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退院しても病院は無関係ではないことを分かっていない。
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忙しい仕事の合間を縫ってボクはいろんなところに電話をかけた。
短期入所はなかなか空いていない。
てゆうか……今日から入りたいと言っても簡単に入れるものではない。
ただ……そうは言うものの……
これはあくまでボクの肌感覚なのだが……
最近では以前よりは短期入所の予約をとるのが楽になってきたような気がする。
特別養護老人ホームに関しても同じで、入所までには何年もかかると言われていた数十年前に比べると案外簡単に入所できてしまう場合が少なくないように思える。
恐らく……以前に比べて施設が多くなってきたからではないだろうか。
そうは言うものの、当日に入りたいと言って短期入所を使うと言うのはやはりハードルが高い。
ボクは数えきれないほど電話をして……ようやく3日間、短期入所を予約することができた。
そして3日後は違う施設でまた3日間、入所する。
その間に包括ケア病棟に入れればいいのだが……。
包括ケア病棟の話も同時に勧めていく。
『空きは出るかもしれませんので対応は可能ですよ』
包括ケア病棟の担当の相談員はどこも親切だった。
否……
基本的にはどこの病院の相談員も親切だ。
ただ、稀に訳の分からないことを言ってくる相談員がおり、在宅のケアマネジャーを苦しめるのだ。
『ありがとうございます』
『まずは診療情報提供書を送っていただけますでしょうか?』
『承知致しました。現在、入院している病院からそちらに送付するようにお伝えしておきますね』
これで良し。
そう思ったところに電話が鳴った。
『はい。ケアマネジャーの阪上です』
『お世話になっております。利用者さんの件でお電話致しました退院支援の看護師の古江です』
本日退院になる利用者が入院していた病院の退院支援の看護師だ。
今更、何の用があって電話をしていたのだろうと思いながらボクは受話器を握りしめた。
『あ、お世話になっております』
『何か誤解があったようでお電話致しました』
『誤解……ですか??』
『わたし、何かあったらそちらにお電話ということを承っていたのですが、間違いないですよね?』
『何かあったら? その何かには退院は含まれていないんでしょうか?』
何もなくても退院予定は教えてほしい。
というのも、この利用者の場合は在宅生活が困難になりつつある利用者だからだ。
『入院は1週間の予定ですから』
『予定は分かってますが、自宅に帰るのは難しいのではないかとご家族も心配されているとお伝えしませんでしたか?』
『はい。ですが動作そのものはそんなに低下していませんので』
確かに入院前の連携では日常生活動作が入院によって下がる可能性があり、自宅での生活が困難になる可能性があるので、何かあったら連絡をと言ったには言った。
しかし自宅に帰れない理由は動作の問題だけではなく、本人を取り巻く環境にもあり、認知症の奥様と二人暮らしで服薬もろくに管理できない環境なのだ。
そんな状況で自宅に帰すわけには行かないだろう。
『いや……日常生活動作の問題だけではなく、環境面の話も入院時にさせていただいたんですけど』
『今回の入院は期間が決まっているのでご理解いただきたいのですが』
『別に文句はありませんよ。承知致しました。とりあえず短期入所は抑えてありますから大丈夫ですよ』
ああ。
この人。
ボクが書いた連携シート、何一つ見てないのだな。
そう思ったのだけど、退院という事実は変えられないし、そもそも何かをこの古江さんにやってもらおうとは思っていない。
ただ診療情報提供書だけはお願いしないことにはどうしようもない。
『短期入所の後の話なのですが……』
『はい。何かあるんですか?』
あるに決まってるだろ!!
