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「そうだわマイラ! 『受諾業務』やってみる?」
「はいっ!」
 彼らを見ていた私の視線に気付いたのか、彼らの相手をしていた受付係員の先輩が声をかけてくれた。

「おっ、頑張ってるな」
「頑張ってます!」

 さっきのスキンヘッドの冒険者も、連れの冒険者もにこやかに笑っている。子供の頃、職種を越えて私たちを可愛がってくれた若いメイドたちのように、この人たちは優しい。私が情けないのも一因にあるんだろな。しっかりしないと!

「では受諾します!」
「おう、頼むぜ」
 ニカッと笑うたびにきらめく白い歯はとても健康的。
 受託業務の流れは、まず依頼内容の確認から。
「こちら……えっと『教会依頼:アンデッド封印作業の協力要請、封印及び騎士団の護衛』で相違ありませんか?」
「相違ないな」
「業務内容について……条件や報酬について質問はありますか?」
「いや、大丈夫だ。こっちの姉ちゃんから聞いたからな」
「はい、では……資格項目の確認をさせていただきます」

 カウンターの下には、業務進行のためのカンニングペーパーがあるので、それを確認……、『受諾登録には専用の機材を用いる』なるほど。
 専用の機材は、カウンターの後ろに並んでいる机の上に並べられてる。機材には、魔導具の機械番号が書かれた小さな粘着紙が貼られていて、どの魔導具がカンニングペーパーに記載されている専用機材なのかが、一目で分かった。

「では、始めます! えぇと、A級の冒険者登録は確認……しておりますので、こちらの業務に入られる冒険者様全員を登録するので、記章を一旦預からせていただきます!」
「よろしくな!」

 私の言葉に、後ろに控えていた三人が記章を外してA級冒険者の彼に手渡し、私はそれを彼の手から受け取る。合計四人分の記章。記章には彼の名前や個人の識別番号、年齢、住所などが幾何学模様に図案化されて彫り込まれてる。

 さて、記章は預かった! 次は、預かった記章をカンニングペーパーに従い専用の機材に装着だ。魔導具の機械番号『受諾一号』……あった、これだ!

 カウンターから一番近い机上に魔導具を見つけた。
 幅約二十センチ、奥行きと高さが約三十センチ。台座、透明な中板、一番上には透明な球体の三層構造になっている『受諾一号』。台座の上に裏返しに『依頼票』を乗せて……中板の上に起票を並べて……球体に手を触れる……と、球体から光が溢れるんだけど、中板で自動的に焦点が調整されて……『依頼票』の裏側に、起票に彫り込まれているものと同じ幾何学模様が焼き付けられていく。
 四つ全てが焼き付けられたら作業完了。いつまでも水晶に触れていると紙が燃え始めるので、頃合いを見て手を放す。
 二、三年前までは記章の凹凸を利用して、墨紙を使って写し取ったりしてたらしい。
 ……よしっ、印刷完了! 依頼票と記章を回収! 

 カウンターに戻って先輩に出来上がりを確認してもらおう。
「先輩、これは大丈夫ですか?」
「うん、問題なし!」
 やった! これで受諾登録は完了!
 ……完了なんだけど、確かこの依頼票には『要・紹介状』の記載があったような? 依頼票を改めて確認……やっぱりあった!

「紹介状発行するので、ちょっと待ってください」
「分かった。ゆっくりでいいからな?」
「はい! 頑張ります!」
「マイラ、紹介状の発行機はあっちよ」
「はい! ありがとうございます!」




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