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1 お宝探し

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よくある古代遺跡。

私はひとりでワクワクとお宝探し、否、謎に包まれた古代の魔道具探しに精を出していた。


「師匠、その先は発掘許可が出てないのでは?」

……ひとりで探しに来たのに、腰巾着のようにぴったりと寄り添い、私の行動を逐一監視する男は私の愛弟子、ルクソスだ。


「確かに出ていませんね。流石次の筆頭候補です、しっかりしていて私も鼻が高いですよ」
「思ってもないことを言わないでください。俺の魔力なんて、師匠に比べれば……」
「いくら魔力が多くても、魔道具への回路が十分でなければ意味がないと教えたはずですが」


いつも私と自分を比較し肩を落とす愛弟子に、間違いなく能力は高いのだから、気にするなと伝えようとしたのだが。


「その回路だって、師匠の緻密さや正確さを完璧に模倣できません」
愛弟子の向上心はとどまるところを知らない。


「貴方は私より五歳も若いのですから、当然です。それより、これから貴方は偉くなるのだから、『俺』はやめなさい」
「別に、俺は偉くなりたいわけではなくて、師匠の傍にいたいだけなんですけど」


可愛いことを言い出す愛弟子の頭をよしよしと撫でた。
随分と前から、その頭は私よりずっと上のほうにあるが、撫でられるとわかっている愛弟子はひょいと頭を下げて、私が撫でやすいように合わせてくれる。


「なぜ師匠は筆頭魔道士にならないのですか?」
「現場に行くことが難儀になりますからね」


執務室の椅子に座って面白くもない書類とにらめっこしたり会議室で小難しい話を何時間も延々と話すくらいなら、魔道士をやめて実家の魔道具店を継いだほうがマシだと何年も言い続けているかいがあり、老齢の筆頭魔道士が後継者選びをする際には、私を飛び越えて愛弟子がその候補に挙がった。


ルクソスは承認欲求を拗らせているため、てっきりその報告を喜ぶものだと思っていたのだが。

しかし実際のところ、「なぜ師匠ではなく能力の劣る俺なんですか」だの、「俺はまだまだ師匠について学びたいので、後継者候補から外して貰います」だの言って、喜ぶどころか不機嫌になってしまったのだ。


首を傾げる私に、「師匠より強い」と「師匠より偉い」は別なのだと言い、自分は師匠より強くなりたいんです、と言い張った。


「師匠が筆頭魔道士になるなら、俺は喜んで補佐するのに」
「ルクソスは、貧しい人達の希望の光なのです。ですから師匠としては是非、頂点にまでのぼりつめて欲しいものですね」
「師匠がそう言うから、結局候補になったままなんですよ……」


恨みがましそうな目でこちらを見るルクソス。
私はそんな彼に片手をあげ、「待て」の意味のジェスチャーをした。
気になる物を見つけたからだ。


「……これも、魔道具ですね」
「これがですか?」

長いチェーンのついた、古びた懐中時計のようなものを瓦礫の下から救い出す。

ふぅ、と息を吹きかけて埃を払えば、時計の裏側には確かに魔法陣が刻まれていた。

「……見たことのない魔法陣です」
「師匠が知らないなんて、新しい発見ですね」
「ひとまず持って帰りましょう」
私はネックレスのように懐中時計を首に引っ掛ける。

だからお宝発掘はやめられない。
この魔法陣がどんな効果をもたらすのか、早く試したくて堪らない。

しかし、一応魔道士協会に所属する身としては、魔法陣の解読が先である。
古代遺跡の中には危険な魔道具も多いため、解読前の魔道具の使用は固く禁じられていた。
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