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カンニングペーパーによると、『紹介状』の発行は『受諾四号』の魔導具で行うらしい……あった! 机の上になかった!
かなり大きな魔導具で、壁際に置かれてる。でも親切ではあるみたい。イラスト入りで記された説明書が貼り付けられてる。
まず、取っ手をつかんで蓋を持ち上げて、中にある透明なガラス面に依頼票を下向きにおいて、蓋を閉める。横にあるボタンを押すと……小さなトレイが出てくるから……パーティメンバーの記章をセットして……トレイを押し込む。最後に正面にある大きく光るマークに手のひらを押し付けると……動作音がして、ちょっと待つと左側から別の紙が……出てきた!
上質な紙に印刷されている。内容は……『紹介状』だ!
仕事に携わるA級冒険者の略歴まで印刷されている。
今までの仕事内容って記章に登録されるものなんだ。経歴の最後に、今登録したばかりの仕事が『仕掛中』として印刷されていた。本当に登録されたんだ……なんだか不思議……よし! 次!
「先輩、依頼状できました!」
「どれどれ~? ……うん、大丈夫だね」
先輩に依頼状チェックしてもらって問題ないことを確認した。
最後に、依頼票を『受諾四号』の魔導具によく似た『複写機』の魔導具で白黒に複製して、『本人控え』の判子を押して終わり。
「受諾業務はこれで完了よ。後は、紹介状と一緒に預かっていた記章を本人たちに返して、依頼票の本人控えを渡して終わり!」
「はい!」
先輩に内容を確認してもらって、A級冒険者の彼の元に戻った。預かっていた記章四つを返して、紹介状と本人控えの依頼票を渡す。
「お待たせしました! 時間かかっちゃってすみません」
「いやいや、十分早かったぞ? それにどうせ、この依頼は明日じゃないといけないんだ」
依頼票に記載されていた業務開始希望日は、最短で明日になっていた。依頼人との待ち合わせ場所は、バルドラギの街じゃない。隣街にある修道会の出張所。
「隣街にも冒険者組合あるんですよね? どうして修道会のない、バルドラギの組合に仕事を依頼したんでしょう?」
「あら、騎士団が仕事を依頼しているのは、うちの支部だけじゃないわよ」
「そうなんですか? ……ブッキングしたりしたらどうするんですか?」
「普通はこういうことしないんだけど、A級冒険者なんて何十人といるわけじゃないから多少ブッキングしたとしても問題はないし、今回は……一チームだけでは心許ない案件でもあるしね」
それじゃあ、この人たちだけで行くのは危ないんじゃ?
「心配してくれるな」
A級冒険者の彼は苦笑しながら、大丈夫だと言外に伝えてくる。
「今回の依頼に関しちゃあ、オレらはそんなに危険ってわけでもねぇしな」
「そう……なんですか? 『アンデッドの討伐』は……危なくないということですか?」
幼い頃に見た、マリアの光に当てられて消滅していった異形の化け物たち。あれは私が子供だったから、あんなに恐怖を覚えたのかな? じゃあマリアは? マリアは最初から、あの化け物たちを倒せるって分かってた? どうして? 聖女……だから?
「今回は聖女様同行しねぇから、討伐は無理だな」
随分と軽い口調だ。まるでいつもの世間話のような口調……口にしたのは、スキンヘッドの彼の背後にいた茶髪の青年みたいだけど……。
「聖女様が同行しないと討伐が無理ってどういうことでしょう?」
アンデッドって、誰にでも倒せるものじゃないの?
あ、あれ? 私の質問を聞いて、目の前の茶髪の青年をはじめ、A級冒険者の彼とその仲間に先輩まで驚いた顔をしてる! そんなに変なこと言った? これ常識?! ファイネンの屋敷の人たちはみんな知ってた?
「えぇっと……お屋敷に聖教師様(教会信者の指導を行う人)はいらっしゃらなかったのかしら?」
小さい頃は来てたのを覚えてる。でも、私もマリアも幼かったから聖教師様のお話を完全には理解できていなかった。アンデッドの話も、もしかしたらしていたかもしれない。成長してからは、私はお客様とは顔を合わせることができなかったし、聖教師様も屋敷には来ていたかもしれないけど私は知らない。もうずっと長い間、聖教師様の説教は聞いていない。
「それは……」
何て答えたらいいのか迷う。この優しい人たちに無用な心配をさせたくない。それに、あんまり喋ってると、仕事サボってることにならないかな? 屋敷では喋ってくれる人がいなかったから比較はできないけど、疲れて腰を伸ばそうとしただけでものすごく叱責を受けた。
「うーん、そうね……ちょっと研修が必要かな?」
「研修ですか?」
「うん。じゃあ、さっき作った書類ファイリングしたら、あっち行って話そうか!」
先輩は私の返事を聞いた後、何かを考え込んだような顔をして切り替えしてきた。先輩が示したのは、飲食スペースにあるテーブルの1つだった。
かなり大きな魔導具で、壁際に置かれてる。でも親切ではあるみたい。イラスト入りで記された説明書が貼り付けられてる。
まず、取っ手をつかんで蓋を持ち上げて、中にある透明なガラス面に依頼票を下向きにおいて、蓋を閉める。横にあるボタンを押すと……小さなトレイが出てくるから……パーティメンバーの記章をセットして……トレイを押し込む。最後に正面にある大きく光るマークに手のひらを押し付けると……動作音がして、ちょっと待つと左側から別の紙が……出てきた!
