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トリプルゲーム
トリプルゲーム8
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輝李がパーティー会場に着くと、既にダンスの音楽が流れていた。
他の女生徒達は各々、食事をとったり仲間同士ではしゃいでパーティーを満喫しているようだ。
そんな時…
「ねぇ、乙お姉様見つかった?」
「全~然」
「船では拝見しましたわ!!
この中にいるに違いないんです」
見ると三人程の女生徒が乙を探して騒いでいるらしい。
きっと取り巻きの連中だろう。
「ねぇ!!あれ乙お姉様じゃない?」
一人の女生徒が口を開くと他の二人も次々と口を開く。
「本当だ!一緒に踊ってるの誰!!」
「私達を差し置いて、乙お姉様とダンスのパートナーを組むなんて許せませんわ!」
それを聞くと輝李は、少女達に近づき口を開いた。
「へぇ…乙が女の子をダンスに誘うなんて珍しい」
「!!!」
輝李の声に驚いたように女生徒達はこちらを見た。
「輝李お姉様…」
「君達、乙派のファンの子だったけ…」
ツンとした態度に女生徒達はオドオドと答えた。
「あ、あの…私達けして…」
「別に気にしてないよ。
君達が誰を好きだろうが」
「……」
「そんな事より君達は、あのダンスの邪魔がしたいんじゃない?」
悪魔の微笑みで言葉をつけば、途端に少女達は後ろめたそうに口を開いた。
「私達…別に…」
「そうですわ…
乙お姉様の胸を射止めるほどの方がどのような方なのか…
少し気になっただけですわ…」
それを聞くと輝李は鼻で笑う。
「ハッ…知りたかった?
今さっき【許せない】って言ってたじゃない?」
「そ…それは…」
「フン。君達…可愛い顔して随分したたかなんだね」
「……」
「ま、そう言うの嫌いじゃないよ。
こっちもあれは面白くないし。
何なら協力してあげようか?
僕ならあのダンスをぶち壊すことが出来るけど?」
「…え?」
「面白いもの…見たくない?」
輝李の悪魔の微笑みに思わず少女達は頷いてしまった。
輝李は満足そうにほくそ笑むと、ダンスホールの方へ歩いて行く。
乙と瀾の二人の体が離れ、クルリと瀾の体が回った時だった。
綺麗にダンスの波に乗り、スルリと瀾が体を預けると目の前には、大きな瞳に中性的な顔、栗色の髪の王子がいた。
「え…」
瀾は、目の前の人物に驚き後ろを振り向くと、そこには先程まで手を取り合っていたクールな瞳と目が合う。
目の前に居たのは他でもない輝李だった。
そう、ダンスの最中に輝李は乙から瀾をかっ拐ったのだ。
「クス、捕まえた。今度は僕と踊ろう♪」
スッポリと腕の中に入ったプリンセスににっこりと微笑むと輝李は乙と目を合わせた。
表情を変えずとも解る。
それは友好的な眼差しではなかった。
乙もトンビに油揚げを拐われたようなタイミングにお互いのプライドに火を付けたらしい。
ダンスが再開されると瀾は、輝李のエスコートに華麗に舞う。
相手を気遣うものは変わらなくとも乙のスマートさとは少し違う、優しいエスコート。
「輝李さん、私…」
「解ってるよ、誘われたんでしょ?」
「…はい。怒らないんですか?」
「どうして?」
「だって…」
「社交場だもの、そんな事もあるよ。
それに見つけられなかった僕にも責任があるんだもの」
瀾のダンスのパートナーは、その後も交互に目まぐるしく変わっていく。
乙…輝李…乙…再び輝李と。
それは慌ただしく余裕のないものではなくスムーズに隙のない入れ替わり。
それはまるで一人と踊っているような双子だからこそできる二対一体の動きだった。
勿論、このバトルに周りが注目しないわけがない。
