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絵日記は作文がメインなんだから絵は視覚に訴えればなんでもいいのである。
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かみさんに雷を落とされてようやく宿題にとりかかった息子だが……
日記だけは苦手な様子で、机の前でモジモジしていた。
『ねえ……パパ』
『ん?』
『日記、書くことない』
『ああ、じゃあ宿題やらないで済まそうとしたらママにキレられたこと書いたら』
『いや、怒られるから』
『そうか……じゃあ土曜日にバッタ獲ったこと書けばいいじゃん』
『あ、そうか』
そう言って文章を書き始める息子。
目を離すとすぐに飽き始めるので、今度はちゃんと見ているボク。
てゆうか……
字が汚いなあ……
『字、汚ねえな』
『しょうがないじゃん。パパに似たんだよ』
『残念だな。お父さんは字だけはそこそこ綺麗なんだ』
『え? 何その裏切り』
『ちゃんと練習したからな』
『練習? ヤダ』
『ガンバレよ。根性のないお父さんでもやれたんだぞ』
『ええ――――』
『まあ、いいや。続き書きな』
『書くことない』
息子が書いた日記を覗き込むとそこには『土曜日にバッタをとりました』とだけ書いてある。
他にも書くことあるだろ。
なんでバッタを獲りに行ったのかとか……
どうやって獲ったのかとか……
どんな種類が獲れたのかとか……
どれだけ獲れたのかとか……
あと最後にバッタを獲ってどうだったのかとか……
息子に言うと『あ、そうか……』と言いながら書き始める。
天気が良かったのでパパと一緒に虫を捕りに行きました。
途中でパパの仕事の電話が鳴ったのでパパはめんどくさそうに電話に出ていました。
草むらに網を入れると、緑色の10センチぐらいの大きなバッタが捕れました。
その他にも小さいバッタが捕れました。
捕れたバッタは写真を撮って逃がしました。
とても楽しかったです。
こんな内容の日記に仕上がったのだけど……
『パパの電話の件は削除っとこうか……』
『これは外せないよ』
『いや、いらないだろ』
『そうかな……めんどくさがってたじゃん』
『めんどくさがってたけど、日記の内容とは関係ないじゃん』
『関係あるよ。仕事はめんどくさがるのに虫捕りには夢中だったということをボクは言いたいんだよ』
『そんなプチお父さん情報、誰が知りたがるんだ?』
『まあ、誰も知りたくないか……』
納得して、電話の件を消しゴムで消す息子。
納得してくれたのはいいのだけど、なんかちょっと傷つく……。
文章は書けたのであとは絵日記のイラストの部分だけだ。
『絵、描けないよ』
『大丈夫だ。そんなこともあろうかとこれを用意しておいた』
ボクは絵日記のイラスト部分の大きさに合わせてプリントアウトしたバッタの写真を息子に渡す。
『おお! さすがパパだわ!!』
『大きな声を出すんじゃない。ママにバレたらやばい』
『そうだね』
嬉々として息子はバッタの写真を貼る。
絵日記に写真なんてダメでしょう……
そんな声が聞こえてきそうだけど、ボクとしてはアリだと思っている。
なぜかと言えば絵日記は何の授業かと言えばそれは国語の授業であり、美術の授業ではないのだ。
美術の授業なら写真はダメだと思うが、国語の作文の宿題なのだから、イラストの部分はあくまで作文を補助できる何か視覚に訴えるものでいいのだ。
下手なイラストなどを描くよりよっぽど分かりやすいだろう。
『ちょっと……』
後ろを振り返ると完全に怒った顔をしているかみさん。
『何? できたよ。すごいじゃん。なあ』
『すごいでしょ。ママ』
まったく悪びれる様子もないこの父子。
いや、当たり前だ。
先程も書いたが、日記の部分はちゃんとやっているのだ。
『これはアウトでしょ!』
『いやいや、何言ってるの。ルール上何の問題もない』
『ルールって……てゆうか問題は先生がどう判断するかじゃないの?』
『大丈夫!』
『その根拠のない自信はどこから来る?』
『じゃあ、分かった。今回はこれで提出してなんか言われたらボクがビシっと先生に言うから』
『言う? なんて??』
『ごめんなさいって』
結局、息子は写真付きの絵日記を提出したが、先生からは何も言われることはなかった。
ボクはドヤ顔をしてかみさんに言った。
『な! だから大丈夫って言ったじゃん』
『まあ……そうだね』
『だから次回以降も写真で行こう!』
『おう!!!』
息子もノリノリでガッツポーズなんかする始末。
『ダメ!』
『ええ――――!! なんで――――!!』
『そんなズル、許しません』
『ズルじゃないじゃん。ねえ、パパ』
『おお、そうだそうだ! そんな横暴認められないぞ!!!』
『……ダメです』
かみさんが怒鳴るのではなくこうやって静かに否定している時はやばい時だ。
