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トリプルゲーム
トリプルゲーム6
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部屋に戻ると紅茶を入れ、瀾に与える。
瀾は、ソファーに座ったまま未だグスグスと泣いている。
そんな瀾にいつものように微笑むでもなく、ただ様子を見ていた。
「…グス…ごめんなさい…」
まるで叱られた子供のように小さくなって輝李に許しを乞うと、輝李は仕方なさそうに溜め息を吐いた。
「ハァ…別に。どうして謝るの?」
「ウッ…ヒック…だって…」
「何か疾しい事が有るわけじゃなし。
…それとも、何か心当たりがあるの?」
「そんな事!!…ありません…」
輝李の問いに強く否定すると、ハッとして、また申し訳なさそうに俯く。
「…それなら、謝る必要はないんじゃない?
もっと堂々としていたら?」
「…でも…輝李さん、怒っているみたいで…
…それはきっと、私のせいだと思うから…」
「…別に怒ってなんかないよ」
その言葉のわりには、瀾と目も合わせず、相変わらず厳しい顔をしていた。
「…ほ、本当…ですか…?」
瀾の言葉にチラリと視線を向けると、途端に瀾はビクリと体を跳ねさせ怯えたように俯く。
「ご、ごめんなさい…」
輝李が瀾にゆっくり歩み寄って来ると、その足を視界に入れ輝李を恐る恐る見上げた。
ゆっくりと上がる輝李の腕…。
瀾は思わず目をギュッと閉じて、その体を竦ませた。
ポフン…と頭に乗せられた感触は、やがて瀾の頭を撫でる。
ゆっくりと目を開けると、クールに見つめる輝李がいた。
「今回は僕も遊んではいられないみたいだ」
「え…?」
「相手は乙…、お互いの手の内は知り尽くしてる。
向こうが本気で来る以上、手は抜いてられない。
それだけの余裕は、僕にはないって事だよ」
フッと初めてクールな笑みを見せた目の前の王子に、瀾はドキンと胸を鳴らした。
「そろそろ朝食の時間だ。
一般生徒は食堂で食べなきゃいけないんでしょ」
「は、はい…」
瀾が立ち上がり、部屋を出ようとすると背後から輝李の声が止めた。
「…瀾ちゃん」
「はい?」
振り向くと、軽く唇が重なった。
「行ってらっしゃい。
勉強の教育係の事は、君が思う通りにしたらいい。
僕は瀾ちゃんの事、信じてるから心配はしてない」
「…はい///」
クールな王子に頬を染め、はにかむと瀾は部屋を出て行った。
1人部屋に残されると輝李は、目を伏せた。
『さぁ…乙、久々に遊ぼうか。
あの子は唯一、僕達を繋げる鍵だ』
「クス…クスクスクス…
あはははは…!!!」
天を仰ぎ、爽快な悪魔の笑みを浮かべ高らかに響いた笑い声と共に、胸の刺す罪と言う杭に、輝李の瞳からは大きな粒が舞い降りていた。
瀾は、ソファーに座ったまま未だグスグスと泣いている。
そんな瀾にいつものように微笑むでもなく、ただ様子を見ていた。
「…グス…ごめんなさい…」
まるで叱られた子供のように小さくなって輝李に許しを乞うと、輝李は仕方なさそうに溜め息を吐いた。
「ハァ…別に。どうして謝るの?」
「ウッ…ヒック…だって…」
「何か疾しい事が有るわけじゃなし。
…それとも、何か心当たりがあるの?」
「そんな事!!…ありません…」
輝李の問いに強く否定すると、ハッとして、また申し訳なさそうに俯く。
「…それなら、謝る必要はないんじゃない?
もっと堂々としていたら?」
「…でも…輝李さん、怒っているみたいで…
…それはきっと、私のせいだと思うから…」
「…別に怒ってなんかないよ」
その言葉のわりには、瀾と目も合わせず、相変わらず厳しい顔をしていた。
「…ほ、本当…ですか…?」
瀾の言葉にチラリと視線を向けると、途端に瀾はビクリと体を跳ねさせ怯えたように俯く。
「ご、ごめんなさい…」
輝李が瀾にゆっくり歩み寄って来ると、その足を視界に入れ輝李を恐る恐る見上げた。
ゆっくりと上がる輝李の腕…。
瀾は思わず目をギュッと閉じて、その体を竦ませた。
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ゆっくりと目を開けると、クールに見つめる輝李がいた。
「今回は僕も遊んではいられないみたいだ」
「え…?」
「相手は乙…、お互いの手の内は知り尽くしてる。
向こうが本気で来る以上、手は抜いてられない。
それだけの余裕は、僕にはないって事だよ」
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「そろそろ朝食の時間だ。
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「は、はい…」
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「はい?」
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「行ってらっしゃい。
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小説が音声と映像で流れ出す!?
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