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女王とアリス
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焦点の合わない目は一体何を映しているのでしょう。涙なのか涎なのか、はたまた別のものなのか分からないもので顔中ぐちゃぐちゃにし、真っ赤な舌は喉の奥で丸まっています。
元はきっと、きめ細やかで玉のような肌だったのでしょう。白い皮膚はうっすらピンク色に染まり切り、菫色の液体が飛び散っていました。
「……あなたが、…」
女王。言いかけた声は、喉の奥につっかえて出てきませんでした。凛の目には今、恐怖しかないのです。
「…うそよ、こんな、うそ…」
譫言みたいな凛の声に反応するものはありません。
目の前で呻き、叫び、ぐちゃぐちゃになっている女王の、そのうっすらピンク色に染まり切った肌。そこに浮かぶようにして、痛々しいほどの赤。
──薄い腹や腕に、毒々しいほどの大きなハートマークが描かれているのです。
「は、ぁ……っ! ぁう…!っく、ぅ゛ぅ…っ!! ん、ふ、ぅあ、ぅ…っ!!か、はぁ゛んん゛ッッ…」
およそ人間の言葉を発しない女王に、凛の体が凍り付きました。蜜壺に何本もの触手を咥え込み、乳首を引き延ばされ、獣の唸り声を上げる女王の末路を、知ってしまったのです。
「…や…ぃ、や…やめて…やめてよぉっ…」
凛は自分の手足に絡みつくスライムから逃れようと、震える体で必死に暴れました。びくともしないスライムに恐怖を覚え、叫びます。
「いやだっおうちに!帰る!帰りたいッやだぁぁ!!!」
"凛は、そうなってほしくない"
蓮が俯いて言っていた意味を、今ようやく知ったのです。ぐっちゅんぐっちゅんと酷い音を立てて忙しなく出入りする触手が、一瞬ぴたりと止まりました。
「なぁアリス。女王が可哀想だろ?お前が代わってやれよ…」
足元から楽し気な声が地を這い、緩やかに伸びて消えていきました。
凛はぶんぶん首を振り、絡みつくスライムを振りほどこうと藻掻きます。やっぱりびくともしないスライムは、一度だけぐにゃりとひしゃげました。
「やだ…帰る…お家にかえる…NO…」
右手に隠れた鍵を握りました。頼れるものはもうこれしかありません。藁にもすがる思いでその鍵を握りこむと、一瞬、ほんの刹那、銀の鍵があたたかくなりました。
「…帰る?」
不機嫌な声は触手にじわりと吸い込まれていきます。それが合図のように、女王の蜜壺に入りっぱなしのまま止まっていた菫色の触手が、勢いよく全て抜けていきました。
「あ゛があ゛あ゛あ゛ぃ゛、ぎ、~~~~ッ!!!」
じゅばああぁっと勢いよく蜜が噴射し、雨のように降り注ぎました。恵みの雨とでも言いたげな彼は両手を広げ、高らかに笑いました。
「帰すものか!次の女王はお前だ!!!」
叫んだ彼は勢いのままぶらぶら垂れさがる菫色の触手を引っ掴み、振り回して叫びます。
「アリス!!お前が次の女王になれ!この国をもっともっと反映させるための!!女王だ!!」
彼に掴まれた触手がどろりと溶けだし、朽ちたフローリングにべちゃりと落ちました。
凛はもう、叫ぶこともできませんでした。
その菫色の触手だったものがひとりでにぶるぶる震え出し、火山噴火のように四散したのです。
目の前で起こっていることが出来れば悪い夢だったと祈るより他ありません。四散したスライムが再び集結し、大きな三角形を作り上げました。
「さあアリス!女王になると誓え!蜜を献上しろ!!!」
ひ、とようやくか細い声が出た凛の足元に、三角が忍び寄ります。
「まって…まって…!」
菫色の三角。じりと近寄るその頂点は、強制的に開かされた凛の足の間と、向かい合わせになった女王の足の間にピタリと収まってしまいました。
元はきっと、きめ細やかで玉のような肌だったのでしょう。白い皮膚はうっすらピンク色に染まり切り、菫色の液体が飛び散っていました。
「……あなたが、…」
女王。言いかけた声は、喉の奥につっかえて出てきませんでした。凛の目には今、恐怖しかないのです。
「…うそよ、こんな、うそ…」
譫言みたいな凛の声に反応するものはありません。
目の前で呻き、叫び、ぐちゃぐちゃになっている女王の、そのうっすらピンク色に染まり切った肌。そこに浮かぶようにして、痛々しいほどの赤。
──薄い腹や腕に、毒々しいほどの大きなハートマークが描かれているのです。
「は、ぁ……っ! ぁう…!っく、ぅ゛ぅ…っ!! ん、ふ、ぅあ、ぅ…っ!!か、はぁ゛んん゛ッッ…」
およそ人間の言葉を発しない女王に、凛の体が凍り付きました。蜜壺に何本もの触手を咥え込み、乳首を引き延ばされ、獣の唸り声を上げる女王の末路を、知ってしまったのです。
「…や…ぃ、や…やめて…やめてよぉっ…」
凛は自分の手足に絡みつくスライムから逃れようと、震える体で必死に暴れました。びくともしないスライムに恐怖を覚え、叫びます。
「いやだっおうちに!帰る!帰りたいッやだぁぁ!!!」
"凛は、そうなってほしくない"
蓮が俯いて言っていた意味を、今ようやく知ったのです。ぐっちゅんぐっちゅんと酷い音を立てて忙しなく出入りする触手が、一瞬ぴたりと止まりました。
「なぁアリス。女王が可哀想だろ?お前が代わってやれよ…」
足元から楽し気な声が地を這い、緩やかに伸びて消えていきました。
凛はぶんぶん首を振り、絡みつくスライムを振りほどこうと藻掻きます。やっぱりびくともしないスライムは、一度だけぐにゃりとひしゃげました。
「やだ…帰る…お家にかえる…NO…」
右手に隠れた鍵を握りました。頼れるものはもうこれしかありません。藁にもすがる思いでその鍵を握りこむと、一瞬、ほんの刹那、銀の鍵があたたかくなりました。
「…帰る?」
不機嫌な声は触手にじわりと吸い込まれていきます。それが合図のように、女王の蜜壺に入りっぱなしのまま止まっていた菫色の触手が、勢いよく全て抜けていきました。
「あ゛があ゛あ゛あ゛ぃ゛、ぎ、~~~~ッ!!!」
じゅばああぁっと勢いよく蜜が噴射し、雨のように降り注ぎました。恵みの雨とでも言いたげな彼は両手を広げ、高らかに笑いました。
「帰すものか!次の女王はお前だ!!!」
叫んだ彼は勢いのままぶらぶら垂れさがる菫色の触手を引っ掴み、振り回して叫びます。
「アリス!!お前が次の女王になれ!この国をもっともっと反映させるための!!女王だ!!」
彼に掴まれた触手がどろりと溶けだし、朽ちたフローリングにべちゃりと落ちました。
凛はもう、叫ぶこともできませんでした。
その菫色の触手だったものがひとりでにぶるぶる震え出し、火山噴火のように四散したのです。
目の前で起こっていることが出来れば悪い夢だったと祈るより他ありません。四散したスライムが再び集結し、大きな三角形を作り上げました。
「さあアリス!女王になると誓え!蜜を献上しろ!!!」
ひ、とようやくか細い声が出た凛の足元に、三角が忍び寄ります。
「まって…まって…!」
菫色の三角。じりと近寄るその頂点は、強制的に開かされた凛の足の間と、向かい合わせになった女王の足の間にピタリと収まってしまいました。
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