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15 食事をする幸せ

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「駄目なんです、貴女じゃないと。四六時中考えるのはセヴリーヌ様のことだけですし、夜に自慰する時想う相手も貴女だけです。貴女だけが僕を導く女神であり、唯一の存在なのです」
「えええ……」

初めての経験に、私の頭は思考を停止する。
私はずっと、ロジェを育てたつもりでいたのだ。母親のつもりでいた。
なのに、息子だと思っていた相手から告白をされ、私はどうしていいのかわからない。
ロジェだけは決して、傷つけたくはないのに。

「ちょ、ちょっと待って……理解が、追いつかなくて……」
「いいです、セヴリーヌ様にそのつもりがなかったことはわかっていますから。少しずつわかって貰えればいいですが……、約束だけは、守って下さい」
「約束?」
「僕の全てをセヴリーヌ様に捧げる代わりに、セヴリーヌ様の全てを僕に下さい、という約束です」
「え、ええ、勿論」
私が慌てて返事をすると、ロジェはにっこり笑った。
愛し子の微笑みに、私はホッと安堵する。

「では早速、セヴリーヌ様を頂いてもいいですか?」
「ええ、ん?うん?」
ロジェはクローゼットをパタンと閉じると、私の方へ近寄って来た。
あら?私の着替えは……?
ロジェが私の方へ手を伸ばすのと同時に、ぐうう、と私の腹の虫が鳴る。

「……ひとまずセヴリーヌ様がお召し替えをされている間に、僕は食事を準備致しますね」
た、助かった!
普通だったら羞恥心が先に湧く状況であるのに、私はこの甘ったるい雰囲気を打破するために、ためらいもなくこくこくと首肯したのだった。

「ロドヴェーヌ王国時代と味付けは変わらないですが、もし苦手なものがあったら仰って下さいね。ピーナッツは抜いています」
三百年ぶりの食事である。私は運ばれてきた懐かしい香りのスープを見て、思い出した。
ロドヴェーヌでは国民食的なスープがあるのだが、隠し味でピーナッツバターを淹れるのが定番なのだ。私はピーナッツにアレルギーがある為、調理人達は私の分だけ別に作ってくれていた。
「ありがとう、頂くわ」
いつアレルギーの話をしたのだっけと思いつつ、私は一口ずつ舌で味わうことの喜びを噛みしめながら、夢中になってお腹を満たした。
満腹になった私は食後のお茶を窓辺で頂きながら、そのまま眠ってしまったらしい。
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