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鑑別札つきのウサギちゃん
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「結名、早く」
「やっ…!」
蓮音が背後からあたしの右膝裏を持ち上げ、そのまま開かれそうになった。
ベッドの端っこに座ったまま、膝を開く…その完成形の未来は、想像なんかしなくたってどんなに恥ずかしい体勢なのか分かりきってるから、あたしは当然の如く抵抗した。
「蓮音っやだっ」
「こら暴れんなよ」
逞しい腕はびくともしない。まるで恋人とイチャイチャしているような声色で笑う蓮音は、あたしの膝を更に高く持ち上げる。冗談じゃない。恋人たちのキャッキャウフフとはまるでかけ離れた体勢に、あたしは本格的に暴れ出す。
黙って見ているだけだった紫音の目の色が変わった。
「結名ちゃん、縛られたい?」
「ちがっ…!」
おっとりしていて物腰柔らかく、いつも微笑んでいる紫音だが、実は蓮音よりも紫音の方がずっと冷徹だ。すっと細められたその目に、どくりと心臓が跳ねる。同時に冷たい汗が背中を伝った。
紫音はその目を変えないまま、あたしを正面からまっすぐ射抜く。
「蓮音、“アレ”、使ってもいいよね?」
まるで強制的に読まされた読書感想文の一文を口に出したみたいに、紫音は声帯を震わせる。蓮音は相変わらず朗らかに笑った。
「おう」
これから何が起こるのか予想すら出来ないあたしは、ただ固まることしかできない。
音もなく立ち上がる紫音は、あたしのほうをちらとも見なかった。プログラムをセットされたロボットのように、一切の無駄な動きを省いて部屋の扉を開け、その奥へと消えていった。
もう見えなくなった紫音の影を目線だけで追っていたら、背後の蓮音があたしの体をぐっと抱き寄せる。
「ひゃっ!あっ…蓮音…」
「ん。なぁ、このピアス着けてくれてるんだな」
恋人が後ろから抱き締めているような、慈愛に満ちた抱擁で、蓮音があたしの耳に舌を這わせた。鼓膜に直接響く蓮音の落ち着いた低音にぞくぞくと背中が粟だち、思わず後ろから回された腕にしがみつく。
これがもし恋人との甘い時間であるならば、あたしだってきっと幸せな時間だったと思う。
蓮音はあたしの足を持ち上げたまま、嬉しいよ、なんてピアスごと舐め上げるから、ちっとも幸せじゃなかった。
それなのに…それなのに、腰に甘い電流が流れる。耳が弱いのは、これまで散々までに双子に舐られたためだ。決してあたしがあたしの意思で、こんな格好で耳を舐められ、善がってるわけじゃない。酷い時など同時に両耳を舐られたこともある。悪いのは紫音と蓮音だ。
ぞりぞりと耳介に舌を這わせる蓮音の熱い吐息が、あたしの一番敏感な部分をダイレクトに響かせた。
蓮音が今しつこいくらいに舌を這わせるのは、リングタイプのピンクゴールドのピアス。一列に綺麗な石がはめ込まれたデザインで、双子がアルバイトしてあたしの誕生日にプレゼントしてくれたものだった。
「お待たせ…なんだ、僕がいない間に結名ちゃんすっごくいい顔してる」
足音を忍ばせて来たのか、それともあたしの鼓膜は今蓮音から与えられたものだけで、気が付かなかったのか。
どっちにしても、紫音がいつ階段を登ってきたのか全く分からなかった。
蓮音はあたしの耳に唇を寄せたまま笑う。
「おー。耳好きだもんな?」
「あー、ピアスのことでしょ?“僕達の奴隷の証”」
ビクリと肩が跳ねた。
明らかに、恐怖ではなかった。
プレゼントされたとき、家畜の識別札みたいでしょ、なんて言われた。ぞくりとしたことは内緒だったはずなのに…双子にはバレていたようだ。
──自ら進んでこれをつけているなんて、あたしも大概だな、なんて…。
