私を虐げてきた妹が聖女に選ばれたので・・・冒険者になって叩きのめそうと思います!

れもん・檸檬・レモン?

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「出るときは自由なんだ。ここはもうアーヘル領なの?」
「ああ。今はまだ周りの光景にも変化はないが、森を抜けたら景色も変わるよ」
「そうなんだ」

 森の中の風景がそんなにいきなり変わるものなのかな? フィリップの言っていることは今一つピンと来ない。森ってあとどのくらいで抜けるんだろう?


「煉瓦が敷いてある!」

 フィリップの言っていた通りだった。見慣れた森の風景は数分で終わり、その先には見たことのない光景が広がっていた。まず、地面が広く整備されている。まだ森の中だというのに、地面には淡い色彩の煉瓦が綺麗に広く敷き詰められている。まるで、荷車類が走りやすいように整備されているみたいだ。

「アーヘル領主は当代から他領との貿易に力を注ぐようになったからね~」
「そうなの?」
「うん! 今じゃ、駆け出し冒険者のお得意様なのだ!」

 どういうことだろう???

「長い距離トゥルゲを操るには訓練が必要になるんだ。それなりの時間とお金を必要とするけど、必ず習得できるわけでもない。だから、一介の商人で訓練を受けようと考える者はあまりいないんだ。適材適所と割り切るのは悪いことではないしね」
 道の両脇に生えている木々も、関所を抜ける前に見たものとは明らかに違う。植林したものかな? 低い場所には綺麗な花も咲いてる。それに植えてある木は、ファイネン領側の木と違って、明るい色をしているような気がする? 植物の色が変わるなんてことあるのかな? 苔がついているわけじゃない。葉っぱ自体が青い光を放っているような?

「葉っぱが光っているような気がするんだけど……気のせいかな?」
「あれは『聖葉樹』だね。魔術の属性である『聖』を作り出す特性のある樹木だよ。結界の代わりに、主要施設の周りに植えられることが多いんだ。必ずしも必要というわけではないのだけれどね」

 何でフォローするようなことを言うのかな? と思ったけど、ファイネン領側の関所には植えられていなかったことを思い出した。気を使われているのかな。もう、あの家のことは関係ない。関係ないんだ。

「『結界』に『魔術の属性』!」

 私、魔術関係は正しい知識を持ってない。私が持っているのは、小説『七つの水晶』で仕入れた真偽不明の知識だけ。しかも読んだのは幼少の頃。

「魔術に興味! つまり冒険者に興味ありということだよね!」
「隙あるごとに、彼女におかしな勧誘をするんじゃない!」

 さっきまでロッテのことをなんとなく聞き流していたフィリップが、堪えきれなかったようでとうとうツッコミを入れ始めた。やっぱりこの二人、なんだかんだで仲良さそうで羨ましいんだ。フィリップは騎士団ではこんな感じなのかな? ラウドミアの前でも。

 あの人、悪い人には見えなかった。今更、もう和解する機会はないかもしれないけど。もし、また会う機会があったら、話をしたい。あの人は、私のことを分かろうとしてくれていたから。



 更に道を進んで森を抜けて、ようやく、フィリップが言っていた『景色が変わる』の意味が分かった。自生しているものではないかもしれないけど、また生えている木が違う。小さくて丸い。

「ねえフィリップ! まるでカットされているような、あの木はなに?」
「ああ、あれは精霊たちが好んで食べる植物だから自然と丸くなってしまうんだよ」

 『精霊』! ……ん? ということは精霊は草食動物???

 なぜだろう。精霊と聞くと、己の無知を責められているような気がして恥ずかしさが込み上げる。あの子供の振りをした『使役精霊』の件を引きずってるのかな。そうだ、あの人は他に――
「フィリップも精霊使いなの?」
 確か、彼女はそんなようなことを言っていた。

「え? あ、ああ、そうなんだ。ただ、私が精霊使いになった経緯は他の人とは違ってね。自分でもなぜ精霊が使役できるようになったのか分からないんだ。そんな状況なのに『精霊使い』を名乗っても良いものかどうか」

 自分でも説明しづらいことを、意識のない私に説明しようとして困ってる!

「あのっ大丈夫だから! 多分、今の私に言われても理解できなさそうだから、また今度お願いします」

 自分で言いながら情けなくなってきた。それに、今度があるなんて自分でも思ってないのに――

「そうだね。教会で必要な情報を確認したらすぐに戻ってくるよ。その時には、話をしようか?」
「お願いします!」

「なら、あたしからも豆知識を披露するよ! 今現在、確認されている魔術の属性は、『地水火風』に『魔』と『聖』、それと『天』と『奈落』!」
「『ナラク』ってなに?」
 これ以外の言葉は聞き覚えがある。詳しくは分からないけど、見当はつく。でも、この言葉だけは全然見当がつかない。

「――想像上の属性だよ。実際には存在しないから、教わる必要はないんじゃないかな」
「フィリップさん邪魔!!!」
「基礎を放って、彼女に勝手なことを教えないでもらえるかな?」

 フィリップ……私の教育に熱心なんだな。

「存在しないんだ……じゃあ、『天』も?」
「いや、それは存在は確認されてるけど、それがどのような作用を齎しているのかは、判明していないんだ。『天』と思われている属性の中に、『奈落』もあるかもしれないけど」
「……難しいんだね」

 あとどのくらい勉強したら理解できるようになるかな?

「あたしは浪漫を諦めない! 『奈落』が解明されたら、あたしが第一任者になるんだ! そして、後世まで語り継がれる伝説の冒険者に……あたしはなる!」
「そうなんだ」
 何がロッテをここまで駆り立てるのか分からないけど、面白そうだな。機会があれば、その際は私もご一緒させてもらえないかな。



 そんな、なんということはない話をしている間にひとつの街が見えてきた。昨日立ち寄った城塞都市と違い、都市を取り囲む大きな壁はない。むき出しの街並みが見える。外敵などは、どうやって対処しているんだろう?

「この街に壁がないのは土地柄の問題なの?」
「この町には壁の代わりに、結界が張られているんだ」
「『結界』!」――実在するんだ! 「魔力がなくても見えるかな?!」
「結界に障害物が当たったりなんかしたら、見えるけどね~今は無理だね!」
「残念」
「私としては、ずっと見えずにいてくれた方が安心できるんだけどな。安全の証でもあるからね」

 また心配をかけるようなことを言ってしまった。

 トゥルゲは確実にあの街へ向かってる。街について、冒険者組合に私を引き渡したら、フィリップとはもう、お別れか。なんて、本当にあるのかな。




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