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ささやき
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「ダメだな、これもダメ」
機械を操作する傭兵は、まるで小石でも選別するようにベルトコンベアから運ばれてきた白い錠剤をゴミ箱に投げ捨てました。翳してみたり光を当てながら傭兵の手に渡った錠剤は、次々にゴミ箱に入れられていきます。
「質が上がりませんね」
「アリスというより最早一般人だ」
このフロアにいる傭兵たちは、ざっと数十人。みな機械の前で何かを操作したり、拘束された女性たちの観察をしています。
異様なことに、傭兵たちは一人残らずガスマスクのようなものを頭から被り、顔は誰一人判別が付きませんでした。
タンクに溜まった蜜は、凛がこっそり覗き見してから数分と絶たず、半分ほどに減っていっていました。
あのタンクから伸びる太い管は部屋の隅を這い、壁の奥へと消えています。どこかに繋がれているようでした。恐らく先ほどの檻の前にあった機械だと、凛は予想しました。可哀想な女性たちが泣きながら垂らした蜜です。それをあんなふうに、簡単にゴミ箱へ入れられているのです。
ミルク用のタンクも見えますが、それはもう空でした。横に設置された大きなゴミ箱は、白い錠剤が山を作っていました。
凛は怒りで震えそうになりました。
脳裏をよぎったのは、命の灯がたった今消えようとしていた子ザルでした。あの時は偶然蓮と凛が見つけ、苦労しながらもなんとか命を繋ぎました。でも、そうじゃない子ザルもいたはずです。大蛇だって、数分遅れていればどうなっていたかわかりません。
「ひどい…」
凛の呟きは薄い金属板に静かにぶつかって消えました。
「ひぎいああああああっ!!!」
最後の力とばかりの、悲痛な悲鳴が聞こえました。凛はびくりと肩を跳ねさせて声のほうへ目を向けました。
「ああああああっ!ああああああ!」
「…量はいいが、質は悪いな」
凛のいじらしいクリトリスを引きちぎれんばかりに吸引した、あの黄色く可愛らしい花が女性の足の間に見えました。但しそれは、凛が見た花とはまるで大きさが違います。蓮の手のひらほどの大きさの花は、女性の性器をまるごと咥え込んでいました。吸引される力を知っている凛は、思わず膝を擦り合わせました。小さな花ですら、泣き叫ぶほどだったのです。それがあの大きさとなれば…。
「っ…ん、」
思わず声を出してしまい、ぎくりと肩が跳ねます。あの餌食にだけはなりたくない、の、ですが…
「あれはね、特別に配合した肥料をあげた花なんだよ。…ここじゃなければ、凛にも付けてあげたかったな」
見つかってはいけない、助けてあげると言った割りに、蓮はそんな意地悪を言うのです。
蓮は分かっていました。彼らはあのガスマスクのようなものを耳まで覆っているという事を。女性の悲鳴を煩いと感じ、何の音も聞こえないように改良したものなのです。
傭兵たちの間で交わされる会話は、どれだけ至近距離で叫んだとしてもよく聞こえていないことも知っていました。衛兵たちは、お互いの唇の動きを読み取っているのです。
最も、あまり会話を必要としていないのかもしれません。彼らに必要なのは、会話よりも質のいい錠剤なのです。だから、姿さえ見えなければ、凛の声もあまい匂いも感じる可能性はほぼゼロなのです。
蓮は一歩凛に近付いて、腰を抱き寄せました。熱を持ったかわいらしい耳に唇を寄せ、わざと低い声で囁きます。
「気持ちよかったよね、あのお花。凛たくさん泣いてくれたもんね」
「っ!蓮…ねえ、ダメだよ見つかっちゃうよ!」
「しー。だから、声を出さないでね」
空気をたっぷり含んだ蓮のあまいテノールは、凛の鼓膜を余すところなく擽ります。同時に蓮の指が、そろりと太ももを這いました。ひく、と可愛らしい反応を見せる凛に気をよくした蓮は、終ぞ真っ赤に染まってしまった耳に、更に唇を寄せました。
