隣の二階堂さん

阪上克利

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ラーメン屋でチャーシュー丼を食べるのか否か

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 隣の二階堂さんには変な癖がある。
 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。
 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。
 最近では彼女が何かに煮詰まってきている時にお茶に誘って話を聞くことをあたしも夕凪ゆうなも楽しみにしている。

 どんどんどんどん……

 今夜も壁を叩く音がする。
 4歳になった夕凪ゆうなは嬉しそうにあたしを見る。
 あたしは夕凪ゆうなに言った。
 『お姉ちゃん、呼んできてくれる?甘いものでも食べましょうって』


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 お酒を呑むときはあまり食べない。
 居酒屋に行けばお通しだけで呑めるぐらいだ。
 というのも、あまりお腹いっぱいになってはお酒を呑む気もなくすからである。
 だから、お酒の合間に少し肴をつまむ程度でほとんど食べない。

 だから大丈夫……
 と信じたい。

 お酒の後のラーメン。
 お腹すいちゃうからつい……。

 で……ラーメンだけじゃなくてミニチャーシュー丼まで……。
 普段は食べないんだけどなあ。

 なんでお酒を呑むと美味しいのだろう。
 つい食べてしまう。
 そしてお腹空いているもんだから完食できてしまうのだ。
 この調子ではせっかくダイエットしたのが意味をなさなくなってしまうのも時間の問題だ。

 てゆうか……

 なんでラーメン屋のチャーシュー丼って美味しいんだろう。
 はっきり言っちゃえばラーメンとどっち食べるか迷うときさえある。
 チャーシュー丼といえばラーメン屋からすればサイドメニューなんだろうけど、これが美味しくて、これ目的でラーメン屋に行きたい時もあるぐらいだ。

 もちろん、それで肝心のラーメンを食べないのはちょっと違うような気がするので普段はラーメンを食べるのだが…チャーシュー丼は断腸の思いであきらめているのだ。

 結局……だからだろう。
 酔ってると勢いで両方とも食べてしまうのは。
 普段は我慢していることも酔った勢いならできてしまうのだ。

 それで食べた後に……
 満腹のお腹をかかえながら『食べ過ぎた……』といつも反省させられる。こうなったらチャーシュー丼のみ注文できるか、もしくはラーメンのミニがあればいいと思う。
 そうすればあたしも飲んだ時に失敗しなくてすむ。
 いや……そもそも酔った勢いで食べているのだから果たして失敗せずにいられるだろうか……。
 とは言うものの……あきらかに深夜のラーメンとチャーシュー丼は身体に悪いしなあ。
 ただ美味しいのも事実だし。

 いや……
 ちょっと待てよ。
 走ればいいんじゃないか……。
 このためにダイエットして運動もちゃんとする。

 おお。
 いかにも身体に良さそうだ。

 ん?
 身体に悪いことをするために身体に良いことをするの?
 だったら最初からお酒の後のラーメンは控えた方がいいのでは……
 せめてラーメン食べる時はチャーシュー丼は辞めた方がいいのでは……。
 あ……それは酔った勢いでやってるから無理か……。

 いやいや……
 ちょっと待って。
 それ以前に……ラーメンとチャーシュー丼ってそんなに太るかな?

 だってお酒飲んでいる時点では少ししか食べてないんだよ……。
 ラーメンとチャーシュー丼食べても、トータルではそこまで食べてないんじゃないかしら?

 うーん……。
 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。

 どうやらあたしはまたやってしまったらしい。
 『いつもごめんね……』
 扉を開けると玄関の向こうには夕凪ゆうなちゃんがいた。
 『あれ?お姉ちゃん、ちょっと太った??』

 子供は正直だ……。
 やっぱり走ることにしよう。
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