アリスと女王

ちな

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正解は分からないけれど

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長年誰も触れなかったその扉は、草の根が絡みついてかたく閉ざしていました。まるで見つけられることを嫌がっているようにも思います。

まだ幼く、腕力もそれほどない凛は、全部の体重を掛けて取っ手を引きました。

ブチブチと草の根が切れる音が聞こえますが、扉が開くよりも前に、凛の手が限界を訴えます。

「…もぅ、」

思わず悪態を付いてしまいましたが、諦めるわけにはいきません。

一度取っ手を離し、草の根を掻き分ける作業に取り掛かりました。

ブチブチと切れる草の根の悲鳴が聞こえ、見つけられることを嫌がるどころか、開けてはいけない警笛にも聞こえました。

背後から禍々しい空気を纏った大きな扉が、じっと見張っているような気がしてきました。そんなものは諦めて、こっちにおいでよ。そんな声まで聞こえてきそうです。

凛は後ろを振り返らず、黙々と草の根を引きちぎりました。見えない黒い手が背後から伸びてきているような錯覚に焦り、恐怖を隠してひたすらに手を動かしました。

華奢な手が真っ黒に汚れる頃、ようやく扉が半分くらいまでなら開けられるようになりました。

ぎ、と重たい音の通りにずっしりとした扉は、半畳ほどです。

土と埃とカビの匂いが混じる冷たい空気が、開けた扉から地を這うように流れ込みます。

凛は慎重に中を覗きこみました。下から風が吹いています。闇のような暗いそこは、予想通り下へおりる梯子が架けられていました。

身を屈め、怖々と足を伸ばします。

上を目指しているのに下りるのかと、凛の胸には不安が支配しました。外から見た限り、煙突のようなこの塔には広場のような空間などなさそうです。この梯子は一体どこに向かっているのでしょう。

答えは分かりません。しかし、今の凛に出来ることは、この梯子を降りることです。

意を決して、半畳ほどの扉の中へと身を滑り込ませました。

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