機械を操作する傭兵は、まるで小石でも選別するようにベルトコンベアから運ばれてきた白い錠剤をゴミ箱に投げ捨てました。翳してみたり光を当てながら傭兵の手に渡った錠剤は、次々にゴミ箱に入れられていきます。
「質が上がりませんね」
「アリスというより最早一般人だ」
このフロアにいる傭兵たちは、ざっと数十人。みな機械の前で何かを操作したり、拘束された女性たちの観察をしています。
異様なことに、傭兵たちは一人残らずガスマスクのようなものを頭から被り、顔は誰一人判別が付きませんでした。
タンクに溜まった蜜は、凛がこっそり覗き見してから数分と絶たず、半分ほどに減っていっていました。
あのタンクから伸びる太い管は部屋の隅を這い、壁の奥へと消えています。どこかに繋がれているようでした。恐らく先ほどの檻の前にあった機械だと、凛は予想しました。可哀想な女性たちが泣きながら垂らした蜜です。それをあんなふうに、簡単にゴミ箱へ入れられているのです。
ミルク用のタンクも見えますが、それはもう空でした。横に設置された大きなゴミ箱は、白い錠剤が山を作っていました。
凛は怒りで震えそうになりました。
脳裏をよぎったのは、命の灯がたった今消えようとしていた子ザルでした。あの時は偶然蓮と凛が見つけ、苦労しながらもなんとか命を繋ぎました。でも、そうじゃない子ザルもいたはずです。大蛇だって、数分遅れていればどうなっていたかわかりません。
「ひどい…」
凛の呟きは薄い金属板に静かにぶつかって消えました。
「ひぎいああああああっ!!!」
最後の力とばかりの、悲痛な悲鳴が聞こえました。凛はびくりと肩を跳ねさせて声のほうへ目を向けました。
「ああああああっ!ああああああ!」
「…量はいいが、質は悪いな」
凛のいじらしいクリトリスを引きちぎれんばかりに吸引した、あの黄色く可愛らしい花が女性の足の間に見えました。但しそれは、凛が見た花とはまるで大きさが違います。蓮の手のひらほどの大きさの花は、女性の性器をまるごと咥え込んでいました。吸引される力を知っている凛は、思わず膝を擦り合わせました。小さな花ですら、泣き叫ぶほどだったのです。それがあの大きさとなれば…。
「っ…ん、」
思わず声を出してしまい、ぎくりと肩が跳ねます。あの餌食にだけはなりたくない、の、ですが…
「あれはね、特別に配合した肥料をあげた花なんだよ。…ここじゃなければ、凛にも付けてあげたかったな」
見つかってはいけない、助けてあげると言った割りに、蓮はそんな意地悪を言うのです。
蓮は分かっていました。彼らはあのガスマスクのようなものを耳まで覆っているという事を。女性の悲鳴を煩いと感じ、何の音も聞こえないように改良したものなのです。
傭兵たちの間で交わされる会話は、どれだけ至近距離で叫んだとしてもよく聞こえていないことも知っていました。衛兵たちは、お互いの唇の動きを読み取っているのです。
最も、あまり会話を必要としていないのかもしれません。彼らに必要なのは、会話よりも質のいい錠剤なのです。だから、姿さえ見えなければ、凛の声もあまい匂いも感じる可能性はほぼゼロなのです。
蓮は一歩凛に近付いて、腰を抱き寄せました。熱を持ったかわいらしい耳に唇を寄せ、わざと低い声で囁きます。
「気持ちよかったよね、あのお花。凛たくさん泣いてくれたもんね」
「っ!蓮…ねえ、ダメだよ見つかっちゃうよ!」
「しー。だから、声を出さないでね」
空気をたっぷり含んだ蓮のあまいテノールは、凛の鼓膜を余すところなく擽ります。同時に蓮の指が、そろりと太ももを這いました。ひく、と可愛らしい反応を見せる凛に気をよくした蓮は、終ぞ真っ赤に染まってしまった耳に、更に唇を寄せました。
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