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トリプルゲーム
トリプルゲーム5
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乙の部屋に着くと、その顔は意外にも哀しさを帯びて胸に痛みが走った。
何故、輝李が船内を探す事なく乙の部屋に来たかといえば、瀾が一晩頼れる所などココしかないからだ。
乙は、確実に自分の望む顔は見せてはくれないだろう…。
輝李は、少し疲れ気味に溜め息をつき、その物悲しい表情を冷静というベールで隠すとドアをノックする。
間もなくして静かに部屋の主の体分のドアが開かれる。
輝李をその眼にいれると、途端に乙の眉間に皺が寄り、その拳に力が入る。
やはり予想通りの反応だ。
そんな乙に対し、輝李は顔色を変える事なく静かな口調で主に言葉を交わす。
「おはよう、乙」
「…ッ…」
「迷子を迎えに来たんだけど」
「…迷子を迎えに来ただと?
自分で締め出したくせに、よくそんな事が言えるな!!
野中を追い出して、昨日お前は何をしていたんだ!!」
乙の荒げる声に輝李の胸はズキンと痛みが襲う。
そして、乙はその言葉と共に輝李に掴み掛かってきた。
当然の反応だろう。
勿論、これも想定内の事だ。
「…ぁ…!!」
ドアに向かって来た瀾の小さな小さな声に、乙は瀾には聞えないような静かな声で、挑発を投げる。
「…《アイツに近づくな》と言うわりには随分サービス精神旺盛なんだな」
「……」
サービス精神…
輝李にとってそれは、そんな生易しいものではなかった。
愛している人間からの刺すような言葉は、張り裂けそうな胸の痛みを誘う。
しかし輝李は、その言葉に対して静かに鼻で笑ってみせた。
「言いたい事はそれだけ?」
「ッ!!何!!」
厳しい表情で睨み合う姉妹の2人。
瞳の大きさは違えど、その同じ顔はやはり双子なのだという事がまざまざと解る。
「…ぁの…」
ピリピリと肌にさえ感じる緊迫した空気に瀾が小さな言葉と微かに一歩歩むと、乙の手が無言のまま少し上がり、その少女を遮った。
「野中の勉強は俺が見る!!」
「…ふぅん、そう…
この僕に宣戦布告ってわけ?面白い…」
輝李は不適にほくそ笑むと、退室時にチラリと瀾を視界に入れ、クールな表情を浮かべたまま意味有りげに一言だけ投げる。
「選ぶのは僕じゃない。
誰の所に行こうが関係ない。
好きにすればいいよ、ただ…
〔…浮気は絶対に許さない〕」
それだけ言い残すと、あっさりと乙の部屋を出ていった。
【浮気は絶対に許さない】
その言葉の意味は、瀾にはきっと解らないだろう。
乙の瞳、乙の言葉。
輝李は、廊下を歩きながら思わず辛そうに顔を歪め、目を伏せる。
『本当は…そんな言葉が聞きたいんじゃない…』
そんな時だった。
「輝李さん!!」
背後からの声に振り返ると、そこには瀾が立っていた。
輝李と目が合うと此方に駆け寄り、その胸に飛び込んでくる。
瀾は微かに肩が震えていた。
どうやら泣いているようだった。
「…輝李さん、私…私!!
そんなつもりじゃないんです!!」
「……」
「昨日、お部屋に戻ったら・・・」
「…知ってるよ」
まるで縋るように必死に訴える瀾をクールな顔を浮かべ見つめた。
「とにかく、部屋に戻ろう。
話はそれからだ」
「…はぃ…」
小さく頷く少女を連れ、輝李は表情を変えることなく自室へと戻って行く。
何故、輝李が船内を探す事なく乙の部屋に来たかといえば、瀾が一晩頼れる所などココしかないからだ。
乙は、確実に自分の望む顔は見せてはくれないだろう…。
輝李は、少し疲れ気味に溜め息をつき、その物悲しい表情を冷静というベールで隠すとドアをノックする。
間もなくして静かに部屋の主の体分のドアが開かれる。
輝李をその眼にいれると、途端に乙の眉間に皺が寄り、その拳に力が入る。
やはり予想通りの反応だ。
そんな乙に対し、輝李は顔色を変える事なく静かな口調で主に言葉を交わす。
「おはよう、乙」
「…ッ…」
「迷子を迎えに来たんだけど」
「…迷子を迎えに来ただと?
自分で締め出したくせに、よくそんな事が言えるな!!
野中を追い出して、昨日お前は何をしていたんだ!!」
乙の荒げる声に輝李の胸はズキンと痛みが襲う。
そして、乙はその言葉と共に輝李に掴み掛かってきた。
当然の反応だろう。
勿論、これも想定内の事だ。
「…ぁ…!!」
ドアに向かって来た瀾の小さな小さな声に、乙は瀾には聞えないような静かな声で、挑発を投げる。
「…《アイツに近づくな》と言うわりには随分サービス精神旺盛なんだな」
「……」
サービス精神…
輝李にとってそれは、そんな生易しいものではなかった。
愛している人間からの刺すような言葉は、張り裂けそうな胸の痛みを誘う。
しかし輝李は、その言葉に対して静かに鼻で笑ってみせた。
「言いたい事はそれだけ?」
「ッ!!何!!」
厳しい表情で睨み合う姉妹の2人。
瞳の大きさは違えど、その同じ顔はやはり双子なのだという事がまざまざと解る。
「…ぁの…」
ピリピリと肌にさえ感じる緊迫した空気に瀾が小さな言葉と微かに一歩歩むと、乙の手が無言のまま少し上がり、その少女を遮った。
「野中の勉強は俺が見る!!」
「…ふぅん、そう…
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「選ぶのは僕じゃない。
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「……」
「昨日、お部屋に戻ったら・・・」
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