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しおりを挟む「あぁ! えっと――」
私の私の表情から、セルジが状況を読み取ってくれたようで、細かく説明をしてくれた。
「『暁の女神』ってのはラウドミア・ベルッティの二つ名なんですよ。あの赤い髪と目が由来みたいですね。強さはピカイチ。何しろあの年であの性別で団長を務めるくらいですからね」
自己紹介をしてもらった時は聞き流してしまったけど、女性の身で騎士団の団長を務めるなんてすごい。どれほどの実力の持ち主なんだろう?
「性格も、清廉潔白と言うか、自分にも他人にも厳しいと言うか……白黒つけないと納得できないと言うか固いと言うか真面目と言うかめんどくさいと言うか空気読めないと言うか」
際限なく続きそうだな。宥めて話を進めてもらおう。
「すみません。えっと……まあ、彼女はそういう性格なんで、交渉が決裂するとすぐ決闘したがるんすよ。一昔前までは、それが『騎士の正しいあり方』だったんすけど……今はもう、そういう時代じゃありませんからね」
セルジの声からは、ラウドミアへの憐憫が感じられる。騎士のプライド、かな。私は彼女のことも騎士のことも、よくは知らないけど悪い人ではないんじゃないかと思う。私の家のことも、ちゃんと考えようとしてくれていた。
「あの見た目とあの性格だから、いやでも目立っちゃうのは分かるんだけどね」
さっきまで彼女とやりやっていたロッテからも、同じような複雑な感情が読み取れた。不器用な彼女を心配して、でも、彼女のやり方は認められなくて歯がゆい。そんな感じかな。
「まあ、要するにそういうやつだったんですよ、ラウドミア・ベルッティってのは。で、最初は引き継ぎの仕事の話をしてたっぽいんすけど……だんだん話がずれてって。最終的に、決闘するのしないのって話になったんすよ」
セルジが疲れて見えるのは、体力的なものだけが原因ではなさそう。
「無駄に頭が回るんすよね、あいつ……お嬢様の屋敷に行ったってのは聞きました?」
「ええ」
「そっすか……えぇと、まぁそんな流れで、お嬢様をあの屋敷から逃がすなら、アーヘル領の冒険者組合に向かうだろうって予測して、ここで待ってたらしいんすよ。まぁ、あの家が異常だってのは共通の見解みたいで安心しましたけど」
「そう、だったんだ。…………あれ? 決闘の相手は『曙光』という人だと聞いたんだけど?」
「それがフィリップ様っすよ」
「えっ?! じゃ、じゃあ今、フィリップ様は?! まさか怪我を!」
ラウドミアとフィリップは決闘をしていた。その後私の目の前に現れたのは、彼女の方だ。じゃあ、彼女と決闘をしていたフィリップは?!
「……ここにいる。すまない、遅くなった」
フィリップだ!
ロッテやセルジ同様、息一つ切れてない。あれ? へばっているのは私だけ??
「心配をかけたかな?」
「え? あ、えっと、その………………大丈夫です」
フィリップが宥めるような物言いに、自分が何か変な顔をしているのか不安になる。髪に触れる優しい手に、顔が熱を持ってしまうのは自覚してるけど。
「フィリップさん、あたしっ! あたしめっちゃ活躍したから!!!」
「空気読めよ……」
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