ぞくぞくと背中が粟立ち、蓮音の腕に更にしがみつく。耳元で蓮音が可笑しそうに笑った。
「こうやって縋ってくる結名も可愛いけどな。紫音」
「分かってるよ。蓮音がやる?」
「そうだな、体勢的に」
双子のやり取りの隙間に、真っ白のファーが見えた。 頭がすっかり痺れてあまり上手く認識することができない。
「うさぎさんみたいでしょ。これみた時、真っ先に結名ちゃんが浮かんだんだよ。寂しがり屋で可愛くて、つい構いたくなっちゃう家畜って感じ」
ぞくぞくと鳥肌が止まない。ついでに足まで震えてきた。
紫音の指に引っかかるは、柔らかで真っ白い、可愛らしいラビットファー。
その間に冷たい金属の鎖が見えて、あたしは決して明るくない未来に目を閉じた。
「後ろ手がいいな。前だと抵抗されるし」
「そうだね。それに、後ろにしたほうがおっぱい強調されるから僕好きだよ」
本でも手渡す様に紫音が蓮音にファーを手渡した。かちゃりと重たくて冷たい音を聞き逃さなかった。
「手こっち…そうそう。従順になったよな。良い子」
「そうだよね。抵抗してもいいことないもんね?やっと覚えてくれて嬉しいよ」
大人しく背中に両手を回し、冷たい金属の輪が掛けられるのをじっと待った。
紫音の言う通り、抵抗していいことなんかひとつもなかった。…あれは思い出さないでおこう。
──かちゃん。
素直に従ったあたしの手首に輪を通して、冷たい音を響かせながらぎゅっと狭められる。遊びがほとんどなく、鎖も短い。
上目で正面にいた紫音に視線を投げかけると、彼は蕩けそうな顔をしていた。
「ああ、いいね。その顔たまんないよ。雌の顔。息上がってるね?」
「淫乱な家畜に育てるの大変だったもんな」
鎖を無遠慮に引っ張られ、短い悲鳴を上げた。倒れた先は、蓮音の逞しい腕の中。
「足開け」
…そう、抵抗してもいいことがない。
散々までに教化され、あたしの体はすっかり双子に支配されてしまっては、足を開くこと以外の選択肢がない。
座っているベッドの端に足を乗せるような形で足を大きく広げて見せた。
「やっ…!」
蓮音が背後からあたしの右膝裏を持ち上げ、そのまま開かれそうになった。
ベッドの端っこに座ったまま、膝を開く…その完成形の未来は、想像なんかしなくたってどんなに恥ずかしい体勢なのか分かりきってるから、あたしは当然の如く抵抗した。
「蓮音っやだっ」
「こら暴れんなよ」
逞しい腕はびくともしない。まるで恋人とイチャイチャしているような声色で笑う蓮音は、あたしの膝を更に高く持ち上げる。冗談じゃない。恋人たちのキャッキャウフフとはまるでかけ離れた体勢に、あたしは本格的に暴れ出す。
黙って見ているだけだった紫音の目の色が変わった。
「結名ちゃん、縛られたい?」
「ちがっ…!」
おっとりしていて物腰柔らかく、いつも微笑んでいる紫音だが、実は蓮音よりも紫音の方がずっと冷徹だ。すっと細められたその目に、どくりと心臓が跳ねる。同時に冷たい汗が背中を伝った。
紫音はその目を変えないまま、あたしを正面からまっすぐ射抜く。
「蓮音、“アレ”、使ってもいいよね?」
まるで強制的に読まされた読書感想文の一文を口に出したみたいに、紫音は声帯を震わせる。蓮音は相変わらず朗らかに笑った。
「おう」
これから何が起こるのか予想すら出来ないあたしは、ただ固まることしかできない。
音もなく立ち上がる紫音は、あたしのほうをちらとも見なかった。プログラムをセットされたロボットのように、一切の無駄な動きを省いて部屋の扉を開け、その奥へと消えていった。
もう見えなくなった紫音の影を目線だけで追っていたら、背後の蓮音があたしの体をぐっと抱き寄せる。
「ひゃっ!あっ…蓮音…」
「ん。なぁ、このピアス着けてくれてるんだな」
恋人が後ろから抱き締めているような、慈愛に満ちた抱擁で、蓮音があたしの耳に舌を這わせた。鼓膜に直接響く蓮音の落ち着いた低音にぞくぞくと背中が粟だち、思わず後ろから回された腕にしがみつく。
