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あざやかな記憶
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「見て凛。あっち」
指さす方向に目を向け、そうして息を飲みました。
蓮の指の先には、ガラガラと大きな音を立てながら、大きな歯車をいくつも組み合わせた恐ろしい機械が運ばれてきました。その奥には鉄の首輪を嵌められた"アリス"が5人。首輪は前後のアリスに繋がれていました。手枷のようなものも嵌められています。餌のアリスは、服を纏うことを認められていませんでした。
運ばれてきた大掛かりで恐ろしい機械は、噴水のすぐ前にセットされました。凛にはどうやって使うものかもわからず、じっと息を殺します。まさか、マッサージのような心地いいものではないでしょう。衛兵がセットする機械は、どうやら5人のアリスをそれぞれ座らせるように、噴水の周りに5つセットされました。
複雑な歯車はいくつも組み合わさって、椅子の部分に繋がっています。5つそれぞれ形状が違っていて、凛のみならず手枷を嵌められたアリスたちもみな不安そうな面持ちでした。
衛兵がひとり、先頭に立つアリスを引っ張って機械の前に立たせました。
鎖を擦らせ、蜜を貪っていた衛兵が数名、それから傍観していた衛兵がわらわらと集まってきます。アリスを見せびらかすように首根っこを捕まえていた衛兵は、大声で叫んでいますが、滑舌が悪いのか何を言っているのか凛には分かりませんでした。
凛は煩く鳴り響く心臓の音を極力聞かないように務めました。さもなくば、まるで自分があの場に立たされたような気分になってしまうのです。
とろんとろんと滴る蜜が、蓮の指に絡みつきました。
「何をされると思う?」
蜜の軌道を辿るようにして、蓮は凛の太ももを指でじっくりと撫で上げました。ぬるぬると滑る蜜に指が踊り、蜜壷が期待します。凛の首筋に顔を埋めた蓮は、じっとりと汗ばんだそこに、ねっとりとしたキスを落としました。
ふっ、と息を詰める凛ですが、しかしアリスから目を離すことができません。機械の前に立たされたアリスに、舐るような視線がいくつも向けられているのです。
そう、サルたちや蛇、それからスパイダーとの出来事を彷彿させるのです。
陽の光を余すところなくめいっぱい体に浴び、柔らかな草の匂いに包まれて、いくつもの視線が刺さりながら好き勝手に体を舐め尽くされたあの出来事です。白蛇のザラザラした舌の感覚、ミルクを欲したサルの強すぎる吸啜、蝶の柔らかな舌…。
「ぁっ…んんっ…」
乾いた唇を舌で舐め、凛は煉瓦を引っ掻きました。
蓮は吸い付いた首筋から耳介まで舌を這わせ、小さな耳たぶをぱくりと銜えました。
「思い出しちゃったの?」
やたらと耳障りのいい声で、蓮がくすくす笑います。指は相変わらず太ももを這うだけで、決定的な場所には一切触れませんでした。先ほどの"ご褒美"で中途半端な天国の道を登らされた凛にはつらい状況でした。
凛の蜜壷がきゅんきゅんと反応しているのを知っていて、蓮は劣情を煽ります。
「ああ、乗せられちゃったね…どうなるんだろうね?」
凛の視線の先には、蓮が言った通り、アリスが今まさにあの機械に乗せられているところでした。
自転車のように見えるその機械に跨がされたアリスは大きな声で泣き叫びました。
「やめてください!許してください!」
激しく抵抗し、椅子の部分に足を掛けることを嫌がります。狂ったように暴れ出すアリスを、衛兵4人がかりで押さえつけました。とうとう華奢なアリスはほとんど無抵抗で乗せられてしまいました。それでもなお、下ろしてくれと懇願します。彼女はこれが初めてでないと、凛はぞっと背中を凍らせました。
一体あのアリスたちはどれくらいの時間をここで過ごしているのでしょう。喉が切れんばかりに助けを請うアリスに、誰も手を差し伸べませんでした。
細い台座は、自転車のサドルに似ています。但しタイヤやペダルはついていません。付いているのは複雑に組み合わさった、いくつもの歯車です。サドルの正面に設置してある歯車に、凛は既視感を覚えました。
サドルのような部分に座らされたアリスは、どれほど泣き叫ぼうとも誰も助けません。それどころか手足をしっかりベルトで拘束されてしまいました。しかも足をぴんと伸ばしているにも関わらず、爪先は地面に届いていません。
一番大きな歯車がぎしぎしと重たい音を鳴らしました。それは、衛兵が噴水の中心へ移動させた音でした。
まさか。
凛はごくりと喉を鳴らします。
噴水の中心へ移動した歯車は、その水圧を利用してぐるぐるとゆっくり回り始めました。そうすると、噛み合った歯車が次々に回り始めます。そうして最後には、サドルの正面にあたる歯車が高速で廻り始めました。
