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子猫にキスを
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穴蔵を出たふたりは、最初に約束した通り、南を目指すことにしました。
思えば可笑しな帽子の男も、あの蔦も白蛇もサルもスパイダーも、南下して出会ったと、気が付きました。
「お城は南のほうにあるの?」
ざくざくと硬い草を踏みながら、凛が尋ねます。凛の小さな右手を握る蓮は、やっぱり穏やかに笑いました。
「そうだよ。大きな城…ハートの女王がいる」
「…ハートの、女王…」
以前、蓮に聞いたことがありましたが、その時は濁されてしまいました。キーパーソンなのかもしれません。凛は臆せず尋ねました。
「ハートの女王が、逃げ道を知っているの?」
尋ねた凛に、蓮は足をぴたりと止めました。
そうして一瞬眉間に深い皺を刻み、息を吐きました。
「…違うよ。ハートの女王は、アリスよりももっと貴重なんだ」
「…?」
「この国に、たったひとりしかいない」
凛はますます分からなくなり、首を傾げます。
「アリスだってあたしの他に見なかったわ」
「凛が知らないだけさ」
「ねえ、あたし分からない。説明してくれないかな」
蓮に倣って凛も足を止めると、今度は蓮が足を進めます。繋いだ右手を引かれるようにして、凛も再び歩き出しました。
お日様は相変わらずニコニコ笑っていて、ネコジャラシが気持ちよさそうに風と遊んでいます。ふよふよと柔らかく揺れるあの毛先がびっしょりと粘液に濡れることを知っている凛は、思わず目を逸らしました。
「さっき来たのは、城の憲兵だ」
「…けんぺい?」
「そう。アリスを探している」
「えっ」
今度こそ完全に足を止めた凛を、蓮は咎めたりしませんでした。代わりに眉を下げ、東のほうへ指を差しました。
「あそこに歪みが見える?」
「…どこ?」
強い陽の光に目を細めながら、凛は蓮の指さす方向をじっと見ます。特になにもない、抜けるほど澄んだ空があるだけでした。
「あの歪みはね、別世界からアリスが飛び込んでくる"穴"だよ」
「…え、穴?」
「そう。凛は多分、どこかの穴から迷い込んできたんだね」
凛は眩しさに目を細めながら首を傾げます。歪みなんか見えませんし、自ら飛び込んだ記憶はないのです。ただ家庭教師に言われた通り本を読んでいたところでした。ついうたた寝をしてしまい、気が付いたらこの森にいたのです。思い出すだけで鳥肌が立ちました。
凛が最初に出会ったのは、あの不気味な双子だったのですから。
口を噤む凛に構わず、蓮は続けました。
「あの穴に入ってくる女の子に規則性はないらしい。現に、アリスの素質すらない子も迷い込んでくるんだ…というより、アリスである確率のほうが断然低い」
アリスってとっても貴重なんだよと言う蓮に、凛はやっぱり何も答えませんでした。凛にとっては不名誉な特別なのです。恥ずかしい格好をさせられ、誰も触ったことがない場所へ実に様々なものを突っ込まれ、出すだけだった器官に、あつくどろりとしたものを…
「ふふっ。何を思い出しちゃったのかな」
「えっべ、別に!」
「本当?とってもいい匂いがするよ」
凛にぐっと近付いた蓮は、うっすら汗ばむ凛のおでこに優しくキスを落としました。ふわっと立ち込める甘い匂いを凛も感じ、恥ずかしくて俯きました。
「キスしよ」
うっとりと目を瞬かせた蓮は、陽の光を背中に浴びて凛の顔に影を作りました。
「んっ…」
驚くほど柔らかな蓮の唇は、ぷっくりとした凛の唇にそっと重なります。蓮が凛の顎を持ち上げなくても、凛は自分で上を向いて蓮の唇を求めました。
重なり合うだけだった唇は、蓮が凛の柔らかな唇を食むことで次へ進もうと提案します。凛は勿論断りませんでした。