上質な紙に印刷されている。内容は……『紹介状』だ!
仕事に携わるA級冒険者の略歴まで印刷されている。
今までの仕事内容って記章に登録されるものなんだ。経歴の最後に、今登録したばかりの仕事が『仕掛中』として印刷されていた。本当に登録されたんだ……なんだか不思議……よし! 次!
「先輩、依頼状できました!」
「どれどれ~? ……うん、大丈夫だね」
先輩に依頼状チェックしてもらって問題ないことを確認した。
最後に、依頼票を『受諾四号』の魔導具によく似た『複写機』の魔導具で白黒に複製して、『本人控え』の判子を押して終わり。
「受諾業務はこれで完了よ。後は、紹介状と一緒に預かっていた記章を本人たちに返して、依頼票の本人控えを渡して終わり!」
「はい!」
先輩に内容を確認してもらって、A級冒険者の彼の元に戻った。預かっていた記章四つを返して、紹介状と本人控えの依頼票を渡す。
「お待たせしました! 時間かかっちゃってすみません」
「いやいや、十分早かったぞ? それにどうせ、この依頼は明日じゃないといけないんだ」
依頼票に記載されていた業務開始希望日は、最短で明日になっていた。依頼人との待ち合わせ場所は、バルドラギの街じゃない。隣街にある修道会の出張所。
「隣街にも冒険者組合あるんですよね? どうして修道会のない、バルドラギの組合に仕事を依頼したんでしょう?」
「あら、騎士団が仕事を依頼しているのは、うちの支部だけじゃないわよ」
「そうなんですか? ……ブッキングしたりしたらどうするんですか?」
「普通はこういうことしないんだけど、A級冒険者なんて何十人といるわけじゃないから多少ブッキングしたとしても問題はないし、今回は……一チームだけでは心許ない案件でもあるしね」
それじゃあ、この人たちだけで行くのは危ないんじゃ?
「心配してくれるな」
A級冒険者の彼は苦笑しながら、大丈夫だと言外に伝えてくる。
「今回の依頼に関しちゃあ、オレらはそんなに危険ってわけでもねぇしな」
「そう……なんですか? 『アンデッドの討伐』は……危なくないということですか?」
幼い頃に見た、マリアの光に当てられて消滅していった異形の化け物たち。あれは私が子供だったから、あんなに恐怖を覚えたのかな? じゃあマリアは? マリアは最初から、あの化け物たちを倒せるって分かってた? どうして? 聖女……だから?
「今回は聖女様同行しねぇから、討伐は無理だな」
随分と軽い口調だ。まるでいつもの世間話のような口調……口にしたのは、スキンヘッドの彼の背後にいた茶髪の青年みたいだけど……。
「聖女様が同行しないと討伐が無理ってどういうことでしょう?」
アンデッドって、誰にでも倒せるものじゃないの?
あ、あれ? 私の質問を聞いて、目の前の茶髪の青年をはじめ、A級冒険者の彼とその仲間に先輩まで驚いた顔をしてる! そんなに変なこと言った? これ常識?! ファイネンの屋敷の人たちはみんな知ってた?
「えぇっと……お屋敷に聖教師様(教会信者の指導を行う人)はいらっしゃらなかったのかしら?」
小さい頃は来てたのを覚えてる。でも、私もマリアも幼かったから聖教師様のお話を完全には理解できていなかった。アンデッドの話も、もしかしたらしていたかもしれない。成長してからは、私はお客様とは顔を合わせることができなかったし、聖教師様も屋敷には来ていたかもしれないけど私は知らない。もうずっと長い間、聖教師様の説教は聞いていない。
「それは……」
何て答えたらいいのか迷う。この優しい人たちに無用な心配をさせたくない。それに、あんまり喋ってると、仕事サボってることにならないかな? 屋敷では喋ってくれる人がいなかったから比較はできないけど、疲れて腰を伸ばそうとしただけでものすごく叱責を受けた。
「うーん、そうね……ちょっと研修が必要かな?」
「研修ですか?」
「うん。じゃあ、さっき作った書類ファイリングしたら、あっち行って話そうか!」
先輩は私の返事を聞いた後、何かを考え込んだような顔をして切り替えしてきた。先輩が示したのは、飲食スペースにあるテーブルの1つだった。
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