三人の踊るスペースは広く空き、パーティー全員の視線を集めた。
やがて、曲が終わると瀾の背中には、乙と輝李の腕がプリンセスを支え、二人の眼差しが向けられた。それはまるで絵に描いたような夢のような光景だった。
ホールには拍手と歓声すら上がっていた。
ダンスが終わり、輝李と乙が瀾を起こしスッと一定距離に離れると乙は瀾にクールに、しかし優しく微笑む。
「…ありがとう、楽しかった」
そう伝えると瀾の手を取り、その甲にキスを贈った。
瀾はと言えば、途端に顔を赤く染めて恥ずかしそうに口を開く。
「あ、あの…」
「ちょっと!!」
瀾の声を遮るが如く、輝李の声が乙にとんだ。
二人の姉妹の間には、言い知れぬ威嚇感が走った。
最初に口を開いたのはやはり輝李だった。
「仮にも〔僕の目の前〕で、よくそんな事が出来るね」
「ダンスの礼を伝えただけだ。
それとも…こんな事が許せなくなるほど、お前には〔余裕がないのよ〕のか?」
「……ッ!!瀾ちゃん!!行くよ!!」
挑発的な乙の言葉にキッとキツイ視線を剥き出しにすると瀾の手を取り、強引に引っ張ってテラスへ出ていった。
瀾は手を引かれながらも心配そうに乙に振り向くと、乙は微笑みながらウインクし、見送ったのだった。
瀾の手を引き、ウェイターの持つバットからシャンパンをスルリと取る。
テラスへ出ると瀾の手を離しシャンパンを一気に飲み干す。
『…ッ、僕がいるのを知っていてパートナーを組むなんてどういうつもり!!』
それは明らかな嫉妬だった。
ピリピリとしている輝李に瀾は、小さく口を開いた。
「…ごめんなさい…
私、そんなつもりじゃ…なくて」
「知ってるよ…誘われたんでしょ。
壁の花を飾る瀾ちゃんを僕が来るまでと言う条件で…
乙がやりそうなことだよ」
不機嫌な顔のまま瀾の方へ歩いてくると瀾は一瞬たじろいだが、輝李が一気に引き寄せて抱き締める。
「ッ…面白くない」
「…え?」
「瀾ちゃんは僕のものなのに!!」
「…ごめんなさい…
もう、嫌がる事しませんから」
「…うん…」
瀾の言葉を聞くと、やっと機嫌を直したように瀾にキスをした。
他の女生徒達は各々、食事をとったり仲間同士ではしゃいでパーティーを満喫しているようだ。
そんな時…
「ねぇ、乙お姉様見つかった?」
「全~然」
「船では拝見しましたわ!!
この中にいるに違いないんです」
見ると三人程の女生徒が乙を探して騒いでいるらしい。
きっと取り巻きの連中だろう。
「ねぇ!!あれ乙お姉様じゃない?」
一人の女生徒が口を開くと他の二人も次々と口を開く。
「本当だ!一緒に踊ってるの誰!!」
「私達を差し置いて、乙お姉様とダンスのパートナーを組むなんて許せませんわ!」
それを聞くと輝李は、少女達に近づき口を開いた。
「へぇ…乙が女の子をダンスに誘うなんて珍しい」
「!!!」
輝李の声に驚いたように女生徒達はこちらを見た。
「輝李お姉様…」
「君達、乙派のファンの子だったけ…」
ツンとした態度に女生徒達はオドオドと答えた。
「あ、あの…私達けして…」
「別に気にしてないよ。
君達が誰を好きだろうが」
「……」
「そんな事より君達は、あのダンスの邪魔がしたいんじゃない?」
悪魔の微笑みで言葉をつけば、途端に少女達は後ろめたそうに口を開いた。
「私達…別に…」
「そうですわ…
乙お姉様の胸を射止めるほどの方がどのような方なのか…
少し気になっただけですわ…」
それを聞くと輝李は鼻で笑う。
「ハッ…知りたかった?
今さっき【許せない】って言ってたじゃない?」
「そ…それは…」
「フン。君達…可愛い顔して随分したたかなんだね」
「……」
「ま、そう言うの嫌いじゃないよ。
こっちもあれは面白くないし。
何なら協力してあげようか?