凛の背中をしっかりと支え、蓮は下唇を食みました。ぷっくりしていて適度に押し返す弾力が心地良く、熱い舌を伸ばして舐めてみます。そうすると凛が少し驚いてしまうことを知っているので、大丈夫だよと伝えるように、空いた手で凛の熱くなった頬を撫でてやりました。
角度を変えて、今度は唇全体を一撫でするみたいにして食み、薄く開いた口から舌を差し入れました。熱い蓮の舌に劣らず、凛の口内は驚くくらいの熱を持っていました。
舌先で凛の口内を弄って緊張を解いてやると、凛がおずおずと舌を差し出します。どうにも嬉しくなって笑い出しそうになるのを堪え、柔らかくて熱い凛の舌に、自分のをそっと絡めてやりました。
粘膜が擦れ合い、ちゅくりと粘着質な音が控え目に鳴ります。逃げがちな凛の舌はすぐに引っ込んでしまうので、蓮は自分の口の中へ招くように、そっと吸い出してやりました。
抵抗せず蓮の口へ入った凛の舌を緩く噛んでやると、凛は鼻から甘えた声を出します。蓮はそれが嬉しくてたまりませんでした。
噛んで離さないまま舌先を舐め、絡めて擽ると、今度は蓮のシャツをぎゅっと握ります。可愛らしい仕草に、蓮は思わず笑ってしまいました。
あたりに立ち込める甘い匂いに気分が良くなってきた蓮は、真っ白いワンピースの上から凛の乳首をそっと撫でてやりました。しっかりした生地の下から一生懸命主張する乳首は、この数日ですっかり敏感になってしまっているのです。指の腹で少し撫でられただけで歓喜に震え、しっかりと芯を通し始めました。
「気持ちよくなってきた?」
唇を離して凛に尋ねると、すっかりと目を蕩けさせた凛がゆるく頷いて見せました。顔を真っ赤にさせて感じる凛の顔は、蓮の理性を激しく揺さぶります。このまま抱きつぶしたい気持ちと、早くこの国から逃げ出してしまいたい気持ちが鬩ぎ合っているのです。
南下しているということは、城に近付いているという事です。憲兵の数も北側よりもずっと多いと記憶している蓮は、名残惜しいけどこのまま足を進めようと思ったときでした。
「蓮っ…」
凛が真っ赤な舌をちろちろと覗かせ、続きを催促しているのです。
かわいいおねだりに、蓮は負けてしまいました。
「分かったよ。もう、かわいいなぁ」
ちゅ、と音を鳴らしてキスをして、背中を掻き抱いてやりました。
思えば可笑しな帽子の男も、あの蔦も白蛇もサルもスパイダーも、南下して出会ったと、気が付きました。
「お城は南のほうにあるの?」
ざくざくと硬い草を踏みながら、凛が尋ねます。凛の小さな右手を握る蓮は、やっぱり穏やかに笑いました。
「そうだよ。大きな城…ハートの女王がいる」
「…ハートの、女王…」
以前、蓮に聞いたことがありましたが、その時は濁されてしまいました。キーパーソンなのかもしれません。凛は臆せず尋ねました。
「ハートの女王が、逃げ道を知っているの?」
尋ねた凛に、蓮は足をぴたりと止めました。
そうして一瞬眉間に深い皺を刻み、息を吐きました。
「…違うよ。ハートの女王は、アリスよりももっと貴重なんだ」
「…?」
「この国に、たったひとりしかいない」
凛はますます分からなくなり、首を傾げます。
「アリスだってあたしの他に見なかったわ」
「凛が知らないだけさ」
「ねえ、あたし分からない。説明してくれないかな」
蓮に倣って凛も足を止めると、今度は蓮が足を進めます。繋いだ右手を引かれるようにして、凛も再び歩き出しました。
お日様は相変わらずニコニコ笑っていて、ネコジャラシが気持ちよさそうに風と遊んでいます。ふよふよと柔らかく揺れるあの毛先がびっしょりと粘液に濡れることを知っている凛は、思わず目を逸らしました。
「さっき来たのは、城の憲兵だ」
「…けんぺい?」
「そう。アリスを探している」
「えっ」
今度こそ完全に足を止めた凛を、蓮は咎めたりしませんでした。代わりに眉を下げ、東のほうへ指を差しました。
「あそこに歪みが見える?」
「…どこ?」
強い陽の光に目を細めながら、凛は蓮の指さす方向をじっと見ます。特になにもない、抜けるほど澄んだ空があるだけでした。
「あの歪みはね、別世界からアリスが飛び込んでくる"穴"だよ」
