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ある教師の死

心に引っかかる何か

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 一週間後……
 図書準備室でいつものようにすみは一人で本を読んでいる。
 そういえば……SNSでミステリー研究部がなんでも屋を始めたことを告知してから数日経つ。
 未だに依頼はない。
 まあ、今は依頼があっても困るのだ。
 というのも先日亡くなった生活指導の教師である門叶義人とかのよしとについての特集記事の締め切りが近いからだ。

 門叶とかのの生い立ちについては、明日香の叔母の恋人でもあるくだんの探偵に、わとんのコロッケを持って行ってやってもらうこととなった。
 調査の結果はそんなに早く出るものでもないらしいから、もしかしたら夏休みに入ってしまうかもしれないとのこと。
 ただそうだとすると今月号の新聞には間に合わない。
 今回はこの記事を書くのか……
 それともほかの記事で差し替えて来月号にするのか……

『あたしとしてはなんとしても門叶とかの先生の記事は今月に掲載したいのよね』
『うん……それはなんとなく分かるよ』
 そんな風に言う明日香に対してすみはそう答えた。
 というのも……間に合わないから記事を先送りにすればいいというものではないのだ。こういうものには旬というものがある。
 生徒たちがすみや明日香と同じように身近な教師の死についてそれぞれに考えているこの時間帯に記事を出さないと意味がない。つまり来月にしてしまっては記事の内容が読者の気持ちから離れて行ってしまうのだ。

『なんとか早めにお願いできませんか?』
 明日香は、叔母さんに言っていた。
 明日香の叔母は、女優みたいにきれいな人だった。母方の叔母なので名字も違う。
 名前は鈴木亮子。
 よく見たらどことなく明日香に似ている。
 亮子はさらさらのロングヘア。カールがかかっていないまっすぐで黒い髪の毛がとても印象的だ。
 対照的に明日香はばっさりと短いショートヘア。少し天然パーマで毛先がクルンとしているところが面白い。当たり前だが学生なので化粧はしていない。
 これだけで二人は叔母と姪であるのにもかかわらず、一瞬、他人のように見えてしまうのだけど、これがまたじっくり二人の顔を見比べると、やはり血のつながりを感じるぐらい似ているのだから面白い。
『そうよね。記事にするなら早い方がいいんだものね』
 亮子の声は明日香そっくりだ。
 たぶん電話では聞きわけがつかないだろう。

 亮子は恋人である探偵になるべく早く調査できるように言ってくれるとのことだった。

 すみにはこの人が、ちょっと押しが強そうな人だったけど、すごくいい人に見えた。
 明日香がこの叔母さんを好きなのはなんとなく分かる。

『はあ……』
 純は図書準備室で一人ため息をついた。
 調査結果は一週間たってもまだ来ていない。
 ただ……そのことよりもこの記事の内容自体、すみの心に引っかかっていることがある。
 何が引っかかっているかは自分でも分からない。

 今のところ、明日香からは何の話もないが、一応、代替えの記事を用意しておいた方がいいのかもしれない。
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