僕ならあのダンスをぶち壊すことが出来るけど?」
「…え?」
「面白いもの…見たくない?」
輝李の悪魔の微笑みに思わず少女達は頷いてしまった。
輝李は満足そうにほくそ笑むと、ダンスホールの方へ歩いて行く。
乙と瀾の二人の体が離れ、クルリと瀾の体が回った時だった。
綺麗にダンスの波に乗り、スルリと瀾が体を預けると目の前には、大きな瞳に中性的な顔、栗色の髪の王子がいた。
「え…」
瀾は、目の前の人物に驚き後ろを振り向くと、そこには先程まで手を取り合っていたクールな瞳と目が合う。
目の前に居たのは他でもない輝李だった。
そう、ダンスの最中に輝李は乙から瀾をかっ拐ったのだ。
「クス、捕まえた。今度は僕と踊ろう♪」
スッポリと腕の中に入ったプリンセスににっこりと微笑むと輝李は乙と目を合わせた。
表情を変えずとも解る。
それは友好的な眼差しではなかった。
乙もトンビに油揚げを拐われたようなタイミングにお互いのプライドに火を付けたらしい。
ダンスが再開されると瀾は、輝李のエスコートに華麗に舞う。
相手を気遣うものは変わらなくとも乙のスマートさとは少し違う、優しいエスコート。
「輝李さん、私…」
「解ってるよ、誘われたんでしょ?」
「…はい。怒らないんですか?」
「どうして?」
「だって…」
「社交場だもの、そんな事もあるよ。
それに見つけられなかった僕にも責任があるんだもの」
瀾のダンスのパートナーは、その後も交互に目まぐるしく変わっていく。
乙…輝李…乙…再び輝李と。
それは慌ただしく余裕のないものではなくスムーズに隙のない入れ替わり。
それはまるで一人と踊っているような双子だからこそできる二対一体の動きだった。
勿論、このバトルに周りが注目しないわけがない。
三人の踊るスペースは広く空き、パーティー全員の視線を集めた。
やがて、曲が終わると瀾の背中には、乙と輝李の腕がプリンセスを支え、二人の眼差しが向けられた。それはまるで絵に描いたような夢のような光景だった。
ホールには拍手と歓声すら上がっていた。
ダンスが終わり、輝李と乙が瀾を起こしスッと一定距離に離れると乙は瀾にクールに、しかし優しく微笑む。
「…ありがとう、楽しかった」
そう伝えると瀾の手を取り、その甲にキスを贈った。
瀾はと言えば、途端に顔を赤く染めて恥ずかしそうに口を開く。
「あ、あの…」
「ちょっと!!」
瀾の声を遮るが如く、輝李の声が乙にとんだ。
二人の姉妹の間には、言い知れぬ威嚇感が走った。
最初に口を開いたのはやはり輝李だった。
「仮にも〔僕の目の前〕で、よくそんな事が出来るね」
「ダンスの礼を伝えただけだ。
それとも…こんな事が許せなくなるほど、お前には〔余裕がないのよ〕のか?」
「……ッ!!瀾ちゃん!!行くよ!!」
挑発的な乙の言葉にキッとキツイ視線を剥き出しにすると瀾の手を取り、強引に引っ張ってテラスへ出ていった。
瀾は手を引かれながらも心配そうに乙に振り向くと、乙は微笑みながらウインクし、見送ったのだった。
瀾の手を引き、ウェイターの持つバットからシャンパンをスルリと取る。
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『…ッ、僕がいるのを知っていてパートナーを組むなんてどういうつもり!!』
それは明らかな嫉妬だった。
ピリピリとしている輝李に瀾は、小さく口を開いた。
「…ごめんなさい…
私、そんなつもりじゃ…なくて」
「知ってるよ…誘われたんでしょ。
壁の花を飾る瀾ちゃんを僕が来るまでと言う条件で…
乙がやりそうなことだよ」
不機嫌な顔のまま瀾の方へ歩いてくると瀾は一瞬たじろいだが、輝李が一気に引き寄せて抱き締める。
「ッ…面白くない」
「…え?」
「瀾ちゃんは僕のものなのに!!」
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「…うん…」
瀾の言葉を聞くと、やっと機嫌を直したように瀾にキスをした。
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