日陰者の暮らし

阪上克利

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日陰者の暮らし

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 結局、担当者会議というのは家族と本人の意向は全く無視して行われるものだということをボクは身をもって体験した。事業者がすべて帰ったあと、ボクは母の部屋でベッドに横になっている母を見ながら途方に暮れていた。

 それにしても……まったくもって考えられない。

 常識の範疇外の出来事、というのはこのことである。
 担当者会議の結論はこうだ。

 つまりボクは朝、起きることができない日もあるから、アテにできない。だから朝はヘルパーを導入する。
 朝のヘルパーにはオムツ交換だけでなく、できる限りトイレ誘導をしてもらう。
 ヘルパーがいないときはなるべくポータブルトイレを利用する。

 朝、ヘルパーを導入するのはいいとして、その費用はだれが払うのだ。
 そしてボクが起きた日はどうしてくれるんだ?

 トイレ誘導?

 本人は歩きたがらないのだ。
 というか動きたがらないのだ。

 『痛いからじっとしていたい。』母はボクにそう言っている。
 ヘルパーにも通所の職員にもそう言っているのだ。

 なぜ、本人の意向を最優先にしないのだ。
 痛がって、歩きたくないと言っている。じっとさせてやってほしい。

 自立支援?
 だれがそんなこと望んだ??
 母は自立など、望んでいない。
 残りの人生を静かに安楽に過ごしたいと思っているはずだ。
 なぜわからない!

 なぜ自己満足の介護を押し付ける!!

 それはボクがいい年になって会社にも行かず、家で仕事しているからか?お前ら介護職員はそれで自己満足だろう。どうせお前らからみれば『独身の男と母親』の二人暮らしなんか、カビの生えた日陰者の暮らしにしか見えなくて馬鹿にしているんだろう。

『おふくろ。ごめんよ。』
 ボクは母のベッドの横で初めて涙を流した。
 母はうつろな目でボクを見つめるばかりだった。



 次の日……
 ボクは珍しく早起きをした。
 母の部屋に入り、母の世話をしようと思ったのだ。
 しかしベッドの上で横たわっていたのは、嘘のように青白くなった肌をした母だった。
『おふくろ?』
ボクはあわてて母に近づき、その身体に触れた。

 その身体は恐ろしいぐらいに冷たかった。
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