私を虐げてきた妹が聖女に選ばれたので・・・冒険者になって叩きのめそうと思います!

れもん・檸檬・レモン?

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 着替えを済ませて下の食堂に戻ると、フィリップに誘導されて店内にいくつかあるテーブルの内の一つに着いた。昨夜世話になった馭者の少年もいる。それにしても、ずいぶんと客層が偏っている気がする。傭兵のような、旅行者のような人たちばかり。

「何か食べられそうかな?」

 フィリップに問いかけられて空腹を自覚する。少しだったけれど。確かに、昨日の昼から何も食べていない。でも、それはいつものことなんだけど。
「あの、私、持ち合わせがなくて――」
「余計な気遣いはいらない」

 そうは言われても気になってしまう。これ以上、迷惑はかけられない。あの場から連れ出してくれただけで、十分なのに。

「君が今の状況に不安を覚えているのは分かってる。ただ、君をあの家には置いてはいけないと思ったし、君の了承もなく連れ出してしまったこと、悪かったとは思う」
「そんなこと!」

 私も望んだことだ! 私が心配しているのは、彼に迷惑をかけてしまうことなのに。

「あのような人物を聖女と認定した教会に、全幅の信頼を置くことも、今はできないと考えてる」
「あの、それはどういう?」

 フィリップは渋い顔してそこから先の言葉を止める。人目のある場所では話せない内容? 声は小さくしたつもりだけど、大きかったかな?

「すまない、君を不安にさせるつもりはなかった。彼女の素行については、教会上層部に報告するが面倒なことになるかもしれない。彼女の周囲にいた人間の様子がおかしくなっていたことも、気になってね」

 報告のタイミングをはかりかねている――とフィリップは続けた。

「あー、それでフィリップ様はオレに不用意に彼女に近づくなって言ってたンスね」
「そうなの?」
「いや、お前の場合は面倒なトラブルを起こしそうだったから」

 フィリップと少年の漫才が始まってしまった。ここで気づいたけど私、彼の名前を知らない。

「あの、初めまして、私マイラ・ファイネンと申します、その、お名前をお伺いしても?」
「おお! すげぇ、お嬢様みてェ!」
 漫才を始める前に名前を教えて欲しい。

「あっ! オレはフィリップ様の馭者兼商人やってる、セルジ・アイスプルアです。以後よろしく」
「え、ええ、よろしく」
 年相応な快活な笑顔を浮かべる少年――セルジ・アイスプルア。フィリップの馭者ということは、エンゲルス家の使用人?
「彼は家の使用人ではないんだ」

 間髪入れずに訂正してきたのはフィリップだけれど、どういうこと?

「フィリップ様とは騎士団の任務中に知り合ったン
「任務? 貴方も騎士なの???」
「いやいや、オレ、田舎で行商もどきやってて、危ないところを騎士団の皆様に助けていただきまして! って、そろそろなんか食べ物頼みません? オレお腹空いちゃった」

 元々のセルジの性質がそうなのか、とても楽しそうに思い出を語る。言われてみたら、私もお腹がすいてきたような気がする。フィリップを振り返っただけで、セルジと2人で料理を注文し始めてしまった。空腹が顔に出ていたと思うとかなり恥ずかしい。



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