書庫『宛先のない手紙』

中村音音(なかむらねおん)

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出し惜しみしてはいけない。

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出し惜しみしてちゃいけなかったんだ。
出し惜しんでいるうちに月日は流れる、年をとる。

結局、なにもしなかったじゃないかと自問して人生おしまい。

それでいいの?

世に名を売る人々は、全力であたっていたんだよ。
一度や二度のチャレンジで当たって砕け散っても、それでくじけているようじゃ、貪欲にぶつかってくる相手と真っ向から勝負することなどできないんだ。

こうした相談に乗るとき、氷山を例に話すことにしているんだよ。

氷山はその一角しか海上に姿を見せない。ちっぽけな失敗に思えることも、それを支えるだけの大きくて重要な失敗が水面下で大きなかたまりをつくっている。
そうやって海上に少しだけ顔をだす。
出し惜しんでいたのでは、大事な土台が少しも育たない。

頭角をあらわしたいと考えているならば、その頭角を、まだ原石であってもさらしださなきゃ。
磨かれないし、誰も見てもくれない。

あなたにその才があるのかないのか、今の時点ではわからない。
私は一般論を言っているだけだ。

甘えちゃいけない。
才能は人に認めてもらうものではあるが、なにもしない者には見向きもしないんだよ。
つまり、認めてもらうためには手札を広げてみせなければならないということだ。

出し惜しんでいるものがあるのなら、それを晒し出さなければ。

よく「今の自分は仮の姿」なんていきがっている少年少女を目にする。
あれは遠吠えにしか聞こえん。
いずれ負けることに、先に吠えている。そんなふうにしか見えないんだ。

そう、言い訳が先にあっちゃいけないということ。
言い訳は、逃れること。逃げてちゃ、勝利はつかめない。

才能を見抜く人は、人の弱さやずるさも同時に見抜くものなんだ。
才能より小手先なら、まあ、よく見られることはあるまい。
最初に見くびられたら、おしまいさ。
才能の器の中身はからっぽ、って烙印を押されることだからね。

でも、才能なんて、どこからひょこっと顔を出すか、わかったものではない。
好きで漫談ボランティアやってた人が、ある日プロになっちゃったってこともあった。
バンド組んでたミュージシャンが、好きで創作書いてたら文学賞取っちゃったってこともあった。

これが最大のヒントだね。
好きなことを突き詰めていく。
そうすれば才能という芽が出てくることがある。

出ないこともあるけれど、ダメならほかに探せばいいだけ。

とにかくだ。始めてみないことには始まらない。
わかった?
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