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しおりを挟む料理が出来上がり、食堂に運ぶと二人で椅子に座って晩餐会の始まりだ。
「ロッテ、なんだか上機嫌だね。何かあったの?」
あの後、私は裏方に回っていたから、カウンターでロッテが何かしていたとしても分からない。
「仕事が決まったの!」
「えっ?!」
「……なんでそんなに驚いてんの?」
「う、ううん……」
そうよ、私ってば。ロッテに失礼!
ひと月近く、毎日毎日、先輩たちと同じ内容で揉めてて進展なかったけどロッテは確かに冒険者で本人は魔術師を自称してるけど非戦闘員職が割り振られてて自己認識と周囲の認知に絶大なる誤差があるみたいだけど条件に合致していないとかではないらしいし彼女が魔力を制御できていないことと関係があるのかなとは思ったけどプライバシーを侵害してはいけないから詳しくは聞けなかったし当人に直接聞く勇気もなかったから私は知らなかっただけでロッテは優秀な冒険者なんだきっと!
「一体どんな仕事なの?」
「アンデッドの封印に必要な鉱石を運ぶ仕事!」
アンデッドの話は昼に聞いたばかりだ。封印に鉱石が必要という話は聞かなかったな。封印って光属性の魔法が使える人間なら誰でもできるんだったよね? 具体的な方法は聞いてなかったけど……媒介に使うのかな?
「運ぶって、どこからどこまで?」
「鉱山から現場まで!」
「……鉱山?! 現場?!」
どっちも非戦闘員であるロッテが向かうには、危険な場所なんじゃない?!
「またなんか勘違いしてるね~。えっと、鉱石を掘るのは鉱山の男たちの仕事で、あたしは掘り出した鉱石を運ぶのが仕事! 今回の依頼は一応『採取任務』に分類されるんだ」
「採取任務は知ってる!」
『採取任務』というのは、高度な戦闘スキルや専門的な特殊技能を必要としない、誰にでもできる初心者もしくは非戦闘員向けの仕事。他の仕事に比べると報酬は低い……だったはず。
ロッテが引き受けたのは「アンデッドの封印に必要な鉱石の運搬」か。そういった内容の依頼票を貼り出した記憶はないから、受付の先輩たちに斡旋してもらったのかな? ということはA級冒険者のあの人たちや騎士団の方たちに関係する仕事かな。アンデッドの封印にはいろんな仕事が関わってくるんだ。
「まあ、採取任務は普通は非戦闘員がやるもんだから、本来戦闘職のあたしには関係ない仕事ではあるんだけどねぇ~」
ロッテは冒険者組合の登録上では非戦闘員に分類されてるけど、まあ、これは黙っておこう、うん。
「届け先には騎士団の人達もいるだろうから、フィリップさんの現状とか分かるんじゃないかと思って。セルジは隠したままで吐かないし!」
ロッテがことを考えてたなんて。期待しちゃっていいのかな? ロッテは私に気を遣って、本当は興味なんかない仕事を引き受けたの?
「ね、ロッ――」
「この仕事、報酬がいいんだ。この報酬でそろそろかっこよくて本格的な剣を買うの!」
とてもキラキラした顔をしているなあ。そんな夢見る可愛い少女のような顔で、剣なんて物騒なものを望むんだもんな。そういえば彼女の今の武器、あれは何て言うんだろう?
「ロッテが今使っている武器って何なの?」
「ああ、あれはね、十手って言うんだって!」
「『ジッテ』……?」
「そう! なんか遠い昔の旅の人が使ってた魔法の杖! この辺じゃあ売ってない代物なんだから! 魔法剣士を目指すあたしに相応しい業物!!!」
「そうなんだ……」
でも新しい剣を買うんだよね? 魔法剣士って杖と剣と両方使うものなのかな? よく分からないけど、ロッテが楽しそうだからいいか。でもそうか、新しいお仕事見つかったんだ……。
「日帰りでできる仕事だから、マイラもいつも通りで大丈夫だからね!」
不安そうな顔してたかな?! 想像してた年齢よりかは上だったけど、私より年下であることに変わりはない。彼女と比べると狭い世界で育ってきた自覚はある。もっと、しっかりしなくては!
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