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勿忘草
勿忘草5
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学院主催の合宿旅行も終わり翌日、輝李は昼頃に登校した。
そろそろ冷たい風が色を変えはじめて、髪を撫でる。
昨日、乙が輝李に言った言葉が今も鮮明に駆け巡った。
≪「…会いに来ればいいだろ」≫
思いもよらなかった言葉…。
確かに乙が輝李に対して、今まで『会いに来るな』とは言ったことはなかった。
しかし、自分が今まで乙にしてきた所業は決して軽いものではなく、許される事でもない。
それは今までのペットに対しても、瀾に対しても。
そんな事を思いながら、ほんの少し伏し目がちに歩いていると、その姿にざわめく女生徒の声すら聞こえなくなってしまうほどに。
輝李は午後の授業も受けるでもなく、昼休みも終わりチャイムがなっても廊下の窓から体育を受けている乙をずっと見つめていた。
「乙…」
やがて授業も全て終ると乙の教室へと向かった。
編入して初めて来る乙のクラス。
しかし、輝李が教室のドアに行くことは出来なかった。
暫くして教室から乙が出てくると、輝李は一瞬壁側に隠れてしまう。
乙は鞄を左手に持ったまま肩にかけ歩いてくる。
輝李に気が付く様子もないようだった。
「き…乙!!」
輝李が声をかけると、此方を見たがそれは他人を見る時と変わらないクールな面持ちだった。
「あの…会いに来ても良いって…だから…あの、一緒に…帰ろう」
「!!…輝李?」
おずおずと遠慮がちに輝李が話しかけると、乙は一瞬目を見開き、聞き覚えのある声に初めてそれが輝李だと認識した。
今までの輝李は北条への復讐以来、ストレートのショートにパンツスタイルの制服を着てボーイッシュな格好だった。
少しでも乙と繋がっていられるように。
その苦しみを共有したいという表れから自ら髪を切った。
しかし今、乙の目に飛び込んできたのは、スラリと伸びたスマートな脚線にスカートの制服、ストレートでフワリと靡く長い髪…。
鞄を両手で前に持ち、俯き加減に微かな上目遣い。
仮にも双子の妹である輝李に乙が気づかなかったのはそのためだ。
乙が好きだった母と同じ色の長い髪…。
輝李は昼間、美容院に行き、全てを元に戻してきたのだ。
幼少に交わした約束を再び守るために。
≪「髪…切るなよ…。輝李の髪
…気に入ってるんだから…///」
「クスクス…」
「約束…だぞ///」
「ハイハイ。切りませんよ~♪」≫
しかし、そんな約束さえ薄れた驚きの隠せない乙の表情に輝李が少し恥ずかしそうに訪ねた。
「やっぱり似合わない…かな?」
「いや…別に…」
乙が少し目を反らすと輝李は、また少し俯いた。
「か、帰るんだろ?」
乙が少し不器用に言うと輝李は顔を上げて、やっと嬉しそうに一、二歩駆け寄ってきた。
「うん!!」
そろそろ冷たい風が色を変えはじめて、髪を撫でる。
昨日、乙が輝李に言った言葉が今も鮮明に駆け巡った。
≪「…会いに来ればいいだろ」≫
思いもよらなかった言葉…。
確かに乙が輝李に対して、今まで『会いに来るな』とは言ったことはなかった。
しかし、自分が今まで乙にしてきた所業は決して軽いものではなく、許される事でもない。
それは今までのペットに対しても、瀾に対しても。
そんな事を思いながら、ほんの少し伏し目がちに歩いていると、その姿にざわめく女生徒の声すら聞こえなくなってしまうほどに。
輝李は午後の授業も受けるでもなく、昼休みも終わりチャイムがなっても廊下の窓から体育を受けている乙をずっと見つめていた。
「乙…」
やがて授業も全て終ると乙の教室へと向かった。
編入して初めて来る乙のクラス。
しかし、輝李が教室のドアに行くことは出来なかった。
暫くして教室から乙が出てくると、輝李は一瞬壁側に隠れてしまう。
乙は鞄を左手に持ったまま肩にかけ歩いてくる。
輝李に気が付く様子もないようだった。
「き…乙!!」
輝李が声をかけると、此方を見たがそれは他人を見る時と変わらないクールな面持ちだった。
「あの…会いに来ても良いって…だから…あの、一緒に…帰ろう」
「!!…輝李?」
おずおずと遠慮がちに輝李が話しかけると、乙は一瞬目を見開き、聞き覚えのある声に初めてそれが輝李だと認識した。
今までの輝李は北条への復讐以来、ストレートのショートにパンツスタイルの制服を着てボーイッシュな格好だった。
少しでも乙と繋がっていられるように。
その苦しみを共有したいという表れから自ら髪を切った。
しかし今、乙の目に飛び込んできたのは、スラリと伸びたスマートな脚線にスカートの制服、ストレートでフワリと靡く長い髪…。
鞄を両手で前に持ち、俯き加減に微かな上目遣い。
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「うん!!」
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小説が音声と映像で流れ出す!?
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