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勿忘草
勿忘草1
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『アールグレイの昼下がり』章 アザレアとリンク
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
朝日が上り朝食には、まだ少しばかり早い時刻…
輝李は一睡もすることなくソファーから立ち上がると医務室へと向かった。
医務室からは調度一人の少女が出てくるところだった。
谷川 早希[タニカワ サキ]
輝李が編入して間もなかった頃、乙の事で相談をしてきた少女だった。
廊下で早希とすれ違い、輝李を瞳に入れると直ぐ様瞳を反らした。
早希の顔は青ざめており、逃げるように輝李を早足で通りすがる。
医務室のドアは空いたままだ。
輝李は開いたドアの縁に寄りかかり、中にいた医療班でもある由佳に口を開いた。
「…聞かせてもらおうか、由佳」
「!!!」
唐突に声を掛けた輝李にハッと振り返ると由佳は輝李を見て困惑を隠せずにいた。
「輝李様!!」
輝李はドアを静かに閉めると室内のソファーに座る。
由佳は思わず息を飲む。
輝李のその瞳は普段のものではなく8-[エイトアンダー]のトップとしての鈍い光を帯びていたからだった。
「…知らないとは言わせない。
昨日、何があった…
あのヘリは救護のヘリだった。
それに今は既に取り替えられていたあの血溜まりのカーペット…
僕が知らないとでも思っているわけじゃないよね?」
「そ、それは…」
由佳は話しづらそうに目を伏せるが、それを許すほど輝李は甘くはなかった。
「…由佳」
「……」
黙りを決め込む由香に輝李は静かに口を開いた。
「そうやっていつまでも黙っていられると思ってるの?
…そう言えば、さっき谷川 早希とすれ違ったよ。
僕を見て随分、青ざめていた。
由佳が話さないのなら、あの子から聞くまでだ…
ただ具合が悪くてここに居たわけではないんだろう?」
そこまで輝李が詰め寄ると、由佳は観念し言葉を発した。
「あの朝、野中 瀾の様子がおかしかったんです。
頭痛がすると…、乙様が連れて来られたんですが夕方、乙様が迎えに来る前に『迎えが来た』と医務室を後にし、その後、乙様が迎えにいらっしゃいました。
野中の行動に違和感を感じ、廊下に出ると悲鳴が聞こえたので向かいましたが、私が現場にたどり着いた時には既に乙様は、野中の腕ごと自らナイフを肩に突き立てていて、谷川は錯乱状態…。
野中も谷川も自我がある状…」
「そんな事はどうでもいいよ…」
冷たく言い放つ輝李に由佳は、思わず息を飲んだ。
「…乙の容態は?」
「は、はい。
救護班が来たのはご存じの通り、乙様は止血後、肩を四針縫い、今は安静にしておられます」
輝李は、聞きたいことだけ聞くとソファーから離れ、医務室を静かに出ていった。
しかし、その瞳は冷たく誰も寄せ付けない静かな威圧感を放っていた。
部屋に戻ると、そこには乙の部屋から逃げ帰ってきた瀾がバスローブのまま腰を落とし佇んでいた。
(『アールグレイの昼下がり』参照)
「輝李さんっ!!!」
部屋に入ってきた輝李を見つけると、途端に駆け寄り涙目でその胸に飛び込んだ。
「先輩があんな事する人だったなんて…信じられなくて…ウッ…
ヒック、私…私!!怖くて…」
輝李は胸の中で泣く瀾の肩に静かに両手を置いた。
「…野中 瀾」
「輝李さ…ッ!!!」
その言葉と同時に瀾の首には強い圧迫と激痛が走る!!
輝李は片手で瀾の首を握り締めたのだ!!