指さす方向に目を向け、そうして息を飲みました。
蓮の指の先には、ガラガラと大きな音を立てながら、大きな歯車をいくつも組み合わせた恐ろしい機械が運ばれてきました。その奥には鉄の首輪を嵌められた"アリス"が5人。首輪は前後のアリスに繋がれていました。手枷のようなものも嵌められています。餌のアリスは、服を纏うことを認められていませんでした。
運ばれてきた大掛かりで恐ろしい機械は、噴水のすぐ前にセットされました。凛にはどうやって使うものかもわからず、じっと息を殺します。まさか、マッサージのような心地いいものではないでしょう。衛兵がセットする機械は、どうやら5人のアリスをそれぞれ座らせるように、噴水の周りに5つセットされました。
複雑な歯車はいくつも組み合わさって、椅子の部分に繋がっています。5つそれぞれ形状が違っていて、凛のみならず手枷を嵌められたアリスたちもみな不安そうな面持ちでした。
衛兵がひとり、先頭に立つアリスを引っ張って機械の前に立たせました。
鎖を擦らせ、蜜を貪っていた衛兵が数名、それから傍観していた衛兵がわらわらと集まってきます。アリスを見せびらかすように首根っこを捕まえていた衛兵は、大声で叫んでいますが、滑舌が悪いのか何を言っているのか凛には分かりませんでした。
凛は煩く鳴り響く心臓の音を極力聞かないように務めました。さもなくば、まるで自分があの場に立たされたような気分になってしまうのです。
とろんとろんと滴る蜜が、蓮の指に絡みつきました。
「何をされると思う?」
蜜の軌道を辿るようにして、蓮は凛の太ももを指でじっくりと撫で上げました。ぬるぬると滑る蜜に指が踊り、蜜壷が期待します。凛の首筋に顔を埋めた蓮は、じっとりと汗ばんだそこに、ねっとりとしたキスを落としました。
ふっ、と息を詰める凛ですが、しかしアリスから目を離すことができません。機械の前に立たされたアリスに、舐るような視線がいくつも向けられているのです。
そう、サルたちや蛇、それからスパイダーとの出来事を彷彿させるのです。
陽の光を余すところなくめいっぱい体に浴び、柔らかな草の匂いに包まれて、いくつもの視線が刺さりながら好き勝手に体を舐め尽くされたあの出来事です。白蛇のザラザラした舌の感覚、ミルクを欲したサルの強すぎる吸啜、蝶の柔らかな舌…。
「ぁっ…んんっ…」
乾いた唇を舌で舐め、凛は煉瓦を引っ掻きました。
蓮は吸い付いた首筋から耳介まで舌を這わせ、小さな耳たぶをぱくりと銜えました。
「思い出しちゃったの?」
やたらと耳障りのいい声で、蓮がくすくす笑います。指は相変わらず太ももを這うだけで、決定的な場所には一切触れませんでした。先ほどの"ご褒美"で中途半端な天国の道を登らされた凛にはつらい状況でした。
凛の蜜壷がきゅんきゅんと反応しているのを知っていて、蓮は劣情を煽ります。
「ああ、乗せられちゃったね…どうなるんだろうね?」
凛の視線の先には、蓮が言った通り、アリスが今まさにあの機械に乗せられているところでした。
自転車のように見えるその機械に跨がされたアリスは大きな声で泣き叫びました。
「やめてください!許してください!」
激しく抵抗し、椅子の部分に足を掛けることを嫌がります。狂ったように暴れ出すアリスを、衛兵4人がかりで押さえつけました。とうとう華奢なアリスはほとんど無抵抗で乗せられてしまいました。それでもなお、下ろしてくれと懇願します。彼女はこれが初めてでないと、凛はぞっと背中を凍らせました。
一体あのアリスたちはどれくらいの時間をここで過ごしているのでしょう。喉が切れんばかりに助けを請うアリスに、誰も手を差し伸べませんでした。
細い台座は、自転車のサドルに似ています。但しタイヤやペダルはついていません。付いているのは複雑に組み合わさった、いくつもの歯車です。サドルの正面に設置してある歯車に、凛は既視感を覚えました。
サドルのような部分に座らされたアリスは、どれほど泣き叫ぼうとも誰も助けません。それどころか手足をしっかりベルトで拘束されてしまいました。しかも足をぴんと伸ばしているにも関わらず、爪先は地面に届いていません。
一番大きな歯車がぎしぎしと重たい音を鳴らしました。それは、衛兵が噴水の中心へ移動させた音でした。
まさか。
凛はごくりと喉を鳴らします。
噴水の中心へ移動した歯車は、その水圧を利用してぐるぐるとゆっくり回り始めました。そうすると、噛み合った歯車が次々に回り始めます。そうして最後には、サドルの正面にあたる歯車が高速で廻り始めました。
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