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 ――。
 ――――。


「ここまで来れば、もう安全ね!!!」
「ほ……本、当に……安全……な……の?」
 い、息が切れる。足も、力が入らない。
 薄暗い森の中で、自信満々に胸を張るロッテ。私はかなり息が上がって苦しいのに、彼女は平然としている。体の鍛え方も違うのかな? 毎日どれだけ走り込んでいるんだろう? やっぱり、すごい。彼女みたいに、なれるものなら。

「ロッテは魔法が使えるの?」
「使える! あたしが目指すのは、麗しの魔法剣士!」
 こんな状況だというのに、私たちは大きな切り株に腰かけて世間話に花を咲かせていた。呼吸は元に戻ったんだけど、体力が限界で足に力が入らない。私のせいで足止めを食らっている状態。冒険者組合に保護されたら、走り込みから始めてみようかな?

 それにしても、『魔法剣士』か懐かしいな。『七つの水晶』に出てきた登場人物の1人。魔術と剣技を巧みに操って敵をバッサバッサとなぎ倒す、悲劇の美少年。友達や家族と感想を言い合うようなことはできなかったけど、そのキャラが人気だったことは知ってる。みんなが楽しそうに、そう話していたのを覚えている。

「今の貴女は魔法使いなの? 剣士なの?」
 ロッテの戦闘は見たことないな。剣のように構えていたあれはなんだろう?


「よくぞ聞いてくれました! あたしは――」
「――荷物持ち!!! そいつはただの荷物持ちだ!」

 セルジだ! 走ってきたのか、彼も息が切れてる。
 迷惑をかけてしまった私を怒ってるのかと思ったんだけど、彼の視線の先にはロッテがいて、もしやと思っている間に二人で口喧嘩を始めてしまった。

「お前っ、お嬢様を振り回すな! 今が非常事態だって分かンだろ!」
「あたしは、お嬢様助けたんだから! あんたたちは乙女心ってやつを全然分かってない!」
 なんでここで乙女心?
「あぁ?」
「あんな混乱の中置いて行かれたら、誰だって心配になるじゃん!」

 私?! なんでそんなこと――ああっ! セルジがまともに受け取って、申し訳なさげな顔をしている!

「ち、違います! 私はそんな理由で――」
「お嬢様は黙ってて! あたし分かってるから!」

 分かってない!!! あの場を出たわけじゃない! 二人が私の身の安全を考えてくれての行動だって、ちゃんと分かってるから!

「お前、そんな調子で荷台から連れ出したんだろ。お前の馬鹿力にお嬢様が逆らえるわけないからな」
「うぐっ! そ、それは! で、でも! あの暁ドロボーがお嬢様を狙っていたから! 男に振られて女に走った噂あるから!」
「お前ほんともう黙ってろ!!!」

 セルジの様子が変わった。なんだろう? でも暁で思い出したけど。

「騒いでいると、ラウドミアに見つかりませんか?」
「今はフィリップ様が足止めしてるから大丈夫です」
「なんでフィリップが」
「最初に起こってた決闘騒動あったじゃないッスか?」
「そう言えば」

「あれ決闘魔――ラウドミア・ベルッティがフィリップ様に絡んだ末の問題だったンスよ」ん? 申し訳なさなそうな顔になった?「フィリップ様と合流した時、オレ口滑らせて、トゥルゲでお嬢様が待ってることバレちゃって」

「セルジのせいじゃん!」
「ぐぅっ!」
「あの、私は全然大丈夫だから、その……本当に彼女は決闘を申し込んでいたの? 彼女はフィリップに引き継ぎ事項があるとか言っていたんだけど」
「あ~それでもめたんだ。うんうん、あたしには分かる! あの『暁ドロボー』で『フラレ虫』の考えなど手に取るように!」

 わはは、と高笑いを始めたよロッテ。
 ロッテが何を考えてるのか私には全然分からないよ? セルジも……あれ? 彼も私と同じようだと思ったのに、なんだか理解しているみたい? 文脈から誰のことを指しているのかはわかるけど?


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