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2 久しぶりの交流

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──いいわね、妖精。私にも妖精が見えたら、ぐんと暇潰しの時間が増えるのに。

少なくとも、人間よりは綺麗なものを見せてくれそうだ。
少年を少し羨ましく思いながらそのまま眺めていると、その少年はパッと私の方に視線を寄越した。

──あら、珍しい。私の方を人間が見るなんて。
私に好んで寄って来るのは鳥くらいなもので、普通の人間はそこにいる私を感知しない。
「石像……?」
少年はなおも、じっと私の方を見てそう呟く。

あら?と私は思った。
『もしかして、この子……私の声が、聞こえてるのかしら?』
まさかね、と思いながら心の中で首を捻る。

石で出来た口は、開くことがない。
だから私の声は、人間に届かない。
「はい、聞こえています」
少年はおっかなびっくり、私の方へ近づいた。

『……え?』
「ええと、石像の……お姉さん?」
『えええええっっ!?』
私が石化してから、恐らくウン百年。
人生初、いや石像生初、私の声を聞く人間が現れた。


顔からは涙を消した少年は、嬉々として私に話し掛けていた。
私の想像通り、この廃墟の近くの町で生まれ育った少年はその珍しい色彩のため、昔から酷い苛めにあっていたらしい。
ただその様子は、苛めにあったというよりは愛情に飢えているように見えた。

『私が生きていた頃……いえ、動けていた頃は、貴方の纏う色はむしろ崇拝されたものだけど』
私がそう彼に教えてあげると、彼はひとしきり驚いた後、目をキラキラ輝かせて私に昔話をせがむ。
石像になった自分が、初めて鳥以外の役に立った気がした。

それと同時に、私は久しぶりの、それこそウン百年ぶりの会話に自分も興奮していることを自覚する。
ああ、人と会話することはこんなに楽しいものだったのかと思う。
昔はあんなに煩わしいものだったのに。

「では、お姉さんは元々人間だったのですか?」
『ええ、そうよ。これでも結構、有名な貴族だったのよ』
そう言ってから気付いた。今は大罪人として有名かもしれないと。
「お姉さんのお名前を聞いてもいいですか?」
『私? 私はセヴリーヌよ。貴方は?』
私の名前を伝えても少年は動じることなく、普通に返事をする。

「僕は、ロジェと言います。……その、お姉さんは何故こんなところに、その姿で……?」
『気になるの?』
「はい、とても」
話し出すと長くなるけれど、と前置きをして私は事の経緯を少年に語った。
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