私を虐げてきた妹が聖女に選ばれたので・・・冒険者になって叩きのめそうと思います!

れもん・檸檬・レモン?

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「おはようございます」
「おう、今日も早いな」
「昨日の冒険者の皆さん……?」

 翌朝、いつものように出勤して皆さんに挨拶をしていたら、昨日、私が受諾登録をした冒険者たちがいた。私の出勤時間は午前八時。私がここにきたひと月の間、冒険者の皆さんが午前中の朝早い時間から組合に顔を出すことはあまりなかった。午前中に訪ねてくるのは依頼人の方が多い。冒険者の皆様はわざと夜型にしているのかも? と最近は思うようになった。

「これからお仕事ですか?」
「ああ。昼飯は食えないかもしれんから、今、ここでしっかり喰っとこうかと思ってな」
「それって普通の事なんですか?!」
 問いかけておいてなんだけど、これが普通なら、もっと沢山の冒険者の皆さんが朝食を取りに来るものでは? だから、これはちょっとした特殊事例なのでは?
「うーん、相変わらず妙に鋭くて困るねぇ」
 昨日の酔いどれお姉さんだ! 彼女は酔っ払っていなくても、どこか色っぽくてかっこよく、底知れない何かを感じる。なんだろう?

「しばらくコイツにかかりきりになるだろうから、他にやばい仕事がないか……念のため確認しに来たってわけだ」
 さすがA級冒険者は違う。このひと月の間に、バルドラギ周辺にいるA級冒険者は彼以外には一人しかいないことが分かった。名前は個人情報で必要がないと調べることはできないけど、S級とA級冒険者の所在地は特定の探知機で常に把握できるようになってる。正確には記章のある場所が分かるだけなんだけど。

 それにしても、A級冒険者である彼の責任感は凄い。そういうところも含めて、彼はA級冒険者として認められているのかもしれない。出かける前にわざわざ私に声をかけてくれたのは、私のことを気にかけてくれているからだろう。私が保護されたばかりだからかな。

 こういう些細な気遣いを、私はたくさんの人からされているんだ。
 早く一人前になりたい。気遣われて守られているばかりじゃなくて、私も誰かを気遣い、守ることができるようになりたい。
 まずは、事務仕事から、頑張るぞ……!!!



 冒険者の皆さんを見送った後、先輩(昨日とは別人)から新しい仕事を教わることになった。仕事で使う荷車の手配だ! カウンターの奥には通信機があり、今日教わる業務はこの通信機を使っての配車業務。実はこれも、必要に応じては受諾業務の一環になるらしい。

「『クドゥゲ』……ですか?」
「そう。トゥルゲの重量版と思ってくれていいわ。牛の魔獣に車を引かせるのよ」
「爆――ロッテが鉱石運搬の仕事を引き受けたのは聞いてるわよね?」
「はい!」……ロッテの『爆弾魔』って共通認識なのかな?
「その仕事に必要な荷車の手配よ」
 なるほど! トゥルゲを使うわけじゃないんだ。私が知っている荷車は馬車とトゥルゲだけ。牛型の魔獣に引かせた荷車というのも見たことがない。荷台は普通の馬車と同じなのかな?

 通信機を使うのも初めてで緊張する! 先輩に使い方を教えてもらいながら荷車を手配して、到着を待つことになった。通話相手は、冒険者組合所有の車庫の事務員。
 頼の連絡は通信機からも入ってくる。精度に差はあるけど、貴族の屋敷には備え付けの通信機があるものらしい。私は見たことがなかったけど、ファイネンの屋敷にもあったのかもしれない。

「どう? 通信機でのやり取りは慣れた?」
「それはですね、えっと……」
 本音を言うと慣れてない。
 受話口から聞こえてくる声は小さく曇っていたり大きくひび割れたり反響したりと聞き取りにくいし、自分の声が相手にどのように聞こえているのかも分からないから声の調整具合も分からない。先輩の目から見ると問題ないそうだけど、本当に大丈夫なのかな?

「通信機には早めに慣れておいた方がいいわ。特に、冒険者を目指しているのなら」
「……私が冒険者を目指しているのって、その……変ですか?」
「ん~今のやりとりでどうしてそういう反応になるのか分からないけど……貴女はもう自由なのだから、好きな未来を自由に選ぶべきよ」
 そっか……おかしくないんだ、よし!
「仕事を受諾した冒険者たちは、定期的に組合に安否確認の連絡を入れることになっているから、使い方を憶えるに越したことはないわね」
 そうか。冒険者は命に関わるような綺麗な仕事も多いから、常に安否確認をして、必要があれば助けを派遣できるようにしておく必要があるのかな?

「受諾登録時にパーティーの等級を確認して、命に関わるような仕事をさせないようにはしてるんだけど……冒険者に不測の事態はつきものだしね。連絡よこさない連中の元には、いつでも救援部隊を派遣できるように準備だけはしておかないとね。A級冒険者の彼が今朝立ち寄ったのは、そういった意味合いもあるのよ」

 そうだったんだ。A級冒険者である彼の肩には、多大なる責任がのしかかっている。それを苦とも思わないから、彼はA級冒険者として認められているんだろうな、きっと。




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