これがもし恋人との甘い時間であるならば、あたしだってきっと幸せな時間だったと思う。
蓮音はあたしの足を持ち上げたまま、嬉しいよ、なんてピアスごと舐め上げるから、ちっとも幸せじゃなかった。
それなのに…それなのに、腰に甘い電流が流れる。耳が弱いのは、これまで散々までに双子に舐られたためだ。決してあたしがあたしの意思で、こんな格好で耳を舐められ、善がってるわけじゃない。酷い時など同時に両耳を舐られたこともある。悪いのは紫音と蓮音だ。
ぞりぞりと耳介に舌を這わせる蓮音の熱い吐息が、あたしの一番敏感な部分をダイレクトに響かせた。
蓮音が今しつこいくらいに舌を這わせるのは、リングタイプのピンクゴールドのピアス。一列に綺麗な石がはめ込まれたデザインで、双子がアルバイトしてあたしの誕生日にプレゼントしてくれたものだった。
「お待たせ…なんだ、僕がいない間に結名ちゃんすっごくいい顔してる」
足音を忍ばせて来たのか、それともあたしの鼓膜は今蓮音から与えられたものだけで、気が付かなかったのか。
どっちにしても、紫音がいつ階段を登ってきたのか全く分からなかった。
蓮音はあたしの耳に唇を寄せたまま笑う。
「おー。耳好きだもんな?」
「あー、ピアスのことでしょ?“僕達の奴隷の証”」
ビクリと肩が跳ねた。
明らかに、恐怖ではなかった。
プレゼントされたとき、家畜の識別札みたいでしょ、なんて言われた。ぞくりとしたことは内緒だったはずなのに…双子にはバレていたようだ。
──自ら進んでこれをつけているなんて、あたしも大概だな、なんて…。
ぞくぞくと背中が粟立ち、蓮音の腕に更にしがみつく。耳元で蓮音が可笑しそうに笑った。
「こうやって縋ってくる結名も可愛いけどな。紫音」
「分かってるよ。蓮音がやる?」
「そうだな、体勢的に」
双子のやり取りの隙間に、真っ白のファーが見えた。 頭がすっかり痺れてあまり上手く認識することができない。
「うさぎさんみたいでしょ。これみた時、真っ先に結名ちゃんが浮かんだんだよ。寂しがり屋で可愛くて、つい構いたくなっちゃう家畜って感じ」
ぞくぞくと鳥肌が止まない。ついでに足まで震えてきた。
紫音の指に引っかかるは、柔らかで真っ白い、可愛らしいラビットファー。
その間に冷たい金属の鎖が見えて、あたしは決して明るくない未来に目を閉じた。
「後ろ手がいいな。前だと抵抗されるし」
「そうだね。それに、後ろにしたほうがおっぱい強調されるから僕好きだよ」
本でも手渡す様に紫音が蓮音にファーを手渡した。かちゃりと重たくて冷たい音を聞き逃さなかった。
「手こっち…そうそう。従順になったよな。良い子」
「そうだよね。抵抗してもいいことないもんね?やっと覚えてくれて嬉しいよ」
大人しく背中に両手を回し、冷たい金属の輪が掛けられるのをじっと待った。
紫音の言う通り、抵抗していいことなんかひとつもなかった。…あれは思い出さないでおこう。
──かちゃん。
素直に従ったあたしの手首に輪を通して、冷たい音を響かせながらぎゅっと狭められる。遊びがほとんどなく、鎖も短い。
上目で正面にいた紫音に視線を投げかけると、彼は蕩けそうな顔をしていた。
「ああ、いいね。その顔たまんないよ。雌の顔。息上がってるね?」
「淫乱な家畜に育てるの大変だったもんな」
鎖を無遠慮に引っ張られ、短い悲鳴を上げた。倒れた先は、蓮音の逞しい腕の中。
「足開け」
…そう、抵抗してもいいことがない。
散々までに教化され、あたしの体はすっかり双子に支配されてしまっては、足を開くこと以外の選択肢がない。
座っているベッドの端に足を乗せるような形で足を大きく広げて見せた。
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