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4 魔道具専門店

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よく晴れた日。

朝十時になり、私は店の看板を外に出した。


人口二万人程度の少しだけ栄えた都市にある魔道具取り扱い専門店。

汎用品を売るのではなく魔道具をオーダーメイド出来るところは珍しく、少しずつ人気が出ている。


この店は父から継いだが、オーダーメイドの魔道具は私の代からの取り扱いだ。

上手く軌道にのれたので、畳む寸前だった店もなんとかこのままやっていけそうである。



「エルシャさん、この間頼んだ品は出来てるかな?」
「おはようございます。出来ていますよ、少々お待ち下さい」

常連さんが訪ねてきて、私は仕上がっていた商品を棚からそっと取り出した。

「お試しになりますか?」
「うん、いいかな?」
「勿論です」

今回オーダー頂いた品は、お子さんへのプレゼントのオルゴールだ。

子供でも可能なごく微量の魔力を流して貰えば、一時間ほど綺麗な音色が流れるように魔法陣を描いている。


お客様が魔道具を手に取り、少し魔力を流したところで、美しい音楽が店内に響いた。

「ああ、とても良いね」
「音量は、横のネジを捻れば調節出来ますので」
「本当だ。音楽を止めたい時はどうするのかな」
「後ろのボタンを押して頂ければ止まります」
「成る程、止まった」

お客様はそのオルゴールの魔道具とほかの汎用品を購入して、店をあとにした。

その満足げな様子から、「またよろしくお願い致します」と心を込めて頭を下げ、お客様の姿が見えなくなるまで見送る。


店の周りを綺麗にしながら、先日購入した新しい魔法陣の書物を思い浮かべる。

私は手先が器用なのが売りだ。
手元を拡大する魔道具さえあれば米粒にも魔法陣を書き込むことが出来るので、より小型化した魔道具や同じ大きさなのに機能性をアップさせた魔道具を作り出すことが出来た。


「しかし、エルシャさんが店を継いでから、この辺でやたら魔道士を見るようになったなぁ」
「ふふ、皆さん手持ちの魔道具に、魔法陣の追加付与を求めていらっしゃってくださいます」


半分は本当で、もう半分は落ちぶれた元一級魔道士の見物に来るのだ。

私の魔力が本当に一般人並みに喪失したところを見て、満足げに帰っていく。

一級魔道士だった頃の私より魔力量の少ない貴族なのだろうが、そもそも魔道士は魔道具がなければ何も出来ないのだから、緻密な魔法陣を描ける職人は大事にしなければならない。


しかし、そのことを忘れて蔑んでいる輩が一定数いるのだと、この立場になって初めて知った。

成る程、私が馴染みの魔道具職人を丁重にもてなした時に、恐縮しながらも嬉しそうにしてくれたわけだと納得した。
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