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たったひとつのアドバイス。
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人と話すのがうまいわけじゃない。
僕って、こう見えて人見知りでさ。小さいころなんか、初めて会う人の前で緊張なんかしちゃっててさ。
そんなだから、人前で講釈なんかできるわけがない。級友の前で作文発表するのだって、赤面で出す声が裏返って、手が震えて、読むだけでいいはずなのにそれすらできなかったんよ。
猫に前足で耳裏掻けっていわれてるみたいでさ、どうして僕なんかにそんなことさせるのってずっと思っていた。
それがなぜこうなったかって訊いてほしいよね。
砕けそうな腰の弱いところを見つけてそさっと切り込む会話って自分では意識しているんだ。初めからできたわけではないから、特色がよくわかる。自分でも不思議なくらいに、できるようになった。できるっていうと、ちょっと違うかな。人と話すのに慣れた、っていう感じさ。
もともとが緊張しいなものだから、他人の緊張には敏感だった。どこの気が張っているのか、人一倍緊張してきたからわりとわかるんだよね。いろんな人のさまざまな緊張が、どのくらいの層で成り立っているかってことに。
だから、伸びて張り切った緊張のどこをどうすればほぐれるのか、経験則でわかっちゃう。
これまでやってきた仕事が影響しているんだろう、きっと。だって、人から話を聞かなければ話にならない職業だったわけだから。
だるま落としの一番下を強くたたけばいいのか、真ん中あたりをこちょっとくすぐればいいのか、その判断は早いし的確だと自分でも思っている。
合っているかどうかは、相手の反応を見りゃ一目瞭然。
ときにはずすこともあるけれど、それはまあ、ご愛敬ということで。
といった具合の説明でわかってもらえるだろうか。
とくに講釈をぶちまけるほどの話じゃないし、聞いたっておもしろくもなんともないだろう?
もしアナタが人ともっと近しく話したいと思っているのなら、そう思わせるだけの原因があったはずなんだ。まずはそれが何かを考えてみるのがいいんじゃないかな。
それはアナタにしてみれば、アナタの欠点だ。欠点だと負い目を感じることから始める。覚悟をもってね。
すぎに誰かに救いの手を求めちゃいけない。
自分で探り当てるんだ。
そうすれば、補う方法を真剣に考えるようになる。
そこで導き出された方法が、アナタに必要な道筋なんだ。
人の真似なんかできるわけがない。自分で切り拓かなきゃ。
それば僕がアナタにできるアドバイス。
わかった?
僕って、こう見えて人見知りでさ。小さいころなんか、初めて会う人の前で緊張なんかしちゃっててさ。
そんなだから、人前で講釈なんかできるわけがない。級友の前で作文発表するのだって、赤面で出す声が裏返って、手が震えて、読むだけでいいはずなのにそれすらできなかったんよ。
猫に前足で耳裏掻けっていわれてるみたいでさ、どうして僕なんかにそんなことさせるのってずっと思っていた。
それがなぜこうなったかって訊いてほしいよね。
砕けそうな腰の弱いところを見つけてそさっと切り込む会話って自分では意識しているんだ。初めからできたわけではないから、特色がよくわかる。自分でも不思議なくらいに、できるようになった。できるっていうと、ちょっと違うかな。人と話すのに慣れた、っていう感じさ。
もともとが緊張しいなものだから、他人の緊張には敏感だった。どこの気が張っているのか、人一倍緊張してきたからわりとわかるんだよね。いろんな人のさまざまな緊張が、どのくらいの層で成り立っているかってことに。
だから、伸びて張り切った緊張のどこをどうすればほぐれるのか、経験則でわかっちゃう。
これまでやってきた仕事が影響しているんだろう、きっと。だって、人から話を聞かなければ話にならない職業だったわけだから。
だるま落としの一番下を強くたたけばいいのか、真ん中あたりをこちょっとくすぐればいいのか、その判断は早いし的確だと自分でも思っている。
合っているかどうかは、相手の反応を見りゃ一目瞭然。
ときにはずすこともあるけれど、それはまあ、ご愛敬ということで。
といった具合の説明でわかってもらえるだろうか。
とくに講釈をぶちまけるほどの話じゃないし、聞いたっておもしろくもなんともないだろう?
もしアナタが人ともっと近しく話したいと思っているのなら、そう思わせるだけの原因があったはずなんだ。まずはそれが何かを考えてみるのがいいんじゃないかな。
それはアナタにしてみれば、アナタの欠点だ。欠点だと負い目を感じることから始める。覚悟をもってね。
すぎに誰かに救いの手を求めちゃいけない。
自分で探り当てるんだ。
そうすれば、補う方法を真剣に考えるようになる。
そこで導き出された方法が、アナタに必要な道筋なんだ。
人の真似なんかできるわけがない。自分で切り拓かなきゃ。
それば僕がアナタにできるアドバイス。
わかった?
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