7 / 21
7 部屋から見える景色
しおりを挟む
とてもいい場所で最適だと思う。
玄関から入って来た全てのものを私がチェックできるし、侵入者が訪れた時にはロジェに注意を促せる。
私の声はロジェにしか聞こえないのだが、驚く程遠くの方まで意思疎通が出来るのだ。
この研究塔の中であれば十分カバー出来る。
実際、過去に夜這いを仕掛けようとした女や、研究成果を纏めたレポートを盗もうとしたロジェのライバルが部屋に入り込んだ時も、私がロジェに報告したことで事なきを得たこともあるのだ。
石像の私でも役に立つことはあるのだとやる気満々の私に、ロジェが優しく言った。
「まさか。あそこには花瓶でも置いておきます。セヴリーヌ様は、私の私室ですよ。何十にも保護魔法掛けておきますので、安心して過ごして下さいね」
『ええ……?』
「セヴリーヌ様は僕の宝物ですから」
にこにことしながら私を運ぶロジェは相変わらず、育ての母である私にべったりだ。
会話が減ったり部屋に戻って来る時間が遅くて心配掛けさせたりといった反抗期も若干あったが、それもすっかりなくなっていた。
私はロジェの私室に連れて行かれ、場所を確認しながら降ろされる。
『まあ、この高さだと外の景色がよく見えるわ。とても素敵ね』
街並みを一望できる窓の景色に私は感動する。
三百年前はこんなに高い建物を建てる技術はなく、精々三階建ての建物が精一杯だった。
しかし今となってはデリスタモア帝国の大通りは三階建てが当たり前であり、この塔に至っては十三階建てらしい。
「よく見えるようにもう少し前に出しますか?」
『ええと、あまり近いと少し怖いから、この辺でいいわ』
「はい」
邪魔であろう私を主室の真ん中に降ろすと、ロジェは少ない私物の荷解きにかかる。
『あら?ロジェ、私の台座は?』
たった十二年しか経ってないのにロジェの身長はすっかり私を追い越してしまっていたが、私の台座がロジェから見下ろされることを辛うじて食い止めていた。
「今回は設置しません。台座があるとセヴリーヌ様のお顔を近くで拝見出来ないので」
そう言われ、ずっと高かった視界が低くなったことに違和感を覚えながらもロジェに文句を言う。
『私を見下ろすなんて、まだ早くてよ』
「ふふ、そうですね」
笑って言いながらも、ロジェはマイペースに本を本棚に詰めていく。
つまり、台座を用意するつもりはないらしい。
『昔は小さくて何でも言うこと聞いてくれて、可愛かったのに』
「僕はもう、セヴリーヌ様と同い年ですから」
『……何を言っているの?私はこの国の誰よりも長寿ですわ』
私がそう胸を張ったつもりで言うと、ロジェは小さく笑う。
「セヴリーヌ様が石化したのは、十八の時でしょう?」
『まあ、そうだけれども』
「待っていて下さいね、後少しですから」
『うん?……んん???』
ロジェの顔が近付き、私の頬に口付けた。
玄関から入って来た全てのものを私がチェックできるし、侵入者が訪れた時にはロジェに注意を促せる。
私の声はロジェにしか聞こえないのだが、驚く程遠くの方まで意思疎通が出来るのだ。
この研究塔の中であれば十分カバー出来る。
実際、過去に夜這いを仕掛けようとした女や、研究成果を纏めたレポートを盗もうとしたロジェのライバルが部屋に入り込んだ時も、私がロジェに報告したことで事なきを得たこともあるのだ。
石像の私でも役に立つことはあるのだとやる気満々の私に、ロジェが優しく言った。
「まさか。あそこには花瓶でも置いておきます。セヴリーヌ様は、私の私室ですよ。何十にも保護魔法掛けておきますので、安心して過ごして下さいね」
『ええ……?』
「セヴリーヌ様は僕の宝物ですから」
にこにことしながら私を運ぶロジェは相変わらず、育ての母である私にべったりだ。
会話が減ったり部屋に戻って来る時間が遅くて心配掛けさせたりといった反抗期も若干あったが、それもすっかりなくなっていた。
私はロジェの私室に連れて行かれ、場所を確認しながら降ろされる。
『まあ、この高さだと外の景色がよく見えるわ。とても素敵ね』
街並みを一望できる窓の景色に私は感動する。
三百年前はこんなに高い建物を建てる技術はなく、精々三階建ての建物が精一杯だった。
しかし今となってはデリスタモア帝国の大通りは三階建てが当たり前であり、この塔に至っては十三階建てらしい。
「よく見えるようにもう少し前に出しますか?」
『ええと、あまり近いと少し怖いから、この辺でいいわ』
「はい」
邪魔であろう私を主室の真ん中に降ろすと、ロジェは少ない私物の荷解きにかかる。
『あら?ロジェ、私の台座は?』
たった十二年しか経ってないのにロジェの身長はすっかり私を追い越してしまっていたが、私の台座がロジェから見下ろされることを辛うじて食い止めていた。
「今回は設置しません。台座があるとセヴリーヌ様のお顔を近くで拝見出来ないので」
そう言われ、ずっと高かった視界が低くなったことに違和感を覚えながらもロジェに文句を言う。
『私を見下ろすなんて、まだ早くてよ』
「ふふ、そうですね」
笑って言いながらも、ロジェはマイペースに本を本棚に詰めていく。
つまり、台座を用意するつもりはないらしい。
『昔は小さくて何でも言うこと聞いてくれて、可愛かったのに』
