溺れる金魚は空を見る

ちな

文字の大きさ
上 下
3 / 5

3話

しおりを挟む
「生きてる?」

 喉からひゅーひゅーと変な音が漏れ、体が勝手にびくんびくんと跳ねる。

 何度か綿棒を変え、たっぷり入っていたローションが半分になった頃、先生はようやく開放してくれた。けほけほと乾いた咳が出ているのに酸素を欲した体と噛み合わず、ひひゅーひひゅーとおかしな呼吸しかできない。泣きすぎて頭が痛い。叫びすぎて喉も痛い。圧倒的な酸素不足でくらくらする。拘束された四肢が痛い。勃起しすぎたクリトリスはひやっとした空気にさえ敏感に反応し、勝手に快楽を摂取する。子宮がきゅんきゅん鳴いて先生を欲しがっているが、肝心の先生は怒涛のクリ責めに満足してしまったようだった。

「ねぇリン。本当に浮気してないの?」

 必死に訴えた身の潔白は、まだ完全に信用してもらえていないらしい。正直絶望したし、これ以上どうやって証明したらいいのかさっぱり分からない。頭の中が白く霞んで、これ以上思考を回すことは不可能だった。

「じで、ないっ…」

 がくがく痙攣する顎は重く、しかもひどく掠れてしまっていて、自分でもなんて言っているのか分からない。

 それでも先生は、ちゃんと拾ってくれた。

「そう。じゃあ僕だけを好きって証明できる?」

 ひくんひくんと子宮が反応する。私が欲しいのはこれまでも、そしてこれからも先生だけだ。ぐちゃぐちゃになってしまった股の間は、先生が欲しいって号哭している。

「れっ…さん、」

「うん」

「好き…蓮さん、だけが、すき…すきなの、これとって、ぎゅーってして、ちゅうしたい、蓮さん、好き、ねぇ好き、ちゅうしてよぉ、蓮さんっ」

 掠れた酷い声で必死に訴えた。訳も分からず涙がぼろぼろ零れて喉がつっかえて、嗚咽に塗れた酷い声だった。

 多分、一番怖かったのは、先生が私から離れてしまう事だった。浮気なんか考えたこともないのに濡れ衣着せられて、先生が私のことを嫌ってしまうことが一番怖かった。

「先生すき、蓮さん、一番すき、蓮さんしかいらない、ちゅうして、ぎゅーってして、蓮さん離れちゃいや、ねぇ好きなの、蓮さん」

 四肢を拘束されたベッドの上で、馬鹿みたいに泣いた。駄々っ子みたいに嗚咽と声が綯交ぜになった酷い声で泣き叫んだ。

 先生は、くつくつ笑ってた。

「わかった。リン、もう泣かないで。僕もリンが一番好きだよ」

 右腕が解放された。手首が擦れてひりひりする。続いて左手も自由になった。こっちは関節が軋んだ。

「蓮さんっ蓮さぁぁんっ」

「わかったわかった。ちょっと待って」

 笑いながら私の足首の拘束を解く。自分の体じゃないみたいに軋んで重たい体を無理矢理起こして、まだジップアップパーカーのファスナーすら下ろしていない先生の大きな体にしがみつく。先生はやっぱり笑ってた。

「れん゛っ…さんっ…」

 細身に見えて案外がっちりしている先生の体。パーカーの生地の感触。先生の匂い。先生の高い体温。先生の、

「おいで」

 広げられた長い腕。広い胸。置いてけぼりになった子猫が親を見つけた時みたいに、泣きながら飛びついた。ぎゅーってされる温度と力加減と、先生のにおいに私の全部が包まれる。

「先生っ蓮さんっすき、すきだよ、すき、お願い嫌いにならないでっ」

 汗びっしょりになってしまった私を厭わず、うん、僕も好きと囁いてくれる優しい声。僕のリン、と所有物みたいに言ってくれる声色に、ああよかった私の先生だと呆れるくらい安心した。髪を優しく撫でてくれる大きな手が、好きだと思った。

「さてリン。僕のこれがリンの中に入りたいって言ってるんだけど」

 く、と腰を押し付けられる。先生の体に纏う全ての布を押し上げている熱い杭。押し上げている布を少し濡らして、硬く勃起した先生の杭に、私の細胞が沸き立った。

「蓮、さんっ」

 ぞくぞくと背中が粟立つ。あれを胎内の一番奥に入り込む感覚、子宮を破壊するほど強く叩きつけられる快感。嫌というほど教わった先生とのセックスを一瞬にして思い出して、あつい体液が私の奥底からだらだらと零れた。

「仲直りしよ。今日は激しくするよ。犯してあげるから後ろを向きなさい」

 ぞくっと全身が震えた。操られたように先生の温かい腕から抜け出して、シーツに両手を付いた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...