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しおりを挟む何気に仲良しなやり取りを残して、騎士団一行は組合を後にした。
やけに簡単に引き上げたな……なんでだろう? 何かしらの情報を手に入れようとしていたのなら、手がかりゼロであんな簡単に引き下がるはずはないし、私を捕らえようとしていたのなら……やっぱりあんなに簡単に引き下がるはずはない。
彼女は本当に、組合が何かしらの情報を持っているんじゃないかと思ってきたのかな? 先輩が皮肉ったとおり、確かに騎士団は必要な情報をくれなかったけど……ラウドミアに関しては、油断はできないけど悪い人だとは思えないんだけどな。
「マイラ! トゥルゲ来たみたい!」
ロッテに教えられて正面玄関を見ると、倉庫番の担当者がこちらにやって来るのが見えた。わざわざ中まで足を運ばせてしまった! 慌てて引き渡し手続きのサインを済ませて彼を見送ると、正面玄関から立ち去る彼にロッテが続く。
「――ロッテ!」
「大丈夫だって」
私があまりにも心配しすぎるからか、ロッテは苦笑しながら私に手を振って、正面玄関から出て行った。現場でラウドミアたちと再会したりしないかな? また揉めたりしないといいんだけど……。揉めたり感情的になったりしたら、やっぱりまた『爆発』起こしたりしちゃうのかな?
「騎士団の連中がやけに早く引き上げだと思ったら、『暁』がいたのか……」
男性の先輩の呟きを耳が拾った。彼は私と同様、非常時のカウンター対応を任されている事務員だ。ここに来たばかりの頃は、男性職員に対してなぜか身構えてしまったけど、今はもう慣れた。男性と話したことがないとかじゃないんだけどな……?
「先輩、ラウドミアのこと知ってるんですか?」
「そりゃ、ラウドミア・ベルッティと言えば、『曙光』と並んで有名人だからね。その経歴とか」
「経歴……?」
「あれ、知らなかった? 『暁』は――」
「マイラ! ロッテまだいる?!」
「え?」切羽詰まった様子で、通信機を代わってもらっていた先輩が飛び込んできた! まさか、状況悪化してる……?
「あちゃー行っちゃったか」
「まずかったですか?」受諾登録をしたのは私だ。どうしよう……。
「ううん、そうじゃなくてね、他の組合と連絡取って分かったんだけど……アンデッドが発生している場所の周辺で通信関係に不具合が起きてるんじゃ? って話になってるっぽいのよ。現場を調べたわけじゃないから断言はできないけどね」
「えっ?! あの、ロッテは危ないってことですか?」
「うーん……あの子は大丈夫だと思うわよ? 偵察員を派遣するのは『情報をいち早く手に入れたいから』だから……あのまま行っても意味ないだろうなーって思って。アンデッドに通信阻害能力なんてものはないから偶然だとは思うんだけどね。強力版の通信機持たせるんだった……まあ、それも使えないかもしれないけど……あの子が戻ってくるまで状況が分からないままね」
本当に……大丈夫かな?!
***
夕方になっても、ロッテは戻ってこなかった。連絡も入らない。このまま一人で借宿に戻る気にもなれないし、彼女から連絡が来るかもしれないから残業することにした。先輩達は、私のことを心配しているみたいだったけど――
「本当はあなたを返すべきなんだろうけど……ごめん、実はちょっと助かってる」
と、言ってもらえたのでそれに甘えることにする。本当は私に気を使って言ってくれているだけかもしれないけど、役に立てているのなら嬉しい。
今、組合は『非常事態招集』というものを発令して、自宅待機していた冒険者たちを強制的に組合に招集している。必要があればいつでも出動できるように。
なぜ、こんなに慎重になっているのかと言うと、連絡を絶っているのが他の誰でもないA級冒険者だから。組合のリスク管理は上級冒険者がフォローすることで成り立っている。いきなりその上級冒険者が助けを必要としている状況下では、下手をすると敵対勢力につけいる隙を与えることになる。
……私がここにいるこのタイミングでこの騒ぎ……本当に、この件に妹は関係していない? かつて私の目の前でアンデッドを消し去った……私の『妹』。
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