「僕はもう、セヴリーヌ様と同い年ですから」
『……何を言っているの?私はこの国の誰よりも長寿ですわ』
私がそう胸を張ったつもりで言うと、ロジェは小さく笑う。
「セヴリーヌ様が石化したのは、十八の時でしょう?」
『まあ、そうだけれども』
「待っていて下さいね、後少しですから」
『うん?……んん???』
ロジェの顔が近付き、私の頬に口付けた。
36
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説
睡眠不足な魔導師様
イセヤ レキ
恋愛
魔導師の職場である、魔導の塔と呼ばれる施設で何でも屋(事務員?)をこなすフィーユは、ここ一週間程、淫らな夜を過ごしていた。
夢か現かわからない、身体を動かす事も出来ず、目を開ける事もかなわない。そんな出来事に、初日は恐れ戦いていたが、直ぐに思い当たる節に気付き、安堵する。
そんな、毎晩優しい愛撫で身体をまさぐられ、絶頂させられる女性のお話。
ほのぼの /女主人公 /魔法 /ハッピーエンド/ クンニ 両想い/ 睡眠姦/ 眠姦/絶倫
【R18】アリシアの秘密のお仕事
ウリ坊
恋愛
暴力夫からの離縁通告の後、修道院へ移動する夜の山道。
アリシアは雨よけのフードを被りながら荷物を持ち、どしゃ降りの夜道を歩いていた。
途中、偶然に通りかかった馬車に乗せてもらう。その馬車に乗っていた人物は高貴な貴族だった。その人物はこの国の大公であるジェイデンだった。
一晩大公家の邸宅で過ごす事になったアリシアは、不本意にもジェイデンの秘密を知ってしまい、そのまま夜を共にする。
そして、ジェイデンからある提案をされる。
それは、毎週決まった日の夜にジェイデンに抱かれる事だった。
※ 更新不定期となります。ストックもほぼない見切り発車状態ですので気長に待って頂けると嬉しいです。
※ 予告なく性描写が入りますのでご注意下さい。
ヒミツの能力~時間停止能力所持の兄と~
イセヤ レキ
恋愛
※この作品は、R18の作品です。また他にも読む方を選ぶキーワードのある作品となりますので、ご注意下さい※
西暦2×00年。
超能力を所持する人間がエリートと呼ばれ、特別扱いをされる時代で、時間停止能力所持者の兄を持つ亜矢音(妹)。
しかし兄は、その能力を使って、溺愛している亜矢音の身体を開発していくのであった。
何でもこいな方向けのお話です。←大事
※がっつり近親相姦(兄×妹、年の差五歳)です。
※ヒロインハート喘ぎや、ヒーローの台詞にも♡入ります。
※ヒーローはヘタレです。
※モラル等色々気になる繊細な方はUターン下さい。
※時間停止能力ものですが、女性向けの内容です。
ギャグ/ほのぼの/未来/超能力/ハッピーエンド/日常/近親相姦/兄妹/♡喘ぎ/淫語/開発
身売りのシスターと英雄の帰還
イセヤ レキ
恋愛
孤児院の運営の為に、月に一回、醜い領主に身体を売っているシスターのヴェラ。ただし、ヴェラはまだ処女で、毎回アナルを捧げていた。
ヴェラがその日も領主に貫かれていると、甲冑を身に纏った男が現れ……?
元孤児幼なじみ同士のお話です。
※キモデブによるモブレがっつり描写あります。
※エロはアナル中心です。
シリアス ダーク ハッピーエンド モブレあり 執着 異世界 シスター 英雄 キモデブ アナル 見せつけセックス
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
氷獄の中の狂愛─弟の執愛に囚われた姉─
イセヤ レキ
恋愛
※この作品は、R18作品です、ご注意下さい※
箸休め作品です。
がっつり救いのない近親相姦ものとなります。
(双子弟✕姉)
※メリバ、近親相姦、汚喘ぎ、♡喘ぎ、監禁、凌辱、眠姦、ヤンデレ(マジで病んでる)、といったキーワードが苦手な方はUターン下さい。
※何でもこい&エロはファンタジーを合言葉に読める方向けの作品となります。
※淫語バリバリの頭のおかしいヒーローに嫌悪感がある方も先に進まないで下さい。
注意事項を全てクリアした強者な読者様のみ、お進み下さい。
溺愛/執着/狂愛/凌辱/眠姦/調教/敬語責め
魔力を失して魔道士じゃなくなったのに、愛弟子が追いかけてくる
イセヤ レキ
恋愛
一級魔道士だったエルシャはある日魔力を失い、魔道士を辞めて実家の魔道具専門店を継いだ。
それから二ヶ月後、エルシャが育てた愛弟子のルクソスが押し掛けてきて――?
全八話、完結済。
ヤンデレ男に拐われ孕まセックスされるビッチ女の話
イセヤ レキ
恋愛
※こちらは18禁の作品です※
箸休め作品です。
表題の通り、基本的にストーリーなし、エロしかありません。
全編に渡り淫語だらけです、綺麗なエロをご希望の方はUターンして下さい。
地雷要素多めです、ご注意下さい。
快楽堕ちエンドの為、ハピエンで括ってます。
※性的虐待の匂わせ描写あります。
※清廉潔白な人物は皆無です。
汚喘ぎ/♡喘ぎ/監禁/凌辱/アナル/クンニ/放尿/飲尿/クリピアス/ビッチ/ローター/緊縛/手錠/快楽堕ち
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる