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蜜のお味見
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「アリスの蜜なんて久しぶりだぜ…」
虚ろな目を揺らし、スパイダーが6本の手を大きく広げました。
「あっ…!」
凛の体がびくりと硬直します。スパイダーが凛の細い足を掴み、大きく開かせたのです。
スパイダーは2本の手で開かせた足を高く掲げました。
「ひいっ!」
スパイダーの口から、紫色の舌がにゅるりと顔を覗かせました。肉厚で凛の手のひらより大きく、ぼこぼことした突起がいくつもついています。凛は震えあがりました。
スパイダーは待ちきれないとばかりに、凛の右足首を濡らす蜜を一舐めしました。
「ひいいっ!」
股を通る糸は足を持ち上げられたせいで角度が変わり、おしりの亀裂に負荷がかかりました。しかしそんなことを気にしている場合ではありません。スパイダーのつめたい舌に付いているぼこぼことした突起が、凛の柔肌をなぞり上げるのです。鳥肌を立てて凛が鳴きました。
「あぁぁ~甘ぇなァ」
大袈裟に嚥下して見せたスパイダーは、今度は凛の左足首を舐め上げました。
「ひいっやあっ!」
「あ~うめぇ~!」
ごくり。一口ごとに光悦の眼差しで天を仰ぎ、ふるふると震えるスパイダーは、凛の右の脹脛に紫色の舌を伸ばしました。
紫色の舌に生えた突起は、真珠のように滑らかで、肌を傷つけることはありません。しかし、凛はおぞましさに全身を震わせました。
「やめて…やめて…」
首を振って訴えますが、スパイダーの焦点はどこにも合っていませんでした。
右の脹脛を丁寧に丁寧に舐り、左の脹脛も肌が擦り切れるほど舐りました。
「やあっやだぁぁっ!」
にゅるんにゅるんと紫色の舌が這いずりまわります。逃げようにも、スパイダーの2本の手はびくともしませんでした。
舌は徐々に上昇していき、嘘みたいに柔らかな太物の内側を這いました。
「ひっやっ気持ち悪いっ」
「ああぁぁぁうめえよ…うめぇ…」
完全に焦点の合わない目をし、紫色の舌が縦横無尽に這いまわます。凛は必死に腰を捩りますが、ただただおしりに食い込む糸が擦れるだけでした。
スパイダーは空いた2本の腕を、慎ましくふくらむ凛の胸へと伸ばしました。
「ひっ…」
人間と同じく5本の指が、左右それぞれ乳房を鷲掴みます。簡単に形が変わってしまう柔らかな感触を確かめるように、わやわやと揉みしだき始めました。
「あっや…」
もぞもぞと腰を動かすと、糸がたゆんたゆんと揺れました。
それが引き金となったのか、女性の成熟した恥ずかしく敏感な部分に2度も鞭を打たれた蝶が、混濁した意識からゆっくり浮上してきました。
そして彼女が突然暴れ出しました。意識がはっきりしてきた分、1本鞭で2度も打たれた足の間の痛みをはっきり感じ取ってしまったのです。
身を捩り、酷い火傷を追ったように痛み出す股を振り、泣き叫びました。
「ああっやっだめ動かないでお願い!」
蝶が自由に動かせる部分は、右足のみ。痛みで黙っていられない蝶は、狂ったようにその右足をバタつかせました。
「あっや!あああ!」
ぱっちん、ぱっちん。糸が一気に弛み、激しく引かれることで鞭のように凛の亀裂を叩きます。もともと遊びがないせいで、身を捩るほどの痛みはありません。
しかし、凛はこんな場所に鞭を打たれる感覚を知っています。平手で打たれることも、硬い棒で叩かれることも、木の皮で叩かれることも…。
「あんっあ!やっあああ!」
ぱっちん。ぱっちん。寸分狂いなく、女の子の一番敏感で一番弱くて、一番気持ちいい所を糸が叩きつけました。
「はっ…もっと寄越せよっ…」
麻薬中毒者のように虚ろな目をさせたスパイダーの舌は、終ぞ糸を叩きつける部分へ到達してしまいました。
「あっ…いやあっ!」
糸の隙間から漏れだすあまい蜜を、紫色のつめたい舌がぞろりと舐め上げます。ぼこぼこの突起が可憐な花びらをなぞり、付け根の窪みを撫で上げていきました。
おぞましさがぞわぞわと駆け抜け、凛は必死に身を捩りました。
ぱしんっ!
「いあああっ!」
身を捩ったせいで、すっかり勃起したクリトリスを直接叩きつけます。とろりと溢れる蜜に、スパイダーは歓喜の雄叫びを上げました。
びくびく痙攣する凛を無視し、スパイダーは蜜が溢れる付け根を必死で舐りました。
ぱちんぱちんと糸がクリトリスを打つたび、びくびく痙攣する白い肢体がしなり、泉のように蜜が溢れ出ました。
「なんだこれ…飲んでも飲んでも足りねぇよ…!」
息を荒げたスパイダーは、糸を無視して凛の亀裂に舌を這わせました。
しかし、当然食い込んだ糸が邪魔をして上手く舐め取ることができません。しかも蝶が暴れるせいでスパイダーの舌をもぺちぺちと叩くのです。
「おい暴れんじゃねぇよ」
凛に言ったのか蝶に言ったのかは分かりません。どちらにも言ったのかもしれませんが、凛にはそれを判断する余裕などありませんでした。
スパイダーの妙にぬるい息が、凛の足の間に掛かりました。気持ち悪くて腰を捻り、捩り、なんとか逃げようともがきます。そんな凛をも無視したスパイダーは、尚も舌を伸ばし、蜜壷を隠すように通る糸を無視して舌を伸ばし、ねっとりと舐りました。
嚥下するたび枯いていくような、まるで海水を飲んでいるような気分になってきたスパイダーは、苛立ちを表すように鋭い鋏角を振り上げました。
「ッきゃあああっ!!」
鋭く光る鋏角が振り下ろされ、凛は咄嗟に目を瞑りました。
スパンっ──
小気味よい音と共に、凛を苦しめた糸が、力なくはらりと垂れ下がりました。
「やっこわいっ…!」
縫い付けられた腕と、高く上げられた両足が凛の全体重を支える体制となり、凛は顔を青ざめさせました。
スパイダーの糸は、頑丈です。スパイダーの力はとても強く、凛がいくら暴れようともビクともしません。分かってはいますが、凛は蜘蛛の巣に自分で掴まっているわけではないのです。
もし何かの拍子で蜘蛛の巣が壊れてしまったら。もしこの腕の糸がするりと抜けてしまったら。スパイダーが突然手を放したら。
それほどの高さではありませんが、落っこちるのは必須です。
凛を縫い付けていた巣が大きく揺れますが、この巣は元々2本の大木を軸に作ったもので、どことも連結していません。他の蝶が悲鳴をあげることはないはずです。しかし。
「やあああっ!!!」
「動かないでよっやめて!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
頭上では蝶たちが悲痛な声を上げました。
ふうふうと苦しい呼吸をし、凛は正面を目しました。
そこには、右足が糸から解放され、後ろ手で上手く力が掛けられない代わりに巣を蹴り上げんばかりにのたうち回る蝶の姿。連結された蜘蛛の巣がぐわんぐわんと波を作っていたのです。
「ぅ…ああ゛っ…」
「らめ……らめ……」
「あぁぁあ゛あ゛あ゛ッ……」
蓮の頭上にいる8人の蝶たちも同じでした。喉の奥から絞り出したような呻き声を上げ、足の間は液体が流れ出ています。
そのうち1人が白目を剥き、口の端から涎を垂らして呻いています。
彼女は体の突起をそれぞれ結ばれているだけでなく、膣口には芋虫を、おしりの小さな窄まりにはトンボ型の羽虫を奥深くまで咥え込んでいました。ただでさえ苦しい責めに、彼女は更に負荷を掛けられていたのです。
にゅるにゅると出入りする芋虫の少し上から、ちょろちょろと液体が漏れ始めました。そうして少しの間を置き、ぷしゃあああっと勢いよく溢れ出しました。
もうほとんど透明に近い黄色の液体は宙で弧を描き、びしょ濡れになった草の上に掛けられていきます。
蓮は顔を顰め、頬に飛んできた一滴を袖で拭いました。
「ねえスパイダー」
スパイダーは凛の細い足を再び持ち上げたところでした。あまい蜜の泉がすぐ目の前に現れたというのにお預けを食らったスパイダーは、虚ろな目を蓮に向けます。しかし、鋭い蓮の目に射抜かれて、一気に正気を取り戻しました。
「な、なんだよ蓮、なんか怒ってんのか?」
「いいや、怒ってないよ」
ふう、と大袈裟なため息を吐いた蓮は、自分の顔の横で人差し指を立てました。
「コレもついでに切ってくれない?」
指さしたのは、8人の蝶を結ぶ糸でした。蝶たちは苦しい責めに、意識の半分を濁らせているようです。腰を仰け反らせて波を乗りこえようとしているため、変に力が加わって体力も限界です。汗びっしょりになり、醜いうめき声を上げていました。蓮には煩く感じたのです。
「凛の声が聞こえにくいんだ」
片耳に指を突っ込んで見せる蓮に、スパイダーは顎が外れそうなほど口をあんぐりあけました。
「頼むよ」
「……」
スパイダーはめんどくさそうに目を細めると、掴んでいた細い足をパッと放しました。凛は小さく悲鳴を上げながらバウンドしました。腕の力だけで支えて全体重を支えているため、跳ねる体を止めることができません。傍目から見るとひとりでトランポリンを跳んでいるようにも見えました。
怖くて足をばたつかせるせいで、一向に揺れが収まりません。これだけ強く揺れているというのに、スパイダーが吐いた糸は1本も切れませんでした。
凛がそんなふうにトランポリンで遊んでいる最中、スパンと小気味よい音を立てて、8人の蝶たちが解放されました。びりびりと痺れる突起を摩りたくてたまりませんが、彼女たちは手足をがっちりと縫い付けられています。藻掻き苦しんで暴れると、他の蝶たちが悲鳴を上げる、正に悲鳴のスパイラルです。
自分の仕事が終わったとばかりに背中を向けるスパイダーに、蓮はありがとうと声を掛けました。スパイダーは振り返ることもせず、まっすぐに"ご馳走"に向かって歩き出しました。
虚ろな目を揺らし、スパイダーが6本の手を大きく広げました。
「あっ…!」
凛の体がびくりと硬直します。スパイダーが凛の細い足を掴み、大きく開かせたのです。
スパイダーは2本の手で開かせた足を高く掲げました。
「ひいっ!」
スパイダーの口から、紫色の舌がにゅるりと顔を覗かせました。肉厚で凛の手のひらより大きく、ぼこぼことした突起がいくつもついています。凛は震えあがりました。
スパイダーは待ちきれないとばかりに、凛の右足首を濡らす蜜を一舐めしました。
「ひいいっ!」
股を通る糸は足を持ち上げられたせいで角度が変わり、おしりの亀裂に負荷がかかりました。しかしそんなことを気にしている場合ではありません。スパイダーのつめたい舌に付いているぼこぼことした突起が、凛の柔肌をなぞり上げるのです。鳥肌を立てて凛が鳴きました。
「あぁぁ~甘ぇなァ」
大袈裟に嚥下して見せたスパイダーは、今度は凛の左足首を舐め上げました。
「ひいっやあっ!」
「あ~うめぇ~!」
ごくり。一口ごとに光悦の眼差しで天を仰ぎ、ふるふると震えるスパイダーは、凛の右の脹脛に紫色の舌を伸ばしました。
紫色の舌に生えた突起は、真珠のように滑らかで、肌を傷つけることはありません。しかし、凛はおぞましさに全身を震わせました。
「やめて…やめて…」
首を振って訴えますが、スパイダーの焦点はどこにも合っていませんでした。
右の脹脛を丁寧に丁寧に舐り、左の脹脛も肌が擦り切れるほど舐りました。
「やあっやだぁぁっ!」
にゅるんにゅるんと紫色の舌が這いずりまわります。逃げようにも、スパイダーの2本の手はびくともしませんでした。
舌は徐々に上昇していき、嘘みたいに柔らかな太物の内側を這いました。
「ひっやっ気持ち悪いっ」
「ああぁぁぁうめえよ…うめぇ…」
完全に焦点の合わない目をし、紫色の舌が縦横無尽に這いまわます。凛は必死に腰を捩りますが、ただただおしりに食い込む糸が擦れるだけでした。
スパイダーは空いた2本の腕を、慎ましくふくらむ凛の胸へと伸ばしました。
「ひっ…」
人間と同じく5本の指が、左右それぞれ乳房を鷲掴みます。簡単に形が変わってしまう柔らかな感触を確かめるように、わやわやと揉みしだき始めました。
「あっや…」
もぞもぞと腰を動かすと、糸がたゆんたゆんと揺れました。
それが引き金となったのか、女性の成熟した恥ずかしく敏感な部分に2度も鞭を打たれた蝶が、混濁した意識からゆっくり浮上してきました。
そして彼女が突然暴れ出しました。意識がはっきりしてきた分、1本鞭で2度も打たれた足の間の痛みをはっきり感じ取ってしまったのです。
身を捩り、酷い火傷を追ったように痛み出す股を振り、泣き叫びました。
「ああっやっだめ動かないでお願い!」
蝶が自由に動かせる部分は、右足のみ。痛みで黙っていられない蝶は、狂ったようにその右足をバタつかせました。
「あっや!あああ!」
ぱっちん、ぱっちん。糸が一気に弛み、激しく引かれることで鞭のように凛の亀裂を叩きます。もともと遊びがないせいで、身を捩るほどの痛みはありません。
しかし、凛はこんな場所に鞭を打たれる感覚を知っています。平手で打たれることも、硬い棒で叩かれることも、木の皮で叩かれることも…。
「あんっあ!やっあああ!」
ぱっちん。ぱっちん。寸分狂いなく、女の子の一番敏感で一番弱くて、一番気持ちいい所を糸が叩きつけました。
「はっ…もっと寄越せよっ…」
麻薬中毒者のように虚ろな目をさせたスパイダーの舌は、終ぞ糸を叩きつける部分へ到達してしまいました。
「あっ…いやあっ!」
糸の隙間から漏れだすあまい蜜を、紫色のつめたい舌がぞろりと舐め上げます。ぼこぼこの突起が可憐な花びらをなぞり、付け根の窪みを撫で上げていきました。
おぞましさがぞわぞわと駆け抜け、凛は必死に身を捩りました。
ぱしんっ!
「いあああっ!」
身を捩ったせいで、すっかり勃起したクリトリスを直接叩きつけます。とろりと溢れる蜜に、スパイダーは歓喜の雄叫びを上げました。
びくびく痙攣する凛を無視し、スパイダーは蜜が溢れる付け根を必死で舐りました。
ぱちんぱちんと糸がクリトリスを打つたび、びくびく痙攣する白い肢体がしなり、泉のように蜜が溢れ出ました。
「なんだこれ…飲んでも飲んでも足りねぇよ…!」
息を荒げたスパイダーは、糸を無視して凛の亀裂に舌を這わせました。
しかし、当然食い込んだ糸が邪魔をして上手く舐め取ることができません。しかも蝶が暴れるせいでスパイダーの舌をもぺちぺちと叩くのです。
「おい暴れんじゃねぇよ」
凛に言ったのか蝶に言ったのかは分かりません。どちらにも言ったのかもしれませんが、凛にはそれを判断する余裕などありませんでした。
スパイダーの妙にぬるい息が、凛の足の間に掛かりました。気持ち悪くて腰を捻り、捩り、なんとか逃げようともがきます。そんな凛をも無視したスパイダーは、尚も舌を伸ばし、蜜壷を隠すように通る糸を無視して舌を伸ばし、ねっとりと舐りました。
嚥下するたび枯いていくような、まるで海水を飲んでいるような気分になってきたスパイダーは、苛立ちを表すように鋭い鋏角を振り上げました。
「ッきゃあああっ!!」
鋭く光る鋏角が振り下ろされ、凛は咄嗟に目を瞑りました。
スパンっ──
小気味よい音と共に、凛を苦しめた糸が、力なくはらりと垂れ下がりました。
「やっこわいっ…!」
縫い付けられた腕と、高く上げられた両足が凛の全体重を支える体制となり、凛は顔を青ざめさせました。
スパイダーの糸は、頑丈です。スパイダーの力はとても強く、凛がいくら暴れようともビクともしません。分かってはいますが、凛は蜘蛛の巣に自分で掴まっているわけではないのです。
もし何かの拍子で蜘蛛の巣が壊れてしまったら。もしこの腕の糸がするりと抜けてしまったら。スパイダーが突然手を放したら。
