夢結び

石蕗

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04 桃源郷 

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04

「……あれ?」  
         
 鳥居をくぐった先には人がいた。それも沢山。
雰囲気から察するに夏祭りだろう。喧噪の中から祭り囃子が聞こえる。
おかしい。何がおかしいかと言われれば、今目の前に映っている全てがおかしい。
 なぜなら境内に入る前、
つまり鳥居をくぐる前まで祭りはおろか人っ子一人いなかったのだから。
ただ薄暗い参道がどこまでも続いていただけだ。

 振り向くと綺麗な鳥居が建っている。
まさか片面だけ塗り忘れた…なんてことはないだろう。
それに何だか視点も低い。体を見ると小さくなっている。
 こんなことがありえるのだろうか……そうだ、これは夢だった。
あまりにも鮮明な夢過ぎていつの間にか現実と混同していたらしい。
夢の世界に現実の理屈を持ち込むなどナンセンスだな。

 体が小さくなっていると言ったが、恐らく五歳から六歳頃だろうか。
着ている甚平にも見覚えがある気がする。

「まあ、いっか」

 どうせ夢だ。夢の中だけでも現実の憂いを忘れて楽しもう。
祭りは何十年ぶりだろうか。もう随分行ってない気がする。

 僕は屋台を巡ることにした。
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