「あ…輝…かはっ…」
輝李は、その手を緩める事なく静かな言葉を投げた。
「乙に何をした…」
「…な…」
輝李の手を両手で掴み言葉すらままならない瀾を見つめる輝李は、冷たく冷酷な瞳をしていた。
それは感情すら見えないほどに。
そして、瀾の耳元でこう囁いた。
「…今度、乙を傷つけてみろ…
…お前を殺してやる!!」
それだけ言うと瀾の首根っこごと放り捨て、部屋を出ていった。
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朝日が上り朝食には、まだ少しばかり早い時刻…
輝李は一睡もすることなくソファーから立ち上がると医務室へと向かった。
医務室からは調度一人の少女が出てくるところだった。
谷川 早希[タニカワ サキ]
輝李が編入して間もなかった頃、乙の事で相談をしてきた少女だった。
廊下で早希とすれ違い、輝李を瞳に入れると直ぐ様瞳を反らした。
早希の顔は青ざめており、逃げるように輝李を早足で通りすがる。
医務室のドアは空いたままだ。
輝李は開いたドアの縁に寄りかかり、中にいた医療班でもある由佳に口を開いた。
「…聞かせてもらおうか、由佳」
「!!!」
唐突に声を掛けた輝李にハッと振り返ると由佳は輝李を見て困惑を隠せずにいた。
「輝李様!!」
輝李はドアを静かに閉めると室内のソファーに座る。
由佳は思わず息を飲む。
輝李のその瞳は普段のものではなく8-[エイトアンダー]のトップとしての鈍い光を帯びていたからだった。
「…知らないとは言わせない。
昨日、何があった…
あのヘリは救護のヘリだった。
それに今は既に取り替えられていたあの血溜まりのカーペット…
僕が知らないとでも思っているわけじゃないよね?」
「そ、それは…」
由佳は話しづらそうに目を伏せるが、それを許すほど輝李は甘くはなかった。
「…由佳」
「……」
黙りを決め込む由香に輝李は静かに口を開いた。
「そうやっていつまでも黙っていられると思ってるの?
…そう言えば、さっき谷川 早希とすれ違ったよ。
僕を見て随分、青ざめていた。
由佳が話さないのなら、あの子から聞くまでだ…
ただ具合が悪くてここに居たわけではないんだろう?」
そこまで輝李が詰め寄ると、由佳は観念し言葉を発した。
「あの朝、野中 瀾の様子がおかしかったんです。
頭痛がすると…、乙様が連れて来られたんですが夕方、乙様が迎えに来る前に『迎えが来た』と医務室を後にし、その後、乙様が迎えにいらっしゃいました。
野中の行動に違和感を感じ、廊下に出ると悲鳴が聞こえたので向かいましたが、私が現場にたどり着いた時には既に乙様は、野中の腕ごと自らナイフを肩に突き立てていて、谷川は錯乱状態…。
野中も谷川も自我がある状…」
「そんな事はどうでもいいよ…」
冷たく言い放つ輝李に由佳は、思わず息を飲んだ。
「…乙の容態は?」
「は、はい。
救護班が来たのはご存じの通り、乙様は止血後、肩を四針縫い、今は安静にしておられます」
輝李は、聞きたいことだけ聞くとソファーから離れ、医務室を静かに出ていった。
しかし、その瞳は冷たく誰も寄せ付けない静かな威圧感を放っていた。
部屋に戻ると、そこには乙の部屋から逃げ帰ってきた瀾がバスローブのまま腰を落とし佇んでいた。
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「輝李さんっ!!!」
部屋に入ってきた輝李を見つけると、途端に駆け寄り涙目でその胸に飛び込んだ。
「先輩があんな事する人だったなんて…信じられなくて…ウッ…
ヒック、私…私!!怖くて…」
輝李は胸の中で泣く瀾の肩に静かに両手を置いた。
「…野中 瀾」
「輝李さ…ッ!!!」
その言葉と同時に瀾の首には強い圧迫と激痛が走る!!
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「あ…輝…かはっ…」
輝李は、その手を緩める事なく静かな言葉を投げた。
「乙に何をした…」
「…な…」
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小説が音声と映像で流れ出す!?
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