アリスと女王

ちな

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ほんの意地悪

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「あそこ、見て。ひどいよね、あんなことされて…」

目配せする蓮の視線の先には、天井から吊るされた女性の姿がありました。

万歳のカタチで両手を拘束され、足の間には金属でできた角材のようなものを跨ぐようにされていました。その角材は菱形になるように機械に吊るされ、あの歯車を使ってシーソーのように動いていました。よく見ると角材と言っても角は丸く加工してあり、所々ボールを嵌め込んだようにボコボコしています。

大量の蜜のせいで体が滑り、女性はただ淡々と角材でシーソーあそびをしているように見えました。ただし、顔は苦悶に満ちて、泣き叫んでいます。傭兵にはその悲痛な叫び声は聞こえていないようでした。

蜜は一滴も漏らさないように足元の受け皿に溜まり、数値化されてタンクに溜められていきます。そうして加工された錠剤は、呆気なくゴミ箱の中に入れられているのでした。

「あの子、なんのためにあんな辛い思いをしてるんだろうね…凛、乗ってみたい?」

「ひっ…あ、」

まさかの言葉に、ぞく、と背中が震えました。

にゅるんにゅるんと滑るあの金属の角材は、女性の足の間にぎっちりと食い込んでいます。なだらかに滑っているように見えますが、実際はかなり辛いのでしょう。全身を痙攣させ、蜜がばたばたと受け皿に溜まっているのが見えました。

「嘘だよ。僕は凛を助けるんだから、そんなことはしないよ」

ちょっとふざけ過ぎたと思った蓮でしたが、凛は顔を真っ赤にさせてばかりです。そうして、白いワンピースの端をぎゅっと握るのでした。

「…凛?」

異変に気が付いた蓮は、そっと凛の内腿に触れました。そうして、思わず口角が上がってしまうのです。

「乗ってみたいんだ?すごい…こんなに溢れさせて、期待してるんだね」

「やっや…ちがっ…」

涙声の凛に、蓮が笑います。凛の内腿は、ぐっしょりと濡れそぼっているのです。

「嘘でしょ。帰りたい気持ちもあるけど、あれに乗ってみたい気持ちもあるんでしょ?歯車に感情なんかないから、凛がどんなに泣き叫んでも、絶対止まってくれないよ?そんなつらい思いをしたいの?」

凛は奥歯を噛んで声を殺しました。

絶対に止まってくれないシーソー…。

どくどくと蜜が溢れ出します。

そろそろと這わせていた指は、凛の内腿に触れました。

  「おや…」

くすくす笑う蓮に、凛はこちらまで心を痛めそうなほど顔を真っ赤にさせました。とろとろと零れる蜜を指に乗せ、蓮は凛から視線をじっと見つめます。貼り合わせただけの薄い金属板の間に、甘いにおいが立ち込めました。鼻腔を擽るあまい蜜は、爪の先まで整った連の指から逃げるようにとろりと滴ります。蓮は真っ赤な舌の上にその蜜を乗せて見せました。

「やっ…!」

本当だったら叫んでいるところでした。すんでのところで口を押さえ、凛は蓮の腕を取って必死に視線で抗議します。

 「おいしい」

蓮はにこりと笑いました。唇を震わせて、何か言いたげな凛の唇にキスをしてやり、講義の声を封じ込めました。

  「可哀想…って言いたいところだけど。違うよね」

フルフルと必死に首を振る凛に、蓮は目の奥に捕食者の光を灯しました。はっと息を飲む凛に気を良くした蓮は、先程蜜を乗せ、それから自分の舌へ乗せた人差し指をぷっくりして震える唇に押し当てます。

  「あの角材、丸くなってるからきっと痛くないよね。凛はよく知ってるでしょ。凛のかわいいところを擦ってあげたことあるよね。あれは植物だからしなったけど、金属は容赦ないよ。わかるよね」

ふ、ふ、と指の隙間から熱い息を零し、凛はこくりと頷きます。蓮は満足そうに口角をあげました。

  「ボコボコしてて、きっと気持ちいいよね。ああ、前みたいに静電気でイかせてあげたいな。かわいかったなぁ…」

呼吸の隙間に、く、ん、と堪えるような音が混じり始めるとほぼ同時に、空いた蓮の手が白いワンピースの裾に触れました。

柔肌に触れるか触れないかの絶妙な力加減は、凛の神経を研ぎ澄ませました。膝から内腿にかけて爪の先で触れ、到達地点を期待させます。とろとろと零れる蜜は、その道筋を教えているようでした。

  「凛」

捕食者の一言で、可哀想な獲物は目を真っ赤にさせるのです。

  「…嘘ついて、ごめんなさい…」

至近距離にいる蓮にさえ、ようやく聞き取れるくらいの小さな声でした。

  「いい子だね、凛。僕こそごめんね。アレに乗せてあげられる日は来ないみたい」

意地悪してごめんねと、思わず笑ってしまいそうになった唇を、震える凛の唇に押し当てました。

泣き出しそうな凛の代わりに泣いたのは、凛の足の間でした。

触れてもらえると期待して流した涙の道筋から、呆気なく蓮の指が離れていってしまったのです。つ、と長い橋が掛かり、誰にも気が付かれることなくぶつりと切れてしまいました。

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