という心の声が漏れないように冷静にボクは話す。
『どうしても現状の動作では自宅は難しいのでリハビリ目的で包括ケア病棟に入院したいんですね』
『すみません。こちらでは紹介はしていないんです』
『知ってます。こちらで手配していますからそこはご安心ください』
『ああ、そうなんですか』
そうなんですか……ではない。
本来はあんたの仕事だ。
『それで診療情報提供書を送付してほしいのですが……』
診療情報提供書と言う言葉を聞いて明らかにトーンが下がった様子が受話器越しに分かった。
まさか、それさえやらないつもりじゃないだろうな。
それはさすがに許さないからな。
『分かりました。ただ主治医は外科の医師なので多忙で書類の作成に時間がかかるかもしれません』
『承知致しました。そちらのご都合も分かるのですがなるべく早くお願いしますね』
ボクはどっと疲れて電話の受話器をおいた。
この時点で、時間はお昼の12時。
食事でもして午後からがんばろうと思った。
この時のボクは午後からさらに疲れる出来事があるとは思ってもいなかった……
短期入所はなかなか空いていない。
てゆうか……今日から入りたいと言っても簡単に入れるものではない。
ただ……そうは言うものの……
これはあくまでボクの肌感覚なのだが……
最近では以前よりは短期入所の予約をとるのが楽になってきたような気がする。
特別養護老人ホームに関しても同じで、入所までには何年もかかると言われていた数十年前に比べると案外簡単に入所できてしまう場合が少なくないように思える。
恐らく……以前に比べて施設が多くなってきたからではないだろうか。
そうは言うものの、当日に入りたいと言って短期入所を使うと言うのはやはりハードルが高い。
ボクは数えきれないほど電話をして……ようやく3日間、短期入所を予約することができた。
そして3日後は違う施設でまた3日間、入所する。
その間に包括ケア病棟に入れればいいのだが……。
包括ケア病棟の話も同時に勧めていく。
『空きは出るかもしれませんので対応は可能ですよ』
包括ケア病棟の担当の相談員はどこも親切だった。
否……
基本的にはどこの病院の相談員も親切だ。
ただ、稀に訳の分からないことを言ってくる相談員がおり、在宅のケアマネジャーを苦しめるのだ。
『ありがとうございます』
『まずは診療情報提供書を送っていただけますでしょうか?』
『承知致しました。現在、入院している病院からそちらに送付するようにお伝えしておきますね』
これで良し。
そう思ったところに電話が鳴った。
『はい。ケアマネジャーの阪上です』
『お世話になっております。利用者さんの件でお電話致しました退院支援の看護師の古江です』
本日退院になる利用者が入院していた病院の退院支援の看護師だ。
今更、何の用があって電話をしていたのだろうと思いながらボクは受話器を握りしめた。
『あ、お世話になっております』
『何か誤解があったようでお電話致しました』
『誤解……ですか??』
『わたし、何かあったらそちらにお電話ということを承っていたのですが、間違いないですよね?』
『何かあったら? その何かには退院は含まれていないんでしょうか?』
何もなくても退院予定は教えてほしい。
というのも、この利用者の場合は在宅生活が困難になりつつある利用者だからだ。
『入院は1週間の予定ですから』
『予定は分かってますが、自宅に帰るのは難しいのではないかとご家族も心配されているとお伝えしませんでしたか?』
『はい。ですが動作そのものはそんなに低下していませんので』
確かに入院前の連携では日常生活動作が入院によって下がる可能性があり、自宅での生活が困難になる可能性があるので、何かあったら連絡をと言ったには言った。
しかし自宅に帰れない理由は動作の問題だけではなく、本人を取り巻く環境にもあり、認知症の奥様と二人暮らしで服薬もろくに管理できない環境なのだ。
そんな状況で自宅に帰すわけには行かないだろう。
『いや……日常生活動作の問題だけではなく、環境面の話も入院時にさせていただいたんですけど』
『今回の入院は期間が決まっているのでご理解いただきたいのですが』
『別に文句はありませんよ。承知致しました。とりあえず短期入所は抑えてありますから大丈夫ですよ』
ああ。
この人。
ボクが書いた連携シート、何一つ見てないのだな。
そう思ったのだけど、退院という事実は変えられないし、そもそも何かをこの古江さんにやってもらおうとは思っていない。
ただ診療情報提供書だけはお願いしないことにはどうしようもない。
『短期入所の後の話なのですが……』
『はい。何かあるんですか?』
あるに決まってるだろ!!
という心の声が漏れないように冷静にボクは話す。
『どうしても現状の動作では自宅は難しいのでリハビリ目的で包括ケア病棟に入院したいんですね』
『すみません。こちらでは紹介はしていないんです』
『知ってます。こちらで手配していますからそこはご安心ください』
『ああ、そうなんですか』
そうなんですか……ではない。
本来はあんたの仕事だ。
『それで診療情報提供書を送付してほしいのですが……』
診療情報提供書と言う言葉を聞いて明らかにトーンが下がった様子が受話器越しに分かった。
まさか、それさえやらないつもりじゃないだろうな。
それはさすがに許さないからな。
『分かりました。ただ主治医は外科の医師なので多忙で書類の作成に時間がかかるかもしれません』
『承知致しました。そちらのご都合も分かるのですがなるべく早くお願いしますね』
ボクはどっと疲れて電話の受話器をおいた。
この時点で、時間はお昼の12時。
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この時のボクは午後からさらに疲れる出来事があるとは思ってもいなかった……
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