それほどの高さではありませんが、落っこちるのは必須です。
凛を縫い付けていた巣が大きく揺れますが、この巣は元々2本の大木を軸に作ったもので、どことも連結していません。他の蝶が悲鳴をあげることはないはずです。しかし。
「やあああっ!!!」
「動かないでよっやめて!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
頭上では蝶たちが悲痛な声を上げました。
ふうふうと苦しい呼吸をし、凛は正面を目しました。
そこには、右足が糸から解放され、後ろ手で上手く力が掛けられない代わりに巣を蹴り上げんばかりにのたうち回る蝶の姿。連結された蜘蛛の巣がぐわんぐわんと波を作っていたのです。
「ぅ…ああ゛っ…」
「らめ……らめ……」
「あぁぁあ゛あ゛あ゛ッ……」
蓮の頭上にいる8人の蝶たちも同じでした。喉の奥から絞り出したような呻き声を上げ、足の間は液体が流れ出ています。
そのうち1人が白目を剥き、口の端から涎を垂らして呻いています。
彼女は体の突起をそれぞれ結ばれているだけでなく、膣口には芋虫を、おしりの小さな窄まりにはトンボ型の羽虫を奥深くまで咥え込んでいました。ただでさえ苦しい責めに、彼女は更に負荷を掛けられていたのです。
にゅるにゅると出入りする芋虫の少し上から、ちょろちょろと液体が漏れ始めました。そうして少しの間を置き、ぷしゃあああっと勢いよく溢れ出しました。
もうほとんど透明に近い黄色の液体は宙で弧を描き、びしょ濡れになった草の上に掛けられていきます。
蓮は顔を顰め、頬に飛んできた一滴を袖で拭いました。
「ねえスパイダー」
スパイダーは凛の細い足を再び持ち上げたところでした。あまい蜜の泉がすぐ目の前に現れたというのにお預けを食らったスパイダーは、虚ろな目を蓮に向けます。しかし、鋭い蓮の目に射抜かれて、一気に正気を取り戻しました。
「な、なんだよ蓮、なんか怒ってんのか?」
「いいや、怒ってないよ」
ふう、と大袈裟なため息を吐いた蓮は、自分の顔の横で人差し指を立てました。
「コレもついでに切ってくれない?」
指さしたのは、8人の蝶を結ぶ糸でした。蝶たちは苦しい責めに、意識の半分を濁らせているようです。腰を仰け反らせて波を乗りこえようとしているため、変に力が加わって体力も限界です。汗びっしょりになり、醜いうめき声を上げていました。蓮には煩く感じたのです。
「凛の声が聞こえにくいんだ」
片耳に指を突っ込んで見せる蓮に、スパイダーは顎が外れそうなほど口をあんぐりあけました。
「頼むよ」
「……」
スパイダーはめんどくさそうに目を細めると、掴んでいた細い足をパッと放しました。凛は小さく悲鳴を上げながらバウンドしました。腕の力だけで支えて全体重を支えているため、跳ねる体を止めることができません。傍目から見るとひとりでトランポリンを跳んでいるようにも見えました。
怖くて足をばたつかせるせいで、一向に揺れが収まりません。これだけ強く揺れているというのに、スパイダーが吐いた糸は1本も切れませんでした。
凛がそんなふうにトランポリンで遊んでいる最中、スパンと小気味よい音を立てて、8人の蝶たちが解放されました。びりびりと痺れる突起を摩りたくてたまりませんが、彼女たちは手足をがっちりと縫い付けられています。藻掻き苦しんで暴れると、他の蝶たちが悲鳴を上げる、正に悲鳴のスパイラルです。
自分の仕事が終わったとばかりに背中を向けるスパイダーに、蓮はありがとうと声を掛けました。スパイダーは振り返ることもせず、まっすぐに"ご馳走"に向かって歩き出しました。
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