満月の夜には魚は釣れない

阪上克利

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じっと待っているだけでは魚は釣れない

センス

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映画館の近くにはショッピングモールが立ち並んでおり、靖男が普段は絶対に足を踏み入れないようなお店がこれでもかと並んでいた。

『う…。』
靖男はこういうところを歩いたことがない。
そもそも休日に出かけるということがあまりないのだ。
映画にしても随分前に克利と行った以来である。あの時はもっとこう普通というか…こういうショッピングモールがない場所にきたような気がする。
よく覚えていないが…。
人ごみとお洒落な街並みは苦手だ。
できれば家にこもっている方が好きだ。
出かけるにしてもパソコン関連のお店か釣具屋ならそんなに緊張もしないが…。
『どうしたんですか?』
前を歩いていた里奈が振り返って言った。
よく見ると肌が透き通るように白い。
頬紅をつけているのだろうか?
頬のところが少し赤い。

『いや…なんか緊張しちゃって…。』
『実は…あたしも…です。』
『え?』
『だってこんなお洒落なところ普段来ませんから。』
『そ…そうなんですか。』

靖男は女性は必ずこういうところで遊んでいるものだと思っていた。
それだけに里奈が普段、こういうところに来ないというのは意外だった。

『でもなんか見てるだけで楽しいですねえ。おとぎの国に来たみたい。』

里奈は靖男の隣に並んで歩きはじめた。
『確かにそんな感じですね。』
うまいこと言うなあ…
靖男は里奈の言葉に感心しながら頷いた。
ショッピングモールにはいろんなお店が並んでいる。キラキラとした照明と時折見かけるシャンデリア。お店にはお洒落な洋服や小物が置いてある。レストランやカフェも並んでおり、その中には家族連れもいればビジネスマンらしきスーツの男性もいる。
そのすべてが小ぎれいで、靖男とは住む世界が違うように感じる。
まさにおとぎの国だ。

『何か…買います?』
靖男は気を利かしたつもりだった。
なんとなく何を言えばいいか分からなかったからだ。
正解はなんなんだろう。
てゆうか…正解なんかあるのだろうか。
考えてみれば、自分が思っていた若い女性のイメージというのはただ単にイメージであって、実は人それぞれではないのだろうか。
『うーん。どうしようかな~。』
里奈はショッピングウインドウを眺めながら言った。
キラキラ光っているお店は彼女にとっても入りづらいのかもしれない。

『喫茶店にでも入りましょうか。』
『え?いいんですか??保高さんは何か見ないんですか?』
『あ…いや…ボクはちょっとこういう店は敷居が高くて…。』
『そうなんですね…。実はあたしもです。』

里奈はイタズラをした後のような笑みを浮かべて言った。
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