?」
「……?」
「だって、そうだろう?アルリカは公爵家の娘で、誰もが心を奪われる美貌の持ち主なんだ。単なる叩き上げで爵位を貰った私とはそもそも雲泥の差で、高嶺の花を手に入れた私はただひたすら嫌われないようにするので精一杯だった」
私は、長年ひたすら隠しに隠していた本音を吐露する。
情けないが、これも私だ。
「……でも、私には笑顔を見せて下さいません」
アルリカは肩を落として私を見上げる。
いや、人の悪い笑みをアルリカに見せるのは大分憚られるんだが、そうか。
ポーカーフェイスを取り繕うのに必死で、彼女の前で笑わない、という事実を客観的に捉えられなかった自分のミスだな、と私は反省した。
「……笑っていい。君の前だと、未だに緊張するんだ。そして、大口を開けて笑えば下品だと感じるかと思った」
「ええっ?」
旦那様の笑顔が見たくて、こっそり何度も仕事場まで見に行ったのに、とアルリカは口を尖らせる。
今すぐ、その唇にキスしたい。
「私が君を愛していることなんて、誰でも知っていると思っていた。当然、君も」
私は苦笑いをしながら、先程下げた使用人達を呼んだ。
これ以上二人きりになるのは危ない。
私は膨れ上がる欲望を抑え込みながら言った。
「さぁ、食事を終わらせてしまおうか。……今日は、君と沢山話すことがありそうだ」
そう言いながら、アルリカとの離縁が流れたことに安堵し、ほんの少し泣きそうになった。
私の幸せな世界は、この愛する妻によって、構築されている。
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