「…え、穴?」
「そう。凛は多分、どこかの穴から迷い込んできたんだね」
凛は眩しさに目を細めながら首を傾げます。歪みなんか見えませんし、自ら飛び込んだ記憶はないのです。ただ家庭教師に言われた通り本を読んでいたところでした。ついうたた寝をしてしまい、気が付いたらこの森にいたのです。思い出すだけで鳥肌が立ちました。
凛が最初に出会ったのは、あの不気味な双子だったのですから。
口を噤む凛に構わず、蓮は続けました。
「あの穴に入ってくる女の子に規則性はないらしい。現に、アリスの素質すらない子も迷い込んでくるんだ…というより、アリスである確率のほうが断然低い」
アリスってとっても貴重なんだよと言う蓮に、凛はやっぱり何も答えませんでした。凛にとっては不名誉な特別なのです。恥ずかしい格好をさせられ、誰も触ったことがない場所へ実に様々なものを突っ込まれ、出すだけだった器官に、あつくどろりとしたものを…
「ふふっ。何を思い出しちゃったのかな」
「えっべ、別に!」
「本当?とってもいい匂いがするよ」
凛にぐっと近付いた蓮は、うっすら汗ばむ凛のおでこに優しくキスを落としました。ふわっと立ち込める甘い匂いを凛も感じ、恥ずかしくて俯きました。
「キスしよ」
うっとりと目を瞬かせた蓮は、陽の光を背中に浴びて凛の顔に影を作りました。
「んっ…」
驚くほど柔らかな蓮の唇は、ぷっくりとした凛の唇にそっと重なります。蓮が凛の顎を持ち上げなくても、凛は自分で上を向いて蓮の唇を求めました。
重なり合うだけだった唇は、蓮が凛の柔らかな唇を食むことで次へ進もうと提案します。凛は勿論断りませんでした。
凛の背中をしっかりと支え、蓮は下唇を食みました。ぷっくりしていて適度に押し返す弾力が心地良く、熱い舌を伸ばして舐めてみます。そうすると凛が少し驚いてしまうことを知っているので、大丈夫だよと伝えるように、空いた手で凛の熱くなった頬を撫でてやりました。
角度を変えて、今度は唇全体を一撫でするみたいにして食み、薄く開いた口から舌を差し入れました。熱い蓮の舌に劣らず、凛の口内は驚くくらいの熱を持っていました。
舌先で凛の口内を弄って緊張を解いてやると、凛がおずおずと舌を差し出します。どうにも嬉しくなって笑い出しそうになるのを堪え、柔らかくて熱い凛の舌に、自分のをそっと絡めてやりました。
粘膜が擦れ合い、ちゅくりと粘着質な音が控え目に鳴ります。逃げがちな凛の舌はすぐに引っ込んでしまうので、蓮は自分の口の中へ招くように、そっと吸い出してやりました。
抵抗せず蓮の口へ入った凛の舌を緩く噛んでやると、凛は鼻から甘えた声を出します。蓮はそれが嬉しくてたまりませんでした。
噛んで離さないまま舌先を舐め、絡めて擽ると、今度は蓮のシャツをぎゅっと握ります。可愛らしい仕草に、蓮は思わず笑ってしまいました。
あたりに立ち込める甘い匂いに気分が良くなってきた蓮は、真っ白いワンピースの上から凛の乳首をそっと撫でてやりました。しっかりした生地の下から一生懸命主張する乳首は、この数日ですっかり敏感になってしまっているのです。指の腹で少し撫でられただけで歓喜に震え、しっかりと芯を通し始めました。
「気持ちよくなってきた?」
唇を離して凛に尋ねると、すっかりと目を蕩けさせた凛がゆるく頷いて見せました。顔を真っ赤にさせて感じる凛の顔は、蓮の理性を激しく揺さぶります。このまま抱きつぶしたい気持ちと、早くこの国から逃げ出してしまいたい気持ちが鬩ぎ合っているのです。
南下しているということは、城に近付いているという事です。憲兵の数も北側よりもずっと多いと記憶している蓮は、名残惜しいけどこのまま足を進めようと思ったときでした。
「蓮っ…」
凛が真っ赤な舌をちろちろと覗かせ、続きを催促しているのです。
かわいいおねだりに、蓮は負けてしまいました。
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