『……やべえからあきらめよう……』
『うん。やばいね……』
ボクは息子と小声で話す。
残念ながら我が家の法律はかみさんなのだ。
こちらの道理もかみさんに受け入れられないと通らないのである。
日記だけは苦手な様子で、机の前でモジモジしていた。
『ねえ……パパ』
『ん?』
『日記、書くことない』
『ああ、じゃあ宿題やらないで済まそうとしたらママにキレられたこと書いたら』
『いや、怒られるから』
『そうか……じゃあ土曜日にバッタ獲ったこと書けばいいじゃん』
『あ、そうか』
そう言って文章を書き始める息子。
目を離すとすぐに飽き始めるので、今度はちゃんと見ているボク。
てゆうか……
字が汚いなあ……
『字、汚ねえな』
『しょうがないじゃん。パパに似たんだよ』
『残念だな。お父さんは字だけはそこそこ綺麗なんだ』
『え? 何その裏切り』
『ちゃんと練習したからな』
『練習? ヤダ』
『ガンバレよ。根性のないお父さんでもやれたんだぞ』
『ええ――――』
『まあ、いいや。続き書きな』
『書くことない』
息子が書いた日記を覗き込むとそこには『土曜日にバッタをとりました』とだけ書いてある。
他にも書くことあるだろ。
なんでバッタを獲りに行ったのかとか……
どうやって獲ったのかとか……
どんな種類が獲れたのかとか……
どれだけ獲れたのかとか……
あと最後にバッタを獲ってどうだったのかとか……
息子に言うと『あ、そうか……』と言いながら書き始める。
天気が良かったのでパパと一緒に虫を捕りに行きました。
途中でパパの仕事の電話が鳴ったのでパパはめんどくさそうに電話に出ていました。
草むらに網を入れると、緑色の10センチぐらいの大きなバッタが捕れました。
その他にも小さいバッタが捕れました。
捕れたバッタは写真を撮って逃がしました。
とても楽しかったです。
こんな内容の日記に仕上がったのだけど……
『パパの電話の件は削除っとこうか……』
『これは外せないよ』
『いや、いらないだろ』
『そうかな……めんどくさがってたじゃん』
『めんどくさがってたけど、日記の内容とは関係ないじゃん』
『関係あるよ。仕事はめんどくさがるのに虫捕りには夢中だったということをボクは言いたいんだよ』
『そんなプチお父さん情報、誰が知りたがるんだ?』
『まあ、誰も知りたくないか……』
納得して、電話の件を消しゴムで消す息子。
納得してくれたのはいいのだけど、なんかちょっと傷つく……。
文章は書けたのであとは絵日記のイラストの部分だけだ。
『絵、描けないよ』
『大丈夫だ。そんなこともあろうかとこれを用意しておいた』
ボクは絵日記のイラスト部分の大きさに合わせてプリントアウトしたバッタの写真を息子に渡す。
『おお! さすがパパだわ!!』
『大きな声を出すんじゃない。ママにバレたらやばい』
『そうだね』
嬉々として息子はバッタの写真を貼る。
絵日記に写真なんてダメでしょう……
そんな声が聞こえてきそうだけど、ボクとしてはアリだと思っている。
なぜかと言えば絵日記は何の授業かと言えばそれは国語の授業であり、美術の授業ではないのだ。
美術の授業なら写真はダメだと思うが、国語の作文の宿題なのだから、イラストの部分はあくまで作文を補助できる何か視覚に訴えるものでいいのだ。
下手なイラストなどを描くよりよっぽど分かりやすいだろう。
『ちょっと……』
後ろを振り返ると完全に怒った顔をしているかみさん。
『何? できたよ。すごいじゃん。なあ』
『すごいでしょ。ママ』
まったく悪びれる様子もないこの父子。
いや、当たり前だ。
先程も書いたが、日記の部分はちゃんとやっているのだ。
『これはアウトでしょ!』
『いやいや、何言ってるの。ルール上何の問題もない』
『ルールって……てゆうか問題は先生がどう判断するかじゃないの?』
『大丈夫!』
『その根拠のない自信はどこから来る?』
『じゃあ、分かった。今回はこれで提出してなんか言われたらボクがビシっと先生に言うから』
『言う? なんて??』
『ごめんなさいって』
結局、息子は写真付きの絵日記を提出したが、先生からは何も言われることはなかった。
ボクはドヤ顔をしてかみさんに言った。
『な! だから大丈夫って言ったじゃん』
『まあ……そうだね』
『だから次回以降も写真で行こう!』
『おう!!!』
息子もノリノリでガッツポーズなんかする始末。
『ダメ!』
『ええ――――!! なんで――――!!』
『そんなズル、許しません』
『ズルじゃないじゃん。ねえ、パパ』
『おお、そうだそうだ! そんな横暴認められないぞ!!!』
『……ダメです』
かみさんが怒鳴るのではなくこうやって静かに否定している時はやばい時だ。
『……やべえからあきらめよう……』
『うん。やばいね……』
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